【阪神大賞典】武豊騎手と〝縁深い〟シルヴァーソニックの血統 名牝との海外GⅠ初制覇などを振り返る
逆瀬川龍之介
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90年代の武豊騎手を彩る〝縁深い〟血統
GⅠ勝ち馬のビッグニュースではないし、馬券の参考になる話でもない。しかしながら、現役屈指のステイヤー・シルヴァーソニックが武豊騎手と阪神大賞典で約4年ぶりにコンビを組む。というニュースは個人的にはかなりのインパクトがあった。レジェンドジョッキーが一度しか乗らなかった馬は数多くいる。ただ、騎乗経験がある馬に約4年ぶり、厳密にいえば1373日ぶりに乗るというのは最長ブランク記録の上位に違いない。
そして、このニュースが大きな意味を持ったのは、シルヴァーソニックの血統が武豊騎手と縁深いからでもある。母エアトゥーレには全23戦のうち10戦で騎乗。02年にはシンガポール→フランス→イギリスと転戦し、モーリスドゲスト賞で2着になるなど、海外GⅠ制覇まであと一歩に迫った。
祖母は名牝スキーパラダイス。フランスのA.ファーブル厩舎の所属だったが、社台ファームの吉田照哉代表が馬主だったため、4歳時(満年齢)の94年には武豊騎手が主戦を任された。初騎乗の京王杯スプリングCを制覇。続く安田記念では5着に敗れたが、フランスに帰国後もコンビを継続。ムーランドロンシャン賞では最後方待機からパートナーの鬼脚を引き出し、日本人騎手として史上初となる海外GⅠ制覇を果たした。
さらにスキーパラダイスの半弟であるスキーキャプテンでは、95年のきさらぎ賞を単勝オッズ1.0倍の元返しで圧勝。平成になって以降の重賞では他にナリタブライアン(95年阪神大賞典)とディープインパクト(05年菊花賞)しか成し遂げていない偉業だ。スキーキャプテンはその後、ケンタッキーダービーに日本馬として初参戦。勝ったサンダーガルチから大きく離された14着に終わったが、日本競馬史に大きな一歩を記した。こうやって一頭一頭との歴史を紐解くと、この血統が90年代の武豊騎手を彩ってきたことがよく分かる。
意外なことに、この一族では07年7月29日の小倉2R・2歳未勝利をキャプテントゥーレで制して以来、約17年も勝利から遠ざかっている。しかし、それは騎乗機会が少なかったことが原因で、血の持ち味を引き出す術は心得ている。実は20年以降、シルヴァーソニックは外国人ジョッキーでしか勝利しておらず、ここは腕の見せどころだ。自身の持つ京都大賞典9勝に並ぶ、同一重賞の最多勝利タイ記録がかかる一戦。15日には55歳を迎えるレジェンドの手綱捌きに要注目だ。
《ライタープロフィール》
逆瀬川龍之介
国内の主要セール、GⅠのパドックはもちろん、時には海外のセリにも足を運ぶ馬体至上主義のライター。その相馬眼を頼りにする厩舎関係者、馬主は少なくない。一方、マニアック、かつ実用的なデータを駆使して、ネット媒体や雑誌などにも寄稿するなど、マルチな才能を持っている。
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