【京都大賞典回顧】3勝すべてが2400mのプラダリア 厳しいレースを勝ち切ったのは充実期に入った証
勝木淳
ⒸSPAIA
今週、記録を塗り替えたディープインパクト
日曜日の京都4R障害オープンをロックユーが勝ち、ディープインパクト産駒がJRA通算勝利数単独1位となる2750勝を達成した。産駒デビューは2010年6月。初勝利は6月26日福島5R新馬芝1200mのサイレントソニックだった。初年度産駒からマルセリーナ、リアルインパクトとGⅠ馬を出し、初年度の2歳総獲得賞金はサンデーサイレンスの記録を大きく更新した。
第二の衝撃ともいえる産駒デビューから13年が経った。最終世代から英国ダービー馬オーギュストロダンが出て、最後の最後まで衝撃を与え続ける血を受け継ぐものたちも、これからはじわじわとその数を減らしていくことになる。一方で、記念の勝利を達成したロックユーや京都大賞典を勝ったプラダリアなど、日本国内に衝撃をもたらす可能性を秘めた馬たちもまだまだいる。
巧さと強さを兼ね備えるプラダリア
キャリア4戦目、未勝利勝ち直後に青葉賞を勝ったプラダリアが約1年5カ月ぶりに3勝目をあげた。これで2400mは通算【3-0-0-1】。着外一回は日本ダービー5着なので、この距離への適性は間違いない。京都改修の影響から神戸新聞杯や日経新春杯が中京芝2200mに変更されたのはプラダリアにとってツキがなかった。3勝目が遠かったのはそんな事情もありそうだ。ディープインパクトは距離を問わないスーパーホースだったが、芝2400mは1着、失格、1着。後ろからインティライミ以下を突き放したダービー、凱旋門賞の直後に出走したジャパンCではGⅠ・7勝の名牝ウィジャボードを退けるなど、ドラマチックな競馬が多かった。次は父が勝ったジャパンCも選択肢の一つだろうか。そうなれば相手は一気に世界レベルまで上昇するが、2400mのスペシャリストとして、がんばってほしい。
レースはアフリカンゴールドが単騎で逃げる展開だったが、競りかける存在がいなかったこともあり、その逃げは明らかに遅かった。前半1000m通過1:01.6は重馬場でも決して速くない。道悪とはいえ、絶好の馬場状態とあって、前にいないと勝負にならない流れになった。
ただ、アフリカンゴールドはスタミナを目一杯生かすタイプで、手の内に入れている国分恭介騎手も淡々とした流れは避けたかったはずだ。坂の上りに入る後半800mから11.6-11.7と早めにペースを上げて、後ろを惑わせにきた。結果的にこの動きがレース自体をややスタミナを問う方向へシフトさせた。残り400m12.0-12.2と後半800mは失速ラップを刻み、2400m以上の適性がなければ、最後まで踏ん張れない。4着9番人気ヒンドゥタイムズがゴール前でひと伸びを欠き、ディープボンドが差し込んできたのは、アフリカンゴールドの早めのペースアップが影響したともいえる。
勝ったプラダリアは好位のイン3番手という理想的な位置取りを進み、最後は外回りと内回りの合流点、ラチの切れ目からインを狙ったボッケリーニを内へ押し込めるなど、巧さが際立った。最後の200mではね返されてしまったが、そこからは併走して譲らない勝負根性を発揮した。前にいた分、スタミナ的に厳しかったはずだが、最後の気迫は充実期に入った証でもある。
距離適性の違いが出たディープボンド
2着ボッケリーニは7歳の今年すべて重賞を走り、2、1、7、2着。崩れたのは宝塚記念だけで頭が下がる。馬場や距離、競馬場を問わない堅実さはいかにも父キングカメハメハらしいマルチな才能だ。プラダリアに内に押し込められ、アフリカンゴールドの後ろに入れられそうになったが、それを押しのける形で自ら道を開いた。最後の競り合いはさすがに年齢差があったかもしれないが、これだけ走れば十分であり、まだまだ相手次第でもうひと花あっていい。
ディープボンドは3着。年齢を重ね、さらに適性が長距離に寄ったようだ。アフリカンゴールドのスパートについていけず、先に動く馬たちと比べると手応えも悪く、4コーナーで離される形になり厳しいかと思われたが、直線は猛然と追い込んで3着に入った。完全にステイヤーのレースぶりといっていい。となると、秋は目標が難しくなる。ちょっと先だが、有馬記念一本に絞っても面白い。勝負所で置かれるので、中山だと直線が短すぎるかもしれないが、有馬記念は秋の王道路線のなかではスタミナを問われるタフな競馬になる可能性がもっとも高い。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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