【朝日杯FS】「前走上がり最速」の「距離延長組」に注目 血統面でも傾向に合致、ダノンマッキンリー
坂上明大
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傾向解説
中山芝2000mのホープフルSがGⅠに格上げされてから、短距離~マイル路線の2歳チャンピオン決定戦という位置付けにシフトした朝日杯FS。短距離馬も多く参戦するためハイペースになることが多く、完成度の高さとハイペース適性が求められる一戦です。本記事では2歳戦に強い血統を中心に、朝日杯FSのレース傾向を整理していきます。
まず、紹介したいデータは前走距離別成績。先週の阪神JFでも同様の傾向を挙げましたが、朝日杯FSにおいても芝1600m以上からのローテーションの成績が高水準となっています。日本競馬は芝1600~2500mを中心に番組が構成されており、2歳戦においても1500m以下のレースレベルは総じて低い傾向にあるため、基本的にはレベルの高い芝1600m以上で戦ってきた馬から狙うのがセオリーといえるでしょう。
ただ、朝日杯FSで注目したいのは前走上がり3F1位の距離延長。これに該当する馬は、芝1400m以下でのハイペース経験に加え、距離延長しても問題ないぐらい余力が大きい可能性が高いです。よって、期待値という点では高いパフォーマンスを期待できるのではないでしょうか。
<前走距離別成績(芝・過去6年)>
距離延長【1-1-2-35】勝率2.6%/連対率5.1%/複勝率10.3%/単回収率44%/複回収率76%
→上がり3F1位【1-1-2-9】勝率7.7%/連対率15.4%/複勝率30.8%/単回収率134%/複回収率230%
同距離【4-4-3-27】勝率10.5%/連対率21.1%/複勝率28.9%/単回収率31%/複回収率39%
距離短縮【1-1-1-9】勝率8.3%/連対率16.7%/複勝率25.0%/単回収率65%/複回収率76%
血統面での注目は、オーストラリアで一大父系を築き上げたデインヒル。オーストラリア競馬は2歳戦と短距離戦が充実しており、そのカテゴリーを牽引してきたのがデインヒル父系です。同父系がつたえるスピードと早熟性は日本の2歳戦においても非常に強力で、先週の阪神JFでも取り上げた重要血統(母父Danehill Dancerのアスコリピチェーノが1着)。朝日杯FSでも過去9年の勝ち馬のうち4頭がデインヒルの血を内包しており、やはり2歳のマイル戦では非常に強力な血統といえるでしょう。ただ、日本で種牡馬入りしたハービンジャーは欧州の芝中長距離馬のため、同血脈は逆に避けた方がベターです。
<デインヒル内包馬(ハービンジャー経由を除く・過去6年)>
該当馬【3-1-1-7】勝率25.0%/連対率33.3%/複勝率41.7%/単回収率181%/複回収率75%
また、スピードとタフさに長けたノーザンテーストにも注目。ノーザンテーストは1982~88、90~92年と10度の日本リーディングサイアーに輝いた大種牡馬ですが、血統的にはLady Angelaの3×2という野心的なインブリードが最大の特徴で、2023年の現在においても強い影響力を持つ血統のひとつです。特にホープフルSのGⅠ格上げ後はハイペース戦が続いているだけに、今年もノーザンテースト持ちの伏兵には要注意。2021年に8番人気で4着のアルナシームや2022年に16番人気で4着のキョウエイブリッサなど、惜しくも馬券圏外に沈んだ隠れ激走馬も少なくありません。
<ノーザンテースト内包馬(過去6年)>
該当馬【2-3-1-27】勝率6.1%/連対率15.2%/複勝率18.2%/単回収率23%/複回収率103%
血統解説
・ダノンマッキンリー
母ホームカミングクイーンは2012年英1000ギニー優勝馬で、本馬の半姉にはShale(2020年モイグレアスタッドS)などがいる良血馬。デインヒル系Holy Roman Emperorの影響から仕上がりが早く、モーリス産駒の本馬も現時点での完成度が非常に高い一頭といえるでしょう。また、前走は芝1400m戦で上がり3F1位のタイムを計時。薄くではありますがノーザンテーストの血も内包しており、近年の朝日杯FSの傾向にピッタリの一頭です。
・ジャンタルマンタル
母インディアマントゥアナは2018年レッドカーペットH(北米GⅢ、芝11F)の勝ち馬で、父Palace Malice(2013年ベルモントS)はアイアンバローズやジャスティンパレスの半兄。距離適性の幅も広く、手先が強いためダート適性も高そうな北米血統馬です。瞬発力勝負では分が悪そうですが、前走のデイリー杯2歳Sと同様に平均ペース以上の我慢比べには滅法強いタイプ。近年の朝日杯FSのハイペース化は強い追い風となりそうです。
・シュトラウス
母ブルーメンブラットは2008年マイルCS優勝馬。本馬はモーリス×ブルーメンブラットというマイルの血統馬らしいパワフルで胸の深い馬体を有しています。個人的にもタフなマイラーとして大舞台での活躍に期待している素質馬。ただ、両親の実績からも成長スピードは少々遅めです。むしろ、現状の完成度でGⅠを勝ち切るようなら、来年以降、期待がさらに大きく膨らみます。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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