【菊花賞】実力上位で末脚抜群のドゥレッツァが本命候補 穴馬はパクスオトマニカとリビアングラス
山崎エリカ
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良馬場なら3角中団にいないと勝ち負けは難しい
菊花賞は全頭が初の長距離となるため、2週目の3角まで脚を溜めることがほとんどだ。過去10年では歴代屈指の極悪馬場で、芝3200mでも遅いレベルの走破タイムだった2017年こそ、かなりのハイペースだったが、それ以外は平均ペースよりも遅い流れで決着している。
また良馬場の菊花賞は3角の下り坂からペースアップする傾向があり、3角で中団くらいの位置にいないと厳しい。3角でもっとも後ろの位置10番手から優勝したのが2015年のキタサンブラック。しかし、本馬は先行していたが、捲り馬の出現により3角の位置取りが瞬間的に下がったもの。追込馬のワールドプレミアも2019年に3角8番手で優勝していることから、勝ち負けするには中団にいないと難しい。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 ノッキングポイント】
昨年6月の東京芝1600mの新馬戦で、ラスト2F11秒2-11秒1を記録。この時期の2歳馬でラスト1Fを加速しながらの11秒1は驚きの数字で、記録した指数も優秀だった。普通にいけば重賞勝ち当確と見ていたが、その後に伸び悩み、皐月賞にも出走できなかった。しかし、日本ダービーでは15番人気ながら、最後の直線は中団中目からしぶとく伸び続け、見せ場のある5着に善戦した。
そればかりでなく、前走の新潟記念では古馬を相手に初重賞制覇を達成。前走は3番枠からまずまずのスタートだったが、二の脚で楽に先行。そこからじわっと好位に下げ、外から各馬を行かせて3列目の最内を追走。3~4角も最短距離を通って直線へ。序盤でスッと反応してすぐに2列目に上がり、ラスト2Fでは半馬身差で先頭。そのまま踏ん張り、外から伸びるユーキャンスマイルを振り切って1馬身差で完勝した。
毎日杯→日本ダービー5着→新潟記念1着といえば、2018年のブラストワンピースを思い出す。同馬は休養明けの新潟記念で優勝した反動で、菊花賞では指数ダウンの4着。しかし、その次走の有馬記念を優勝した。本馬も始動戦が新潟記念だっただけに、ここで反動が出る可能性が高い。というか、ここではなく有馬記念辺りが目標だろう。ブラストワンピースが優勝した新潟記念よりも今年はレベルが低かったことから、同馬よりも余力を残せている可能性はあるが、狙いにくい。
【能力値2位 トップナイフ】
昨年のホープフルSでは、逃げてドゥラエレーデとクビの上げ下げでハナ差2着に善戦した馬。存在感を見せながらも、皐月賞、ダービーでは出遅れて後方からの競馬となり7着、14着と本来の能力を出し切れずに終わった。しかし、そこから立て直された前走の札幌記念では、プログノーシスには4馬身離されたが3着ソーヴァリアントに3馬身差を付けて2着と好走した。
前走は10番枠から出遅れ最後方から、内に行きながら中団の最内につけた。1~2角のコーナーワークで前のスペースを拾い、単独4番手ジャックドールの後ろのスペースを維持して追走。3角手前で外に行く同馬の内からスペースを潰しながら押し上げ、3~4角の最内からワープするように4角で半馬身差のリードで先頭。直線では外からプログノーシスに突き抜けられたが、最後までしぶとく粘っての2着だった。
前走は3角で各馬が外に出して行くのに対して、本馬は最内を選択。一見、これが嵌ったようにも見える。しかし、他にもダノンベルーガとラーグルフが最内を追走しており、ダノンベルーガは最後の直線で本馬との差をほとんど詰められていない。またラーグルフも最内から押し上げ、最後の直線で中目に出したが、伸びあぐねた。このことから内より外のほうが伸びる馬場だったことが分かる。
ただ、逃げたユニコーンライオンが最下位17着に敗れ、前3頭から離れた4番手を追走した1番人気のジャックドールも6着に敗れた。レースとしてはややタフな馬場でオーバーペースとなり、前半で脚を使った馬には最後の直線でどこを通っても苦しい展開だった。つまり、出遅れた本馬は馬場の悪化した内を走ってはいるが、展開上は恵まれたことになる。
