【アルゼンチン共和国杯】昨年の秋は不利の連続で不完全燃焼 本命候補は実力上位のテーオーロイヤル
山崎エリカ
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極端な脚質の馬は全く馬券に絡んでいない
過去10年で遅い年は5F通過62秒後半~63秒台、速い年は59秒~60秒だが、60秒を切った年は2回しかない。それも遅い年は極端なほど遅いので、予想する際には「極端なスローペース」か「ややハイペース」かに決め打つのもひとつの手段だが、全体的には極端にスローペースになることが多い。
それ以上に面白いのは、過去10年で逃げや追い込みという極端な脚質が全く馬券に絡んでいないこと。基本的に先行~中団が強く、勝ち馬は先行馬5勝、中団馬4勝と先行~中団がほぼ独占している。唯一、差し馬が優勝したのは2014年で5F通過59秒8とややハイペースだった年だ。
今年はアフリカンゴールドとディアスティマがハナを争うと見ているが、ハイペースにしていいタイプではなく、平均よりも遅いペースになると見ている。前走で長い距離を使われ、後方からレースを進めたようなタイプは苦戦する可能性が高い。
能力値1~5位
【能力値1位 ゼッフィーロ】
今年のオールカマー3着馬。同レースは8番枠から五分のスタートだったが、二の脚が速く、中団最内を取って追走。道中は本馬の前でレースを進めていたマテンロウレオが下がってきたので、コントロールしながら後方付近までポジションダウン。3~4角でマテンロウレオの外に出して前のスペースを詰め、中団の中目で直線へ。序盤で好位列まで上がってラスト1Fで窮屈なところを走り切って最後まで伸び続け、2着タイトルホルダーにクビ差まで迫った。
前走は前後半5F61秒1- 58秒5とかなりのスローペースで、前有利の流れだった。それだけに前のウインマリリンに突進しようとするのを抑え、位置が下がったマテンロウレオの巻き添えで位置が下がってしまったのは痛かった。しかし、最内から中目を追走したことで、脚を溜めたことが功を奏して自己最高指数を記録。そういったことを考えると、今回でさらなる上昇を期待するのは難しい。
また前々走の目黒記念は、まずまずのスタートを切りながらも坂スタートの影響もあって二の脚が遅く、位置が下がって最後方からの競馬になり、3角でも後方3番手。3~4角で外目を追走も位置を押し上げ切れず4着に敗れた。本馬はここへきて地力をつけていることは確かだが、目黒記念と同舞台の今回も後方からになることが予想され、ペースが上がらないと届かない可能性も十分あり、全幅の信頼はおけない。
【能力値2位 プリュムドール】
デビュー当初は芝1600、1800mに使われ勝ちきれない競馬が続いた。しかし、芝2000m以上を使われて成績が上昇。未勝利、1勝クラスを連勝した。昨秋のローズSはスピード不足だったが、その次走の芝2400mの2勝クラスを勝利したように、距離適性はかなり長距離にある。
その後も芝3200mの松籟Sで3着、そして前々走は芝3000mの古都Sで1着、前走は芝3600mのステイヤーズSで2着だった。その前走は12番枠からやや出遅れたが、そこから促して中団の外で流れに乗せ、向正面で最内に入れて追走。2週目の3~4角で中目に誘導して押し上げ、4角で外々からしぶとく差して、最短距離を立ち回ったシルヴァーソニックに3/4差まで迫った。
このように芝2000mをやや超える距離では掲示板止まりだったが、3000m級になると重賞でも馬券になるという、かなり距離適性が偏った馬だ。今回のメンバーでは指数上位の存在だが、休養明けで芝2500mとなると、レースの流れに乗れず、スタミナを生かせないまま終わってしまう可能性もある。鞍上がどうやってこの馬の持ち味を引き出すかが見どころとなりそうだ。
【能力値3位 ディアスティマ】
今年の目黒記念の2着馬。同レースは7番枠からまずまずのスタート。内からトップスタートを切ったバーデンヴァイラーがハナを主張したが、押して1角までにハナを奪った。そこからはペースを超絶スローに落とし、特に動きのないまま一団で3角へ。3~4角でじわっとペースを引き上げ半馬身差のリードで直線へ。序盤でバラジに並ばれたが、しぶとく踏ん張ってラスト1Fで同馬を振り切った。しかし、最後は中目から馬群を捌いて強襲してきたヒートオンビートに差されてアタマ差の惜敗だった。
前走の目黒記念は超絶高速馬場で前半5F62秒0-後半5F57秒9の超絶スローペース。つまり、逃げて内目をロスなく立ち回った本馬は展開に恵まれての2着だった。今回は同型馬アフリカンゴールドの出走により、前走ほど楽には前に行けないはず。今回は前走を大目標とし、そこで自己最高指数を記録した後の休養明けの一戦。ここが目標ではないはずで評価を下げたい。
【能力値4位 ヒュミドール】
デビュー以来久々の芝レースとなった信夫山特別(2勝クラス)を勝利すると、そこから芝に路線転向し、3勝クラスのノベンバーSも勝利した。オープン昇格後はやや足りない成績が続いた時期もあったが、2021年は小倉記念2着、福島記念2着と芝の重賞で馬券圏内に突入するまで地力をつけた。
