【天皇賞(春)】本命は昨年の3着馬シルヴァーソニック 穴馬候補はサヴォーナ

山崎エリカ

2024年天皇賞(春)のPP指数,ⒸSPAIA

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3~4角で最内を立ち回れる馬が活躍

過去10年(うち阪神開催を除く)の天皇賞(春)では、逃げて3着以内に入ったのは16年1着キタサンブラックのみ。一方、追込みでの3着以内もかなりのハイペースとなった14年の2着馬ウインバリアシオンぐらい。京都芝3200mはスローペースで流れて3角の下り坂からのペースアップが主流だ。

前半は後方から進めても良いが、2周目の3角で7番手以内にいないと勝ち負けするのは難しく、先行~中団勢が6勝(2着は7回)している。また3~4角で最内を立ち回れる馬が活躍しており、同期間では馬番1番の馬が3勝している。


能力値1~5位の紹介

2024年天皇賞(春)のPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 テーオーロイヤル】
4連勝で2022年のダイヤモンドSを優勝し、次走の阪神で行われた天皇賞(春)でも3着と好走した。以降は中距離戦を使われて不振になった時期もあったが、昨秋に骨折明けから復帰し長距離路線を使われると、ステイヤーズSで2着、ダイヤモンドS、阪神大賞典と連勝し、着実に指数を上昇させた。

前走の阪神大賞典は6番枠からまずまずのスタートを切り、前2頭を追いかけて3、4番手の内を確保した。スタンド前でも前にスペースを作りながら単独3番手を追走し、スタンド前では2列目の内。2周目の3角では前2頭を最短距離から楽に追いかけ、4角出口でしっかり進路を取った。直線で並ぶ間もなくすっと抜け出して1馬身半差。ラスト1Fで突き抜けて5馬身差で完勝した。

前走は2周目の3角から一気にペースが上がった中で、最短距離を通ったことも勝因ではあるが、それを考慮してもとても強かった。今回は前走で走り過ぎた疲れが気になる。ただ、過去にディープボンドが21年の阪神大賞典を圧勝して自己最高指数を記録し、次走の天皇賞(春)で指数を下げながらも2着に善戦したように、この勢いは軽視できないものがある。

【能力値2位 ドゥレッツァ】
未勝利勝ちから破竹の5連勝で、前々走の菊花賞を制した上がり馬。前々走は大外17番枠からスタートし、そこから先行して1周目の3角手前でじわっとハナを取り切った。1~2角で1F13秒台までぺースを落とし、3角まででパクスオトマニカらを行かせた。3~4角ではペースアップするなかで最短距離を通り4角で前2頭の間を縫って外に出し、先頭のリビアングラスと3/4差で直線へ。ラスト1F手前で同馬をかわし、外から迫るタスティエーラも突き放して3馬身半差で完勝した。

京都芝の3000m越えのレースは3角の下り坂から一気にペースが上がることが大半で、ここで好位にいないと勝ち負けに持ち込むのは難しい。ドゥレッツァは大外枠ながら3角までのレース運びが完璧だった。

休養明けの前走の金鯱賞は2着。前走は序盤の進みが悪く、道中も促されてやや忙しい追走だった。向正面でペースが緩み勝ち馬プログノーシスとともに位置を押し上げたが、3角手前でプログノーシスに先制され、3~4角で包まれて仕掛けが遅れた。これが5馬身も差をつけられた理由だ。ドゥレッツァの反応が甘かった面もある。前半で置かれたことも含めて、さすがに芝2000mは忙しいようだ。

今回はベストの淀の長丁場。前進はあると見ているが、前走のレースぶりからここで完調にもっていけるのかという不安がある。またリズム重視かつ馬優先で位置を取っていく戸崎圭太騎手に前々走のようなレースを求めるのもどうか。前走で短い距離を使われているので、リズム重視でも好位かその直後くらいの位置は取れそうだが、2周目の3角では菊花賞時よりも後ろの可能性が高い。相手候補の1頭だが、過信も禁物だ。