それでもメンバーNO.1の指数を記録したのも確か。前走は自身の指数を大幅に上昇させているので、今回でさらなる上昇は期待しにくい。またホープフルS以降、派手に出遅れており、日本ダービー時のように、絶望的な位置になってしまう可能性もある。外枠でペースが上がらなければ、1周目のスタンド前で位置を押し上げる機会はあるし、向正面でも動くタイミングがあるかもしれない。今回17頭立ての最内枠から後手を踏んだ場合は怖いが、3列目くらいまでの位置が取れればチャンスはある。
【能力値3位 ソールオリエンス】
3戦3勝で皐月賞を制した馬。皐月賞当日は外から差す馬が有利な馬場状態。1番枠から好スタートを切ったが、そこからコントロールして最後方付近まで位置を下げて外へ誘導。道中も最後方に近い位置で外目を追走し、3角手前で外から進出。そのまま追い出されたがそこまで上がって行けず、スピードに乗ったのが4角だったため、大きく外に振られるロスが生じた。しかし、直線ではしぶとく伸びて中団まで上がり、ラスト1Fでグンと伸びて並ぶ間もなく早めに抜け出していたタスティエーラを捕らえ、1馬身1/4差で完勝した。
その次走の日本ダービーでは、惜しくもクビ差の2着。レースは超絶高速馬場で実質かなりのスローペース。本馬は好位のメタルスピード直後の最内と位置を取りに行き過ぎたのもあるが、休養明けの皐月賞で好走した反動が出たようで、皐月賞から指数をダウンさせた。本馬が能力を出し切れなかったことで、日本ダービーが凡戦となり、菊花賞戦線は上がり馬たちに勢力図を塗り替えられる形となった。
前走セントライト記念は14番枠から五分のスタートを切って、中団やや後方の外でコントロールしながら折り合い重視の競馬。道中は後方の外で前にスペースを作りながら追走し、3角手前でじわっと促して3角へ。3~4角でもじわっと差を詰め、4角のきついコーナーのところで大外に膨らみ、それでも何とか中団を維持した。直線序盤でジリジリと3列目付近まで上がり、ラスト1Fで先頭のレーベンスティールとは3馬身くらいあった差を1馬身3/4差まで詰め、2着となった。
前走は3~4角でロスなく進出できていれば、もっとレーベンスティールとの差を詰めていた可能性はあるが、ここでも京成杯や皐月賞と同様に4角で外に膨らんでしまった。菊花賞での差し馬は3~4角の下り坂で勢いをつけ、いかに4角をロスなく立ち回れるかがポイントとなる。しかし、そこで外に膨らんでしまったら、2012年天皇賞(春)のオルフェーヴルのようにもなりかねない。
当時のオルフェーヴルは3角の位置取りが絶望的だった。ただ本馬はそこまで悪い位置にはならないぶん、大崩れはないと見ているが、怖い要素を持つ1番人気であるのは確か。ただ、3~4角の手前から外に出さずに内目に入れるなど、何か工夫があれば当然ここでも通用の余地はある。
【能力値4位 ドゥレッツァ】
現在4連勝中の馬。6月のホンコンJCT(2勝クラス)は超絶スローペースでラスト2F11秒2-11秒2の流れを強烈な末脚で差し切った。当時の上がり3Fタイム32秒7は同日に行われた安田記念で鬼脚を見せたシュネルマイスターの32秒8を上回り、記録した指数は前週に行われた日本ダービーでも上位入線に値するものだった。
前走の日本海S(3勝クラス)も前半5F60秒5-後半5F58秒9の前有利の流れ。それを4番枠からまずまずのスタートを切って、後方馬群の中目を追走。道中は折り合い重視で乗られ、3~4角でも前が壁。4角で最内を通り、出口で上手く中目のスペースから外に出して直線へ。序盤でスッと反応して3番手に上がり、ラスト1Fで先頭のレッドラディエンスから3馬身ほどあった差を、一気に差し切って半馬身差で勝利した。
本馬が前走で記録した指数は、神戸新聞杯と同等なもの。つまり、春の実績馬たちに劣るところは何もない。4月の遅生まれでキャリアも5戦と浅く、まだまだ伸びる。今回は大外17番枠に入ったが、末脚型の本馬にとってはソールオリエンスなど、内の馬の出方を窺いながら動けるこの枠は悪くない。鞍上がルメール騎手だけに、4角で大外を回ることもないだろう。今回の本命候補だ。
【能力値4位 サヴォーナ】
今春の青葉賞は6着に終わり、存在感を見せることはできなかったが、その後休養し、7月の信夫山特別(2勝クラス)で復帰すると一変。同レースは2番枠から出遅れたが、すかさず押してハナを主張し、マイペースの単騎逃げ。3~4角で後続を引きつけ、1馬身差のリードで4角へ。そこから後続を突き放して4馬身で完勝した。
