【秋華賞】リバティアイランドの牝馬三冠をデータも後押し 複穴候補は紫苑S組のシランケド
勝木淳
ⒸSPAIA
歴代三冠牝馬をしのぐリバティアイランド
三冠牝馬は歴代6頭。このうち1986年メジロラモーヌを除く5頭(2003年スティルインラブ、10年アパパネ、12年ジェンティルドンナ、18年アーモンドアイ、20年デアリングタクト)が現在と同じ秋華賞を最終戦とする形で達成した。
この5頭のうち、オークスで桜花賞よりタイム差を広げたのは、ジェンティルドンナしかいない。アーモンドアイはどちらも同じ0.3秒差だった。ジェンティルドンナは桜花賞0.1秒差で、オークスは0.8秒差。世代最強といえど、初体験の2400mで走り慣れたマイルよりタイム差を広げるのは容易ではない。
タイム差が同じだったアーモンドアイはのちにマイル~2400mと幅広い距離適性を示し、オークスでタイム差を広げたジェンティルドンナは2000m以上を中心に走り、最後は有馬記念を勝利した。アーモンドアイは有馬記念9着。熱発明けの臨戦過程が敗因ではあるが、マイルと2400mのタイム差は将来を知る手がかりになる。
リバティアイランドは桜花賞0.2秒差に対し、オークスは1.0秒差。ジェンティルドンナの記録を塗りかえ、グレード制導入以降のオークスでは最大のタイム差を弾き出した。桜花賞と比べ、さらに0.8秒もの差。よほどのことがない限り、牝馬三冠を達成し、さらにその先へ。可能性しか感じない。
だが、ジェンティルドンナの秋華賞は0.0差。ヴィルシーナとはハナ差の大接戦だった。同じくアーモンドアイ、デアリングタクトは0.2秒差。昨年はスターズオンアースが秋華賞で敗れ、三冠を逃した。そう、内回り芝2000mというオークスよりスピード寄りの舞台で行われる秋華賞は、春二冠に比べ難しい面もある。データは阪神開催の2年間を含め、過去10年分を使用する。
1番人気は【3-1-1-5】勝率30.0%、複勝率50.0%で半分は馬券圏外だった。かつては大荒れGⅠだった秋華賞。以前ほどではないにせよ、この数字は意外といえば意外だ。3勝のうち2勝は三冠馬であり、残る1頭ミッキークイーンはオークスとの二冠を達成した。リバティアイランドが気にするデータではない。勝ち馬は4番人気以内、穴を狙うなら2、3着のいわゆるヒモ荒れだろう。
ではヒモ荒れはどんなゾーンを狙えばいいのか。東西別成績を出すと、美浦【2-4-1-58】勝率3.1%、複勝率10.8%、栗東【8-6-9-85】勝率7.4%、複勝率21.3%と基本は関西馬が優勢。関東馬は4番人気以内【2-3-1-4】、5番人気以下【0-1-0-54】なので、人気馬なら関東馬も問題ない。いいかえれば、穴は関西馬から出現する。穴党は2、3着に関西馬の穴目を潜ませる馬券がベストだろう。
複穴ならシランケドとローズS組
ここからは具体的に前走成績から、リバティアイランドに迫れる馬の候補を探していく。
前走クラス別のうち、前走GⅠ【4-1-1-15】勝率19.0%、複勝率28.6%はすべて前走オークスだ。今年もリバティアイランドをはじめ5頭がこのローテにあたる。その着順内訳は、1着【2-0-1-1】勝率50.0%、複勝率75.0%など秋華賞好走は3着以内馬に限られる。5着以下は【0-0-0-12】なので、リバティアイランド、ハーパーしか好走ゾーンに入っていない。
次にトライアル組を探る。目立つのは紫苑S【3-4-0-26】勝率9.1%、複勝率21.2%だろう。ここも好走が条件で、1着【2-1-0-3】勝率33.3%、複勝率50.0%、2~5着【1-3-0-15】、6着以下【0-0-0-8】。マイル戦の経験が豊富で秋華賞にも合いそうなモリアーナを筆頭に、5着以内に注目しよう。さらに穴の関西馬に当てはまり、出走権をもっているシランケドが面白い。
ややこしいのはローズS【2-3-7-54】勝率3.0%、複勝率18.2%だろう。最近、影が薄くなっているとはいえ、3着7頭なので捨て置けない。さらにその着順内訳はバラバラだ。1着【0-1-2-6】複勝率33.3%、2~5着【2-2-3-22】、6着以下【0-0-2-26】。3着に関してはどこからでも出現する。登録4頭はすべて関西馬でもある。なお、ドゥーラの前走クイーンSは【0-0-0-3】。勝ち馬なら17年アエロリットが1番人気7着だった。
最後に前走2勝クラス【0-2-1-16】複勝率15.8%について。ここは2勝クラス勝ちの着差に注目する。0.0差【0-0-0-5】、0.1~0.2差【0-1-0-4】、0.6~0.9差【0-1-1-1】と2勝クラス圧勝はひとつの目安になる。抽選対象になるが、ピピオラよりフェアエールング、フェステスバントがいいかなといった程度だろう。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
《関連記事》
・3連単の最高額は1460万40円 2022年中央競馬の高額配当ランキング
・武豊騎手、JRA重賞350勝までの道のり 節目の重賞勝利を振り返る
・2023年に産駒がデビューする新種牡馬まとめ 日本馬の筆頭・レイデオロは「ディープ牝馬」との配合で期待
おすすめ記事