【チャレンジC回顧】後半6Fすべて11秒台のスタミナ戦 ベラジオオペラが持久力勝負に高い適性を示す
勝木淳
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ワンランク上を目指すベラジオオペラ
今週から12月。あと1カ月で一斉に年を重ねるサラブレッドの世界では、この時期になれば3歳と古馬の間に差はほぼない。だが、一方で埋められないのは経験の差だ。阪神内回り芝2000mという機動性を問う舞台では、ペースアップのタイミングなど経験値がものをいう部分もある。若さと円熟味、どちらが勝るのか。そして、来年以降にこの路線でのし上がっていけるのはどの馬か。チャレンジCは来年を占う競馬でもある。
そういったコンセプトを考えると、ベラジオオペラの勝利には納得だ。3歳、それもダービーでの4着は勝ち馬タスティエーラとタイム差なし。世代最高峰を決める競馬でのパフォーマンスは高く、古馬相手に十分通用する力はある。だが、ダービー以降、秋に向けて立ち上げる段階で思うように体調が戻らず、その復帰は12月まで長引いた。順調ではない臨戦過程に不安を感じたファンも多かっただろう。古馬勢は天皇賞(秋)で1:56.2を記録したガイアフォースがいた。こちらも4歳でここを勝ち、来年はもうワンランク上を目指したい馬で、意欲を感じた。さらに重賞3勝のベテラン・ボッケリーニもいて、人気は古馬勢が上だった。その中でハナ差しのぎ切ったベラジオオペラは評価に値する。さすがはダービー好走馬。世代上位ランクであることを証明した。
持久力勝負に強い牝系
レースのカギはテーオーシリウスとフェーングロッテンが握っていた。テーオーシリウスの鞍上は斎藤新騎手。今春の美浦Sで3勝クラスを突破したときの鞍上で、相性はよさそうだった。しかし、同レースは大逃げとはいえスローペース。このレースが頭にあった同騎手は飛ばさない公算もあった。実際、前半600m36.3、1000m通過59.9は平均ペース程度だ。フェーングロッテンがゲートで遅れ、後方に回ってくれたおかげで手に入れたマイペース。無理に飛ばす必要はなかったが、重賞でこのペースならみんなついてくる。大逃げにはならず、馬群はひと塊で進んだ。これではどの馬も最後まで脚を残せ、末脚比べになる。もう少し飛ばしてほしかった。
とはいえ、残り1200m、11.5-11.9-11.9-11.7-11.6-11.8とゴールまで超ロングスパート型の競馬になった。前半突っ込まなかった分、中盤もペースを極端に落とさなかったため、全体的に息を入れる場面も少なく、持久力がないと最後は残れない競馬になった。
中団で流れに乗り、外を回って抜け出したベラジオオペラは内容も濃かった。母エアルーティーン、その祖母がエアデジャヴー。エアシェイディ、エアメサイア、エアスピネルなど活躍馬が多い牝系で、瞬発力より持続力勝負に強いタイプが多く、後半1200mのラップがほぼ一定だったことも同馬には味方になった。また、エアデジャヴーの弟といえば00年皐月賞、菊花賞を勝ったエアシャカール。ベラジオオペラも菊花賞で楽しみがあっただけに、今後は距離を延ばして可能性を探ってほしい。距離を延ばし、スローペースにはまると分からないが、そこは自分から早めに動くなど強みを生かす策はある。
2着はボッケリーニが最後まで食い下がった。ペースの緩急がなく、最後の急坂でスタミナを問う流れになったことで、適距離が少し長めの同馬が好走したとみる。本質は2400m以上に強く、今回で2000mでも戦えると判断するのは早そうだ。これを機に2000mに続けて出てくるなら、むしろ嫌ってもいい。捌きの巧さなどモレイラ騎手の手腕が加点された結果でもあった。
3着イズジョーノキセキも、適距離が少し長めの牝馬で、この好走も2000m戦としてはスタミナ重視のレースになった証だろう。とはいえ、6歳牝馬でこの結果は立派といっていい。昨年の有馬記念も4着まできており、この時期の少し時計のかかる馬場は得意だ。なかなか安定して走れないのは好走ゾーンが少し狭いというのも大きい。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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