【NHKマイルC】キングカメハメハがレース史上最大の5馬身差で勝利 GⅠ初制覇した2004年を回想

逆瀬川龍之介

NHKマイルカップ 孫も活躍のキングカメハメハ,ⒸSPAIA

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レース史上最大着差での圧勝

史上最強マイラーはどの馬か。オールドファンならニホンピロウイナーやタイキシャトルを思い浮かべるだろうし、近年ならロードカナロアやモーリス、グランアレグリアが有力候補となるだろうか。そんな中であえて個人的に推したいのがキングカメハメハである。

もしかすると「キングカメハメハってマイラー?」という声が上がるかもしれない。確かにマイル経験は僅か1戦しかない。しかし、そのレースが強烈なインパクトを放っているのだ。今からちょうど20年前、04年のNHKマイルCである。

当時のキングカメハメハは5戦4勝。前走の毎日杯で重賞初制覇を果たすと、皐月賞を見送り、NHKマイルCへと駒を進めた。その背景には、名伯楽・松田国英調教師の「1600mと2400mでGⅠを勝てば、種牡馬としての価値が高まる」という考えがあった。単勝オッズは1番人気の3.6倍。とはいえ、2番人気のシーキングザダイヤが3.7倍、3番人気のメイショウボーラーが5.0倍、4番人気のコスモサンビームが6.8倍だから、上位伯仲の混戦ムードだった。

そんな中で迎えた一戦、レース後には誰もが「一強」だったと気づくことになる。前半600mが33秒9のハイペースを、キングカメハメハは中団外目で手応え良く追走。直線に向いて大外から先行勢を捕まえると、あとは突き放す一方だ。最後は流しながら、2着コスモサンビームにレース史上最大着差となる5馬身差の圧勝。そして勝ち時計の1分32秒5はレースレコードだった。

安藤勝己騎手は「マイルの馬じゃないと思っていたので、負けるとしたらここだと思っていたけど、めちゃくちゃ強かった。びっくりしました」と回想。このレースぶりを受けて「ダービーも勝てる」と確信したという。その言葉通り、続くダービーも快勝。しかし、秋初戦の神戸新聞杯を制した後、右前浅屈腱炎を発症し、志半ばで引退することとなった。実質的な現役生活は1年足らず。短くて濃密な競走馬人生だった。

時は過ぎ、種牡馬となったキングカメハメハの産駒は11頭がNHKマイルCに参戦してきたが、意外にも父仔制覇には手が届かず。15年ミュゼスルタンと18年レッドヴェイロンの3着が最高着順というのは、やや物足りない成績かもしれない。

それでも一昨年はロードカナロア産駒のダノンスコーピオンが1着、母の父キングカメハメハのマテンロウオリオンが2着。昨年はドゥラメンテ産駒のシャンパンカラーが1着、ロードカナロア産駒のウンブライルが2着と、2年連続で孫世代がワンツーフィニッシュを決めた。雌伏の時を経て「カメハメハの血」は3歳マイル王決定戦で存在感を発揮しているのだ。

今年は2頭の孫が参戦する。ルーラーシップ産駒のディスペランツァは前哨戦のアーリントンCを上がり3F32秒4の豪脚で差し切り、重賞初制覇。一気に3歳マイル王の座を視界にとらえた。今回は初の東京コースとなるが、長い直線は間違いなくプラスだ。もう1頭のロジリオンはクロッカスSの覇者。前走のファルコンSは5着に敗れたが、直線で前が壁になって追えなかったので参考外でいい。先週の天皇賞(春)を制したテーオーロイヤルと同じリオンディーズ産駒で、血の勢いにも期待したいところだ。

キンカメ孫の3連覇、さらにはワンツーとなるか。ここまで講釈を垂れた筆者は、2頭の単勝、さらには馬連とワイドを握りしめてレースを見守ることとしたい。

《ライタープロフィール》
逆瀬川龍之介
国内の主要セール、GⅠのパドックはもちろん、時には海外のセリにも足を運ぶ馬体至上主義のライター。その相馬眼を頼りにする厩舎関係者、馬主は少なくない。一方、マニアック、かつ実用的なデータを駆使して、ネット媒体や雑誌などにも寄稿するなど、マルチな才能を持っている。

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