【阪神JF】ボンドガールは好走パターンに該当し有力 穴は前走1勝クラスのキャットファイトら関東馬

勝木淳

2023年阪神JFに関するデータ,ⒸSPAIA

新馬、重賞好走が基本モデル

2歳女王決定戦の登録馬にアルテミスSを勝ったチェルヴィニアの名がない。万全の状態で出走することが難しいとのことで、無理をしない選択をした。この辺の英断、若いうちは成長を大事にする姿勢は、さすがイクイノックスのチームらしい。世界ナンバー1ホースも、3歳春にレースを絞ったことが、その後の素質開花につながったといえる。

しかし、こうなると一転して混戦になる。前哨戦好走馬のほか、牡馬相手に2勝目を挙げた馬も多く、3勝馬もいて、戦力比較は慎重にいきたい組み合わせだ。データは過去10年分を使用する。

阪神JFの人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気は【5-1-0-4】勝率50.0%、複勝率60.0%と高いが、勝ち馬5頭のうち4頭は2勝以上挙げていて、例外はリバティアイランド。前走重賞2着以内【4-1-0-2】なので、このゾーンに入るなら信頼できる。

その分、2番人気以下は混戦。4番人気以内の複勝率は50.0%と高く、上位人気のいずれかを軸にすえよう。ただ、10番人気以下【0-2-1-85】複勝率3.4%などヒモ荒れ傾向にある。馬券は手広くいこう。

阪神JFのキャリア別成績,ⒸSPAIA


抽選対象になるキャリア1戦は【0-1-0-12】複勝率7.7%と厳しく、キャリア2、3戦が【10-8-10-85】と好走の大半を占める。なかでも2戦の確率が高く、基本は新馬勝ち、重賞好走と順調に進んできた馬がいい。キャリア4戦【0-1-0-28】複勝率3.4%なので、3勝馬コラソンビートはデータ上、苦しい。

穴は前走1勝クラスの関東馬

ここからは前走成績を参考に候補を絞っていく。主に前哨戦・アルテミスSとファンタジーSの取捨が大事になるが、今年は萩Sを勝ったルシフェルや他路線からの転戦組も怖い。

阪神JFの前走クラス別成績,ⒸSPAIA


阪神JFの前走GⅢ、レース別成績,ⒸSPAIA


基本は前走GⅢ【8-4-7-60】勝率10.1%、複勝率24.1%から選ぼう。内訳は上記の通り、アルテミスS【5-3-3-18】勝率17.2%、複勝率37.9%、ファンタジーS【2-0-2-31】勝率5.7%、複勝率11.4%で、とりわけアルテミスSが有力だ。しかし、今年は2着サフィラのみ。ここだけでは馬券は組めない。

阪神JFの前走アルテミスSの着順別成績,ⒸSPAIA


アルテミスS2着は【2-1-1-2】勝率33.3%、複勝率66.7%なので、頼りにはなる。今年のアルテミスSは前後半800m48.0-45.6で、最後の600mは11.4-11.2-11.0、33.6の美しい加速ラップだった。3番手から上がり最速33.3を記録したチェルヴィニアに対し、サフィラはその後ろから競馬を進め、2位33.4を出して2着だった。チェルヴィニアとは位置取りの違いが大きかった。全兄サリオスと同じく、瞬発力勝負は少し分が悪いが、GⅠの持続力勝負なら期待できる。サロミナの血統は成長が緩やかなタイプも多く、父ハーツクライも合わせ、若いうちは少し鈍さもありそう。サリオスのようにしっかり先行できれば、女王の座も近づく。

アルテミスSが1頭なので、ファンタジーSも確認する。ここは1着【2-0-1-4】勝率28.6%、複勝率42.9%、2着以下【0-0-1-27】と極端。15番人気で勝ったカルチャーデイが候補だ。前走阪神【0-0-1-9】、京都【2-0-1-22】で、外回りの京都で行われた今年は評価していい。

今年は前半600m34.1、後半600m35.2。残り800~600mで11.1が出たハイペース。積極策で押し切ったカルチャーデイの我慢強さはGⅠでも強みになる。気になるのは距離だろう。今回はマイル戦初挑戦。半兄メイショウチタンは1400m巧者であり、父ファインニードルも新潟芝1000mに強いなど短距離型。マイルで同じ競馬ができるかどうか。

なお、コラソンビートの京王杯2歳S【0-1-1-3】、アスコリピチェーノの新潟2歳S【0-1-0-4】、ボンドガールのサウジアラビアRC【0-0-1-2】で好走がないわけではないが、強調はしにくい。だが、ボンドガールは新馬も前走もハイレベルで、自身の評価は非常に高い。キャリア2戦、新馬、重賞好走はアスコリピチェーノもそうだが、好走モデルと同じ。狙いすましたローテーションでもあり、最近のトレンドを踏まえると、評価を下げない方がいいかもしれない。

前走OP・L【1-1-0-12】勝率7.1%、複勝率14.3%のうち、前走が1800mだと【1-1-0-2】。好走2頭がアイビーSなのは気になるが、萩S1着ルシフェル、抽選対象だが2着ビーグラッド、野路菊S2着メイショウゴーフルは面白い。特にルシフェルは末脚もしっかりしており、有力だ。

前走1勝クラス【1-3-2-44】勝率2.0%、複勝率12.0%は関東馬【1-2-2-12】勝率5.9%、複勝率29.4%、関西馬【0-1-0-32】複勝率3.0%で関東馬がいい。キャットファイト、ステレンボッシュはどちらもキャリア3戦なので、馬券に組み込んでおこう。

阪神JFに関するデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。


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