【毎日王冠】上位人気馬は後半型の脚質 前で立ち回れる強みを生かせばウインカーネリアンにチャンスあり
山崎エリカ
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東京芝1800mは展開の振れ幅が大きい
東京芝1800mは2角を斜めに横切って向正面に入るコースで、3角までの距離が約750mと長く、展開の振れ幅が大きい。2020年のように逃げ馬が大逃げを打てば、稍重で4F通過46秒2とハイペースになることもあり、2013年のように逃げ馬不在なら、良馬場で4F通過48秒2とかなりのスローペースになることもある。傾向的には稍重時にハイペースが発生している。
日曜日は良馬場の可能性が高い。それもパンパンな良馬場で超高速馬場が予想される。今回の逃げ馬候補はバビットとフェーングロッテン。フェーングロッテンがどこまでバビットに競り掛けて行くかだが、バビットはそこまでテンが速くなく、本馬が逃げるならスローペースだろう。テンの速いウインカーネリアンが逃げた場合は、前記2頭に競り掛けられてハイペースになる可能性もある。しかし、同馬は折り合えるのでその可能性は低いと見て、予想していく。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 ソングライン】
今春はヴィクトリアマイル、安田記念と東京マイルGⅠを連勝。昨年の安田記念はソダシが優勝したヴィクトリアマイルよりも指数が低く、今年のマイラーズCと同等レベルだったが、今年は確かな強さを見せた。
前走の安田記念は18番枠からまずまずのスタートを切ると、そこから軽く促されて中団の外目を追走。コントロールされシャンパンカラーをマークして3角へ。3~4角でも同馬の後ろから徐々に位置を押し上げ、4角出口で外に出されると、序盤で追われてすぐに同馬の外から伸びてラスト2Fで3列目まで上がり、ラスト1Fで先頭。外から伸びてきたシュネルマイスターらに1馬身1/4差で完勝した。
前走は前半でペースが上がらず、後半でもまだ前にいた馬に脚がある状況で、3~4角の外から位置を押し上げながら、最後までしぶとく伸び続ける強い内容だった。前走の走りができればここも勝ち負けだが、今回は始動戦。あくまでも目標はこの先のBCマイルのはず。また本馬は後半型で、東京開幕週の超高速馬場で前が止まらない流れも好ましくない。ここは評価を下げたい。
【能力値2位 シュネルマイスター】
一昨年の毎日王冠の覇者。同レースは1番枠からやや出遅れ、前に入られて後方からの追走。直線で外に出されるとすっと伸び、ラスト1Fで3馬身はあったダノンキングリーとの差を一気に詰めアタマ差で勝利した。本馬はエンジンが掛かってからが強いタイプで、自己最高指数も芝1800mのこのレースだった。
今春の安田記念は、14番枠から出遅れ軽く促されても後方からのレース。さらにレッドモンレーヴに入られて、ソングラインより2列後ろからのレースになった。こういったことからマイルだとテンに置かれて位置取りが悪くなり過ぎるため、前々走のマイラーズCのように展開に恵まれないと勝ち切れない。
実際に外差し馬場でスプリンターのピクシーナイトがペースを引き上げ、レースの上がり3Fが34秒7と掛かったNHKマイルCではソングラインを差し切って優勝した。しかし、レースの上がり3Fが33秒6、33秒8と速い昨年と今年の安田記念では、本馬よりも前でレースを進めていたソングラインが優勝している。
今年2月の中山記念は最後の直線で進路が作れず、最内に突っ込みイルーシヴパンサーと進路を取り合いラチに接触する不利があって4着に敗れた。しかし、楽に中団の最内まで持っていけていた。つまり、本馬は位置取りが悪くなり過ぎない中距離がベスト。今回も1番枠を引いてしまっただけに、昨年同様、位置取りが悪くなる可能性は高まったが、追走は楽になるのでソングラインには先着する可能性が高いと見ている。
【能力値3位 ジャスティンカフェ】
昨年の毎日王冠2着時と、今年のエプソムC制覇時に自己最高指数を記録した馬。本馬も芝1600mよりも芝1800mの馬だ。昨年の毎日王冠は9番枠からやや出遅れ、そこから促されても進みが悪く後方2列目の外を追走。大逃げを打ったレッドベルオーブが3~4角でバテて少しペースが落ちたところで、前とのスペースを詰めて4角出口で3列目のキングストンボーイの外。直線序盤で追われるとすっと伸びてラスト2Fでは2列目の外3番手。ラスト1Fで前2頭を捉えて先頭に立ったが、最後に内から伸びてきたサリオスに交わされ、半馬身差の2着に敗れた。
サリオスは直線序盤で3列目の内で包まれていたが、ラスト2Fで何とか捌いて中目のダノンザキッドの後ろを取り、ラスト1Fでその外から一気に伸びたもの。普通なら後方から3~4角のロスを最小限にして乗った本馬が勝って当然のレースだった。それくらい完璧なレース運びだったが、勝ったサリオスが強かった。