【能力値3位 ブローザホーン】
タフな馬場で行われた昨夏の札幌日経OPの覇者。同レースでは6番枠から五分のスタートだったが、かなり押すとスピードが乗り、序盤は単独4番手を追走。道中では折り合いを欠きながら単独2番手に上がった。3角手前でアケルナルスターが捲ってきたのでそれに抵抗して動いた。3角ではもう先頭、4角で仕掛けて後続を引き離し、ラスト1F地点では後続と4馬身差。ラスト1Fで突き抜けて6馬身差で圧勝した。かなりのスタミナがある内容だった。

心房細動で競走中止した後の一戦となる前々走の日経新春杯は、前後半5F58秒3-60秒9とかなりのハイペースで、前が崩れ、差し追込み馬有利の展開に。ブローザホーンは中団外から差し切って優勝した。心房細動は一過性のもので大半は復活するが、重賞クラスだと次走では必ずと言っていいほど指数を下げる傾向がある。ブローザホーンも札幌日経OPから指数がダウンした。

前走の阪神大賞典は一転して、前半5F63秒7-中盤5F65秒2-後半5F57秒9の超スローペース。3番手のテーオーロイヤルをマークしながら好位の中目で進めていたが、やや折り合いに苦労したこともあり、ラスト1Fで内から捌いて上がってきたワープスピードにかわされてクビ差3着となった。

テーオーロイヤルには5馬身差をつけられており完敗だったが、そこまで差が開いてしまったのは、ブローザホーンが上がりの速い決着を得意としていないのもあるだろう。時計が掛かる馬場で、速い流れがベストのタイプ。今の京都だとひと雨降って、逃げ馬にペースを引き上げてもらいたいところだが、今回は大逃げ馬が不在。京都芝3200mのような上がりが速くなる決着は得意ではないが、不向きな前走で3着だったことを考えると、ここも軽視はできない。

【能力値4位 サリエラ】
昨年の目黒記念は超スローから3~4角でペースが上がって前と内が有利な展開となった。サリエラは3~4角で中団の外目からロスを作りながら進出。しかし、直線序盤で進路を作れず外に誘導するのにやや苦労した。進路を確保したのはラスト2F手前。そこから追い出されると徐々に伸び始め、ラスト1Fでは一番伸びている。このレースぶりから長距離型と見ていたが、やはり長距離戦で花開いた。

前走のダイヤモンドSは8番枠から五分のスタートを切って、そこからはコントロールし好位の外目を追走した。2番手のグランスラムアスクの後ろについてからはペースが上がらず4角まで我慢し、直線序盤でスパートをかけた。そこで外から上がったテーオーロイヤルに並ばれ前に出られた。ラスト2F以降はしぶとく抵抗したが、最終的にはクビ差の2着だった。

サリエラはエンジンが掛かってからが勝負の馬。前走はエリザベス女王杯からの大幅距離延長で、鞍上が意図的に仕掛けを遅らせた面があったが、最後までテーオーロイヤルにしぶとく食らいついていた内容から、3~4角からエンジンをかけていけば逆転の可能性もあったと見ている。ただし、当時のテーオーロイヤルは休養明けであり、本来の能力を出し切れていないのも事実だ。今回は前走で自己最高指数を記録した後の一戦で、疲れが出てしまうかもしれないが、長距離でのポテンシャルが高ければ想定以上の走りを見せる可能性もある。

【能力値5位タイ サヴォーナ】
昨夏の福島芝2600m戦を逃げ切り、次走の神戸新聞杯では超スローペースで逃げるファントムシーフを2列目の最内からマークし、最後はサトノグランツからアタマ差2着。芝の長距離で上昇を見せた。続く菊花賞では5着だったが、やや出遅れ、序盤で後方馬群に包まれて位置を下げ、そこから好位の外目まで挽回していくという中身のある内容だった。

前々走の日経新春杯は13番枠からやや出遅れたが、二の脚で思い切って先行した。1角で内に入れて、向正面で2列目最内を追走。3~4角では先頭のディアスティマの後ろから楽な手応えで最短距離を通った。4角では進路がなく仕掛けを待たされたが、直線序盤で前が開いて追い出されると内から先頭のサトノグランツに並びかけ、ラスト1Fでかわしたところで外からブローザホーンに差された。1馬身差の2着だった。