そして前走の神戸新聞杯は6番枠から好スタートを切って、そこから様子を見ながら上手く2列目の最内に入れて行く形。逃げるファントムシーフをとにかくマークして乗り、3~4角でも同馬の後ろから最短距離を通って直線へ。そこからファントムシーフとの差を徐々に詰め、ラスト1F標地点では1馬身差。ラスト1Fで同馬を捕らえ切ったところで、外からサトノグランツに強襲され、アタマ差の2着に惜敗した。
神戸新聞杯はレコード決着だが、超絶高速馬場でペースは前半5F61秒2-後半5F57秒2のスローペース。前有利の流れを2列目からロスなく完璧に立ち回っての結果ではあるが、想定以上の結果を出した。ここへ来て急速に地力を付けていることは確かだが、休養明けで能力を出し切った後の一戦となると、今回での上昇は望みにくい。
穴馬は前に行くパクスオトマニカとリビアングラス
【パクスオトマニカ】
デビュー2戦目の新潟芝2000mの未勝利戦は逃げて5馬身差の圧勝。この勝利は潜在的なスタミナが相当なものであることを感じさせる勝利だった。しかしその後の若竹賞では逃げて外からマイネルカーライルに絡まれ、ペースを上げたり、下げたりしながらも3着馬に4馬身差を付けて完勝と、器用な一面も見せた。
そして3走前のプリンシパルSも3番枠からまずまずのスタートを切り、そこから押して先手を主張し、ハナを取り切った。向正面ではかなりペースを落として息を入れ、3~4角でもペースを上げずに団子状態。4角では外から並びかけられたが、4角出口で軽く仕掛けられるとすっと伸び、半馬身差のリードで直線へ。ラスト2Fで外からアヴニールドブリエが迫ってきたが、そこでもじわっと放して1馬身半差。最後に詰め寄られたが1馬身差で完勝した。
前々走の日本ダービーは16番枠からのスタートで、ひとつ外ドゥラエレーデのスタート直後の落馬の影響を受け、後手を踏んでしまう形。そこから無理やりハナを奪いに行き、後続を引き離す逃げ。リズムの悪い逃げでスタミナが持たず崩れたが、見せ場は十分だった。前走はダートで前に行けず度外視。今回で本馬の器用さを生かしたマイペースの逃げが打てれば、粘り込みの可能性は十分ある。
【リビアングラス】
デビューから3戦2勝で迎えた京都新聞杯は、12番枠からまずまずのスタートを切って、内に切り込みながらハナを主張。ハナを取り切ると、道中でかなりペースを落としたが、向正面でマキシが捲って来たため3角手前からペースを引き上げ、1馬身差のリードで直線へ。そこからしぶとく粘り、いったんは1馬身半差までリードを広げたが、最後にサトノグランツらに差され、クビ+アタマ差の3着だった。ここでは成長力と距離延長に対する適応力の高さを感じた。
前走の阿賀野川特別は休養明けで古馬との初対決。休養明けでスタミナ切れが懸念される一戦だったが、7番枠からまずまずのスタートを切り、そこからは促してハナを主張。二の脚が速くないので、ハナを取り切るのに時間がかかり、さらに外からプレッシャーをかけられ、ペースを上げざるを得なくなってしまった。
1~2角で何とか息を入れ、向正面で再びペースを引き上げ、3~4角で再び少し息を入れた。すると今度は外からハイエスティームが並びかけ、絡んできた。本馬は直線序盤では苦しそうな手応えだったが、そのわりにすっと伸び、1馬身とリードを広げた。そのまましぶとく伸び続け、ラスト1Fでは外から伸びて来たウインオーディンを振り切り、半馬身差で完勝した。
前走は緩みない流れ。このレースは潜在的なスタミナの豊富さを裏付けるものだった。また後続にしっかり差をつけてのなかなか優秀な指数での勝利で、前々走からの成長力も感じた。本馬はステイヤーで距離延長は好材料のはず。前走の疲れが出なければ、ここも怖い存在だ。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ノッキングポイントの前走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の下線、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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