しかし、その後はまた不振が続き、さすがに終わったかと思わせたが、前々走のダイヤモンドSでは2着に激走。同レースは5番枠から五分のスタートを切り、二の脚で楽に先行し、好位の最内を追走。向正面でスタッドリーが捲って先頭に立ち、ペースが上がったが、そこでワンテンポ待って前のスペースを広げた。3~4角でそのスペースを潰して最短距離を立ち回り、直線序盤ですっと伸びて2列目まで進出。ラスト2Fで先頭列に並びかけ、大外のミクソロジーとの叩き合い。惜しくもクビ差で敗れたが、3着馬には2馬身差としっかり差をつけた。
本馬はデビューしてからしばらくの間、不適なダートを使われ、無理をさせなかったことで7歳馬だがまだまだ元気だ。今回は前走で距離の長い天皇賞(春)を後方からレースをした後の一戦となり、レースの流れに乗れるか微妙も、能力はまだしっかりしたものを持っている。過大評価は禁物も、警戒しておく必要はある。
【能力値4位 マイネルウィルトス】
デビューからしばらく脚を溜める競馬で伸び悩んでいたが、2020年4月の飯盛山特別(1勝クラス)では先行策から圧勝。スタミナ豊富なところを見せた。その後、極悪馬場の新潟芝2000mで行われた2021年福島民報杯でも大差勝ち。同レースは序盤は好位直後の最内を追走していたが、そこから徐々に位置を上げ、4角では2列目。直線序盤で中目に誘導されると、他馬が次々と失速していく中を最後までしぶとく粘り、2着馬に1.8秒差をつけた。豊富なスタミナで時計の掛かる馬場を得意としており、凱旋門賞などもタイミングが合えば激走しそうなタイプだ。
その後もアルゼンチン共和国杯、目黒記念、そして重馬場の函館記念で2着しているように、とにかくスタミナが豊富。ただ今年に入ってややレース内容が悪くなっているのも確か。超高速馬場の東京芝でスローペースになったときは微妙な印象もある。ただ全能力を発揮したときには、今回のメンバーでも能力上位の存在。スタミナが生きる流れ、スタミナを生かす騎乗がされたときは一発の可能性は十分ある。
テーオーロイヤル、ヒートオンビートは有力
【テーオーロイヤル】
昨年は4連勝でダイヤモンドSを優勝し、天皇賞(春)でも3着と上半期の注目株だった馬。ダイヤモンドSは、単騎で逃げるグレンガリーから離れた4番手を追走し、3~4角で外から2列目に並びかけ、ラスト1Fで突き抜けて優勝。天皇賞(春)はタイトルホルダーの単騎逃げから離れた3列目の内で進め、3角で中目から外に誘導して2番手まで上がり、4角でタイトルホルダーに迫り、同馬を負かしにいく形。勝ちにいく競馬をしたことでラスト1Fで甘くなり、そこをディープボンドに交わされ1馬身差つけられたが、ここでも上々の内容だった。
しかし、本馬はその後、不利の連続で本来の能力を出し切れていない。昨年のオールカマーは内が圧倒的に有利な馬場&展開を終始好位の外々から押し上げていく不利。アルゼンチン共和国杯は最後の直線でキングオブドラゴンを捕らえに行くなかで、同馬が内ラチに激突し、それに巻き込まれて減速する不利。前走のジャパンCは最後の直線で追い出されたところで窮屈になり、そこをボッケリーニに寄られてブレーキ。徐々に位置が下がって終戦となった。今回は骨折による長期休養明けで、8枠というのも不安材料だが、実力はここでは上。配当妙味もあるここは大逆転に期待してみたい。
【ヒートオンビート】
今年の目黒記念の2着馬。同レースは10番枠からまずまずのスタートを切って、中団中目から1角で内目に入れて追走。3~4角では最内で脚を溜め、4角でひとつ外に出し直線では中目に誘導。序盤は進路がなく仕掛けを待たされたが、ラスト2Fで中目を捌いて3番手まで上がると、ラスト1Fで逃げ粘るディアスティマを強襲し、アタマ差で捕え切った。
前記の目黒記念は超絶スローペースで3~4角からペースが上がったが、そこで最内を走り貯金ができたことが大きく、それが最後の末脚に繋がった面がある。同レースは戦前の段階から、メンバーの貧弱さが囁かれており、今回と同格&同コースで勝ちながらも低評価されている。しかし、終わってみれば今年の目黒記念はそこまでレベルが低いものでもなかった。
また本馬は昨年のこのレース3着馬でもあり、この舞台に高い適性を示している。前走の京都大賞典は休養明けで9着敗退。しかし、すでに体勢が決した後ではあったが、ラスト1Fで挟まれブレーキをかけたための大敗である。このような実績で低評価ならば、穴馬に推したい。個人的には穴馬の立ち位置ではなく、けっこう有力と見ている。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ゼッフィーロの前走指数「-22」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.2秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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