【毎日王冠】高速馬場の瞬発力勝負に強い血統を重視 スタミナや柔軟性も補強できるとベター

坂上明大

2023年毎日王冠の血統と傾向,ⒸSPAIA

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傾向解説

秋のGⅠ戦線を占う重要なステップレースの毎日王冠。4回東京開催の初週に行われ、GⅠ実績馬と上がり馬が激突する注目の一戦です。過去10年の平均3F別ラップが35.3-35.8-34.2という東京芝1800m戦らしい典型的な決め手勝負になりやすい重賞。本記事では血統面を中心に、毎日王冠のレース傾向を整理していきます。

日本で直線勝負に強い血統といえばやはりディープインパクト、特にディープインパクト×Storm Catの黄金配合です。本レースでは同馬の産駒の出走頭数が非常に多く「父ディープインパクト」というだけでは選定が難しいですが、国内外で9頭(海外馬のStudy of Manを含む)のGⅠ馬を出すディープインパクト×Storm Catの組み合わせからはエイシンヒカリ(2015年1着)、リアルスティール(2017年1着)、サトノアラジン(2017年2着)、ダノンキングリー(2019年1着、2021年2着)と数多くの好走馬が出ています。ディープインパクトの瞬発力源であるHalo≒Sir Ivorの2×4をStorm Catの母Terlinguaが刺激しており、高速馬場の直線勝負に滅法強い配合と言えるでしょう。

また、ディープインパクト×Storm Catに類似する配合形にも要注目。特にディープインパクト×Unbridled's SongはStorm Catとの組み合わせ以上に優秀と言えるほどです。Unbridled's SongはCequillo≒IncantationなどがHalo≒Sir Ivorを刺激するため、Storm Catと同様に高速馬場の決め手勝負ではとにかく強い配合形。東京芝1800m戦での好走率は非常に高く、ディープインパクト×Storm Catと併せて覚えておきたい配合パターンです。

東京芝1800m & 父ディープインパクトの母父別成績(5歳以下),ⒸSPAIA


<東京芝1800m & 父ディープインパクトの母父別成績(5歳以下)>
Storm Cat【14-5-4-20】勝率32.6%/連対率44.2%/複勝率53.5%/単回収率135%/複回収率100%
Unbridled's Song【6-1-0-9】勝率37.5%/連対率43.8%/複勝率43.8%/単回収率156%/複回収率115%

ただ、これらの配合パターンで成功したディープインパクト系後継種牡馬たちにとってはスタミナや柔軟性の補強が次の課題に。そのなかでもトニービンMill Reef、Rivermanなどが注目血統に挙げられ、特にトニービンについては毎日王冠でも素晴らしい成績を残しています。昨年は4頭の該当馬から1着サリオス、3着ダノンザキッド、4着レイパパレが上位入線。今後はさらに存在感を増す注目血統といえるでしょう。

トニービン(過去10年・単勝オッズ19.9倍以下),ⒸSPAIA


<トニービン(過去10年・単勝オッズ19.9倍以下)>
該当馬【3-1-3-3】勝率30.0%/連対率40.0%/複勝率70.0%/単回収率174%/複回収率157%


血統解説

・シュネルマイスター
母セリエンホルデは2016年独オークス馬。父Kingmanは欧州のマイルGⅠを爆発的な瞬発力で制しており、本馬は芝1600~1800mでの瞬発力勝負がベストではないでしょうか。Halo→サンデーサイレンスの血は1本も持ちませんが、Sir Ivor≒DroneやMill Reef≒Rivermanなどから受け継ぐ瞬発力はディープインパクト×Storm Catと共通する面が多く、一昨年の勝利実績からもベスト条件のひとつといえる好舞台です。

・ソングライン
3代母ソニンクに遡る名牝系に属し、母ルミナスパレードは芝ダ1400m以下で4勝を挙げたスピード馬。ディープインパクト×Storm Catの父キズナのスピード面を強化する配合形で、1800mよりは1400mのペースの速いレースの方が持ち味を生かしやすいでしょう。斤量面も含め、今回は課題の多い一戦となりそうです。

・キングストンボーイ
今年の登録馬で唯一のトニービン内包馬。さらに、Mill Reefの6×5も併せ持つため、スローペースの直線勝負になりやすい東京芝1800mはベスト条件のひとつと言えるのではないでしょうか。去勢明け3戦目での一変にも期待したいところです。

毎日王冠の血統と傾向,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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