かなりのハイペースで前へ行った馬には厳しい流れ。上位入線馬の中では前半でもっとも前の位置でレースを進めており、一番強い内容だったと言える。

前走の阪神大賞典は五分のスタートを切ったが、なぜか前には行かずに、中団中目でディープボンドをマークしながら進める形。このため向正面やコーナーで包まれ、直線序盤でもやや窮屈になった。最後までしぶとい粘りを見せてはいたが、結果6着だった。

前走は池添謙一騎手ならではの感性の競馬で不可解な位置取りだったが、休養明け好走の疲れが出ており、無理をさせたくないという騎手心理もあったのかもしれない、いずれにしろ、能力を出し切っての敗戦ではないので、前走の敗戦で人気薄となったここは穴馬候補としたい。

【能力値5位タイ ワープスピード】
前走の阪神大賞典の2着馬。9番枠からやや出遅れてそこから促されてはいたが、進みが悪く中団馬群の後方外目を追走。スタンド前で最内に入れて、向正面から内のスペースを拾いながら進出していった。3~4角では2列目のテーオーロイヤルの後ろから最短距離を通って直線へ。直線序盤で馬群の間を捌いて伸び、ラスト1Fで2番手に上がり、外から接近するブローザホーンの追撃をクビ差でしのいだ。

前走は超スローペース。3角からペースアップしていく展開だったが、ここで上手く最短距離を通ったことが好走要因。神騎乗に近いレベルだったが、これでもテーオーロイヤルに5馬身も離されてしまった辺りにパンチ不足を感じる。

【能力値5位タイ チャックネイト】
一昨年の春にノド鳴り手術をし、そこから復帰するとそこからは右肩上がり。重賞初挑戦となった前々走のアルゼンチン共和国杯では中団馬群の中目を追走。最後のコーナーで包まれたが4角で外に誘導した。直線序盤は進路がなく、さらに外に誘導するロスのある競馬ながら、じわじわ伸びて3着同着となった。進路を確保してから、伸び始めは地味だったが、ラスト1Fではしっかり伸びており、この辺りに長距離適性の高さを見出すことができた。

前走の不良馬場で行われたAJCCでは11番枠からまずまずのスタートだったが、思い切った先行策で2列目の外まで進出した。3~4角では先頭列の外、ショウナンバシットの後ろを追走し、4角で外から上がったボッケリーニに併せて直線へ。序盤でボッケリーニに前に出られて3位争いとなったが、ラスト1Fで差し返してハナ差で勝利した。

重馬場の六社Sで3勝クラスを突破しているように、道悪が得意で最後までしぶとく伸びるほどのスタミナがある。しかし、今回はスタミナが不足しがちな休養明けで大幅距離延長。まして前走は不良馬場での優勝で消耗度の高いレースだった。緒戦から全力全開は考えにくい。もしここで通用するとすれば、この休養中に大きく成長しているパターンになるだろう。


本命候補は昨年の3着馬シルヴァーソニック

シルヴァーソニックは一昨年暮れのステイヤーズSで休養明けながら勝利すると、次走は海外重賞のレッドシーターフハンデキャップを勝利。そして昨年の天皇賞(春)で3着と、年齢を重ねながら持久力が強化され、地力を付けていることを感じさせた。

昨年の天皇賞(春)は16番枠ということもあり、無理なく中団やや後方の外目を追走。向正面でボルドグフーシュの後ろまで上がって同馬をマークした。4角で同馬の外に誘導して直線へ。追われるとじわじわ伸び始め、最後は2着ディープボンドから1馬身差の3着と好走した。

向正面以降はペースが緩んでおり、そこで位置を押し上げていけば2着はあった内容。今回は鞍上がコスモキュランダで弥生賞を捲り勝ちしたM.デムーロ騎手。序盤は後方でもペースが緩んだ隙を見計らって進出し、3角では好位に上がるような競馬をしてくれる気がする。

前走こそ11着と崩れているが、長期休養明けで本調子ではなく、向正面で外から位置を押し上げ、3角でかなり外を回るロスが堪えて息切れし、大敗したように見える。今回は叩かれての前進が期待できる。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)テーオーロイヤルの前々走指数「-29」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.9秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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