【日本ダービー】Seattle Slew内包馬の活躍目立つ 東京替わりのレガレイラ、末脚に魅力あり

坂上明大

2024年日本ダービーの注目血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

2024年5月26日に行われる牡馬クラシック第2戦・日本ダービー。中山内回りで直線が310.0mというトリッキーなコースで行われた皐月賞から、525.9mという直線の長い東京芝2400mに舞台が替わり、牝馬路線ほどではないものの求められる適性が大きく変わる一戦。本記事では血統面を中心に、日本ダービーのレース傾向を整理していきます。

皐月賞と日本ダービーの舞台は最後の直線距離が200m以上も差があり、それゆえに皐月賞では小回りコースを器用に立ち回る機動力、日本ダービーでは終盤の末脚勝負で伸び負けない末脚の持続力が大きなテーマとなっています。

これは、皐月賞のレース内容からも読み解け、同組の本番好走馬のほとんどが皐月賞で上がり3F5位以内を記録。反対に、皐月賞で上位の上がりを使わず好走した馬の多くは日本ダービーでは凡走しており、キタサンブラックやタイトルホルダーといった後のGⅠ馬もこの傾向には逆らえていません。

皐月賞組 上がり3F順位別成績(過去10年),ⒸSPAIA


<皐月賞組 上がり3F順位別成績(過去10年)>
5位以内【8-8-4-23】勝率18.6%/連対率37.2%/複勝率46.5%/単回収率100%/複回収率94%
6位以下【0-1-2-47】勝率0.0%/連対率2.0%/複勝率6.0%/単回収率0%/複回収率21%

血統面についても、皐月賞で好成績を残しているSpecial血脈(Nureyev≒Sadler's Wellsなど)が日本ダービーでは苦しい成績。皐月賞では小回りコースを器用に立ち回る機動力、ハイペースの消耗戦にもへこたれない欧州的底力が重宝されますが、末脚勝負になりやすい日本ダービーにおいては同血脈の良さが生きにくい傾向にあります。

Special内包馬の成績(過去10年),ⒸSPAIA


<Special内包馬の成績(過去10年)>
皐月賞【6-6-4-73】勝率6.7%/連対率13.5%/複勝率18.0%/単回収率62%/複回収率66%
日本ダービー【3-3-4-85】勝率3.2%/連対率6.3%/複勝率10.5%/単回収率20%/複回収率58%

反対に、日本ダービーで注目したいのは北米血脈、特にSeattle SlewやSecretariatといった『Bold Ruler+Princequillo』血脈です。Seattle SlewやSecretariatは伸びやかなストライド走法を子孫に伝え、東京競馬場のような広いコースを得意とする代表的な血脈といえるでしょう。2019~2022年のダービー馬はいずれもSeattle Slewの血を内包しており、昨年も6番人気3着のハーツコンチェルトが該当。近年の日本ダービーでは大注目の血統傾向です。

また、過去10年で5頭の勝ち馬を出すディープインパクトは母方にSecretariatの半兄であるSir Gaylordの血を内包。直仔はほとんどいませんが、孫世代が多くなる今後はSecretariatやSeattle Slewなどと組み合わせてSir Gaylordの血を増幅する形に注目です。

血統別成績(過去10年),ⒸSPAIA


<血統別成績(過去10年)>
Seattle Slew【5-2-2-20】勝率17.2%/連対率24.1%/複勝率31.0%/単回収率398%/複回収率86%
Secretariat【5-2-4-45】勝率8.9%/連対率12.5%/複勝率19.6%/単回収率68%/複回収率111%
Sir Gaylord【7-7-8-84】勝率6.6%/連対率13.2%/複勝率20.8%/単回収率128%/複回収率62%


血統解説

ジャスティンミラノ
母マーゴットディドは2011年ナンソープS優勝馬で、本馬の半姉にはMission Impassible(2018年クイーンエリザベスⅡ世CC2着)とマジックアティテュード(2020年ベルモントオークス優勝)がいる良血。

本馬はキズナ×Exceed And Excelというオークス3着馬ライトバックと同じ組み合わせで、母母がShareef Dancer×DarshaanやSir Gaylordの4×3などを持つ配合形からも芝中距離戦で末脚を生かす競馬がベストでしょう。皐月賞をそつのない競馬で制したものの、本来は日本ダービー向き。前走以上のパフォーマンスに期待します。

レガレイラ
3代母ウインドインハーヘアに遡る名牝系に属し、母母ランズエッジは名馬ディープインパクトの3/4同血の妹。さらに、母ロカはアーバンシックの母であるエッジースタイルの全姉であり、本馬はアーバンシックと同じスワーヴリチャードの産駒でもあります。つまり、本馬とアーバンシックは血統構成がほとんど同じで、両馬とも不器用ではあるものの末脚の爆発力は素晴らしい素質馬たちです。

本馬は皐月賞で上がり3F最速を計時、スワーヴリチャード(母母父父Seattle Slew)の産駒らしく東京替わりは大幅プラス。改めて豪快な末脚を披露してくれるでしょう。

シックスペンス
母フィンレイズラッキーチャームはアメリカのダ7FのGⅠマディソンSの勝ち馬。Cryptoclearanceの4×3やDanzigの4×4などが中心のスピード馬で、本馬も母譲りのスピードが持ち味のマイラー体型に出ています。折り合いがスムーズで世代限定戦なら2400mでも……という気はしますが、1600~2000mがベスト。今回は展開の助けが欲しいところです。

2024年日本ダービーの有力馬と評価,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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