また、前走のエプソムCも15番枠から出遅れ、出脚もひと息。ここでも後方外からの追走になった。しかし、道中は前が飛ばしていたので、コントロールして無理せず3角へ。3~4角の外から中団のカワキタレブリーの直後まで上がり、4角出口で同馬の外。直線序盤ですっと伸びてカワキタレブリーを交わし、ラスト2Fで中団列から一気に伸びて、ここで先頭列付近まで上がると、ラスト1Fで突き抜けて1馬身1/4差で完勝した。
しかし、前走は朝から断続的に雨が降って徐々に時計が掛かり、標準に近い馬場状態。逃げ馬が高速馬場のノリでペースを引き上げたことで、ここも差し馬有利の流れになった。馬場の内側は騎手が避けるほど悪化していなかったが、内が伸びる馬場ではなく、3~4角で距離ロスを作っても致命的にはならなかった。一転して今回は超高速馬場の東京芝。前に行ける脚がなく、後方からの競馬になってしまう馬だけに、昨年のレッドベルオーブのような大逃げをする馬がいないと勝ち負けに持ち込むのは難しいと見る。
【能力値4位 アドマイヤハダル】
昨年の中山記念の3着馬。同レースは12番枠から五分のスタートを切り、そこからじわっと好位直後の外まで挽回。しかし、このレースは逃げ馬が多数出走しており、それらがパンサラッサに競り掛けたため1~2角でもペースが落ちず。本馬は向正面では前5頭に引き離され、中団の外を追走する形。3角手前で外からダノンザキッドが上がってきたので、これに内から抵抗して3~4角で位置を押し上げ、3列目で直線へ。そこからしぶとく伸びて2列目まで上がり、ラスト1Fではいったん2番手に上がったが、最後は外からカラテに差された。
中山記念はパンサラッサが序盤から極端に速い流れを作ったことで、3~4角でペースが緩み、そこから押し上げての3着だった。ただ序盤で脚を使い、3角から動いての3着は褒められる。長期休養後で重馬場の六甲Sこそ大敗したが、その後はオープンや重賞で安定した成績を残している。復調していると見ていいだろう。
前走の関越Sで出遅れて後方からレース進めている点は気掛かりだが、二の脚である程度は挽回できるので、ジャスティンカフェのように後方過ぎる位置にはならないはず。また能力値上位馬が今回6月からの始動戦になるのに対して、本馬は夏場を使われている強みがある。ここは賞金加算のチャンスだろう。
【能力値5位 ウインカーネリアン】
今年2月の東京新聞杯を逃げ切った馬。同レースは2番枠から五分のスタートを切ったが、そこから促されると二の脚の速さでスッとハナを主張。外からファルコニアが競り掛けてきたため、淡々としたペースを刻み、3~4角でもペースを落とすことなく半馬身差のリードで直線へ。ここでも同馬が食らいついてきたが、ラスト2Fで振り切って2馬身差。ラスト1Fではさすがに苦しくなり甘さを見せたが、それでもナミュールらの追撃をアタマ差で振り切った。
本馬は昨夏の関屋記念では、内からハナを主張したシュリを行かせ、ラスト2Fで一気に先頭に立って優勝しているように、好位で折り合うことも可能。また皐月賞でも好走しており、この距は問題ない。
超高速馬場で行われる毎日王冠は、逃げ馬が大逃げしたり、前が激しく競り合わなければ、前が有利になる舞台設定。本馬はテンが速いので行く気になれば逃げられるが、バビットとフェーングロッテンに出方によっては好位に控えて追走できることも強みだ。
本馬が優勝した関屋記念や東京新聞杯での指数は、今年のマイラーズCと同等。ここでも能力上は申し分ない。その上、ソングライン、シュネルマイスター、ジャスティンカフェなど実力馬は後半型。前で立ち回れる強みを上手く生かせば、十分に押し切れるだろう。今回の本命候補だ。
穴馬はエエヤン 先行力と3歳馬の成長力に期待
エエヤンは前々走のニュージーランドTの覇者。同レースは5番枠から五分のスタートだったが、軽く促されると二の脚の速さで楽に先行し、好位の最内を追走。そこからブレーキを掛けながら折り合いに苦労していたが、向正面で外へ誘導。3角で外に出すと一気に仕掛けて先頭列に並びかけていく形。4角で2頭分外を回ったことで前2頭に離されたが、直線序盤で追い出されると、スッと伸びて先頭に並びかけ、ラスト1Fで抜け出して外のウンブライルの追撃を1馬身1/4差で振り切った。
前走のNHKマイルCは、前々走で馬体重10kg減と一気に体を絞ったところから、やや緩めた状態で万全ではなかった。なので鞍上は本来の先行策ではなく待機策を選択。このためいつも以上に折り合いを欠き、最後の直線では馬場の悪い内を通り、さらに進路もなく能力を出し切れなかった。本来の先行策でレースの流れに乗れればチャンスはある。また成長期の3歳馬で、休養したことによる成長力も期待できる。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ソングラインの前走指数「-24」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.4秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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