【菊花賞】欧州のスタミナ血統に要注目 Sadler's Wells持ちのソールオリエンスがイチオシ

坂上明大

菊花賞の血統と傾向,ⒸSPAIA

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傾向解説

3歳牡馬クラシック最終戦の菊花賞。今年は2020年以来3年ぶりに、舞台を京都芝3000mに戻しての開催となります。阪神芝3000mと京都芝3000mとの違い、そして皐月賞や日本ダービーとの違いを含めて菊花賞のレース傾向を整理していきます。

阪神芝3000mは内回り、京都芝3000mは外回りで行われるため、阪神開催時の方が機動力や底力、京都開催時の方がスピードや瞬発力を求められる傾向にあります。ただ、阪神内回りと京都外回りの違いより、全馬が経験のない3000mへの距離延長の方が適性面での影響力ははるかに大きく、結果に直結する要素といえるのではないでしょうか。

そこで重視したいのが馬体重。牡馬クラシックのレース別の3着内馬平均馬体重を比較すると、皐月賞>日本ダービー>菊花賞、の順であり、成長分も加味すると数字以上に菊花賞の好走馬の馬体が小さいことがわかります。人間の短距離ランナーとマラソンランナーの体格を見てもわかる通り、長い距離を走るうえで過剰な筋肉は重荷でしかありません。もちろん、フレームが大きければ馬体重は重くなるため一概に馬体重だけで判断できるものではありませんが、筋肉量が少なく低燃費な馬体に注目することは長距離適性を測るうえで重要なヒントになるのではないでしょうか。

※牡馬クラシックのレース別3着内馬平均馬体重(2013~2022年)
皐月賞:489.8kg
日本ダービー:482.9kg
菊花賞:482.7kg

馬体重別成績(単勝オッズ49.9倍以下・過去10年),ⒸSPAIA


<馬体重別成績(過去10年、単勝オッズ49.9倍以下)>
~459kg【1-1-1-7】勝率10.0%/連対率20.0%/複勝率30.0%/単回収率11%/複回収率94%
460~479kg【2-4-3-19】勝率7.1%/連対率21.4%/複勝率32.1%/単回収率43%/複回収率129%
480~499kg【6-4-5-35】勝率12.0%/連対率20.0%/複勝率30.0%/単回収率72%/複回収率97%
500kg~【1-1-1-15】勝率5.6%/連対率11.1%/複勝率16.7%/単回収率74%/複回収率38%

血統面で注目したいのはディープインパクト。同馬の種牡馬入り直後は「芝のマイラーが多い」とか「もって中距離まで」と言われた時期もありましたが、現在は産駒が菊花賞5勝、天皇賞(春)4勝という素晴らしい成績を挙げています。ディープインパクトはミオスタチン遺伝子型がT/T型(長距離型)であり、骨格も大きくなかったため、「スピードがあり」「大柄で」「早熟気味」の繁殖牝馬と多くつけられてきました。そのため、産駒の多くがマイル~中距離で強さを発揮したことは事実ですが、ディープインパクト自身は競走成績の通り、芝長距離戦で優れたパフォーマンスを発揮する種牡馬というわけです。

ただ、現3歳世代がラストクロップであり、今年は菊花賞への登録は0頭。さらに、後継種牡馬の多くはスピードを強化して成功しているため、超長距離戦においては父ほどの信頼感はありません。ディープインパクトの母母Burghclereを刺激してスタミナ面を強化している産駒を探したいところです。

また、ヨーロッパの大種牡馬Sadler's Wellsにも注目。日本では重過ぎるきらいがあり、特に日本ダービーでは敬遠されがちな欧州の名血ですが、ひと夏を越し、距離が延びる菊花賞では強い味方となってくれます。特に近年ではエピファネイアが同馬の血を内包するため超長距離戦で好成績を挙げており、さらに本レースで好走したアリストテレスとオーソクレースはSadler's Wellsのインブリード馬。Sadler's Wellsを中心にヨーロッパのスタミナ血統には要注意です。

血統別成績(単勝オッズ49.9倍以下・過去10年),ⒸSPAIA


<血統別成績(過去10年、単勝オッズ49.9倍以下)>
ディープインパクト【6-5-4-16】勝率19.4%/連対率35.5%/複勝率48.4%/単回収率106%/複回収率159%
Sadler's Wells【2-3-3-10】勝率11.1%/連対率27.8%/複勝率44.4%/単回収率53%/複回収率127%


血統解説

・ソールオリエンス
2021年ドバイターフ2着馬ヴァンドギャルドの半弟。母父MotivatorはSadler's Wells→Montjeu系のなかでも瞬発力に優れた種牡馬で、日本の芝適性も非常に高い血統です。このレースと相性の悪いデインヒルの血を内包しますが、前走馬体重460kgかつ腰の低い馬体はMotivator譲りでスタミナは十分。Burghclereの血も適度に刺激できており、適性面からもイチオシの一頭といえるでしょう。

・タスティエーラ
母母フォルテピアノはダ1400m以下で3勝、母パルティトゥーラは芝1600mで3勝を挙げたスピード豊かな一族。仕上がりに時間がかかるサトノクラウン産駒でありながら日本ダービーに間に合ったのは、まさに牝系譲りの早熟性とスピードがあってこそです。本質は芝中距離馬ですが、レースセンスに優れたバランス型。ピュアステイヤーの少ない菊花賞であれば地力でこなしてしまっても驚けません。

・サトノグランツ
母チェリーコレクトは伊1000ギニー、伊オークスを制した二冠牝馬で、繁殖牝馬としてもダノングレース(2019年福島牝馬S3着)、ダイアナブライト(2021年クイーン賞)、ワーケア(2019年ホープフルS3着)など堅実な活躍馬を次々に輩出する優秀な繁殖牝馬です。父サトノダイヤモンド(父ディープインパクト)は2016年の菊花賞馬で、芝中長距離戦に滅法強い友道康夫厩舎という点も魅力大。ただ、過去10年で1頭も馬券に絡んでいないデインヒルの血を母父父に持つ点は割引が必要でしょう。

菊花賞の血統と傾向,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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