【スプリンターズS】重賞連勝中ジャスパークローネに黄信号 データで導く「過信禁物の注目馬」
藤川祐輔
ⒸSPAIA
絶対王者不在のスプリント路線
10月1日、中山競馬場ではスプリンターズS(GⅠ)が行われる。近年の短距離路線は絶対王者不在の様相で、昨年は8番人気ジャンダルムが勝利。今春の高松宮記念でも12番人気ファストフォースが勝利したように、GⅠの舞台でも波乱の決着が続いている。
今年の登録メンバーを見ても絶対の信頼を置ける馬は見当たらず、オッズも割れそうなだけに人気馬の取捨選択は重要なポイントとなりそうだ。今回は新潟開催だった2014年を除く過去10年(12年~13年、15年~22年)のデータを基に「過信禁物の注目馬」を導いていく。
ローカルGⅢからの転戦組 特に逃げ馬は信用できない
まず注目するのが前走のレース別成績だ。主要なローテーションの中では安田記念からの直行組が最も優秀で、【2-1-1-7】勝率18.2%、連対率27.3%、複勝率36.4%となっている。セントウルS組も【6-5-2-42】勝率10.9%、連対率20.0%、複勝率23.6%と好成績であり、レベルの高いGⅠ・GⅡからの転戦組が優勢である。
対照的にGⅢからの転戦馬は苦戦傾向で、北九州記念組が【1-1-1-18】勝率4.8%、連対率9.5%、複勝率14.3%、キーンランドC組が【0-1-4-37】勝率0.0%、連対率2.4%、複勝率11.9%と成績が落ち込んでいる。
さらに、この2レースからの転戦組を脚質別に分析すると、前走で逃げた馬の成績が【0-0-0-8】と全く好走できていない。実はこの8頭中5頭は前走で連対を果たしており、本番で上位人気に推される馬も多かった。母集団のレベルの高さとは裏腹に結果が出ておらず、チェックは必須だ。
ナスルーラ系 特に古馬は全滅
次に紹介するのは血統に関するデータである。種牡馬系統別の成績を見るとミスタープロスペクター系が最も良好で【6-5-3-36】勝率12.0%、連対率22.0%、複勝率28.0%となっている。また、サンデーサイレンス系も【2-3-4-35】勝率4.5%、連対率11.4%、複勝率20.5%と健闘しており、この2系統が馬券の中心となっている。
一方で最も苦戦しているのがナスルーラ系で、成績は【0-1-0-18】勝率0.0%、連対率5.3%、複勝率5.3%と大半が凡退している。唯一の好走例は当時3歳だったラブカンプー(18年2着)であり、それ以外の凡走した18頭は全て古馬であった。
ナスルーラ系の産駒は全体的に早熟傾向が強く、その分古馬になってからの成長力には疑問が残る。唯一の好走例が3歳馬のラブカンプーであり、この馬自身が19年、20年にはそれぞれ15着に惨敗していることからも産駒の傾向と合致する。また、古馬で敗れた馬にはビッグアーサー(16年1番人気12着)、ベルカント(15年2番人気13着)といった人気馬も含まれていた。
各馬の成長曲線は血統だけで測れるものではないが、これほど極端なデータを無視はできない。ナスルーラ系、なかでも古馬は評価を下げるのが賢明だ。
データで導く「過信禁物の注目馬」
ここまで紹介したデータを総括すると、当レースにおける不安要素は以下の2点となる。
・前走北九州記念 or キーンランドCで逃げた馬
・ナスルーラ系の古馬
これらを踏まえて、今回はジャスパークローネを「過信禁物の注目馬」とする。CBC賞、北九州記念で2連勝を飾りサマースプリントシリーズを制覇、勢いそのままにGⅠの舞台での好走を期待される一頭だ。
しかし過去にハナを奪えなかった4戦は全て敗れており、今回はテイエムスパーダやモズメイメイといった逃げ馬が多数存在する点も気がかりだ。紹介した2つの不安データにも合致しており、3月から使い詰めというローテーションを考えると状態面にも疑問が残る。様々な観点から不安材料が浮かぶだけに、重い印を打つのは避けた方が良いだろう。
《ライタープロフィール》
藤川祐輔
競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。いつの日か馬を買うのが夢。
《関連記事》
・【スプリンターズS】上位人気のアグリ、ナムラクレアは消し メイケイエールの復活を期待
・【スプリンターズS】GⅠの厳しい流れでこそ良さが生きる Cアナライズからはアグリを推奨
・【スプリンターズS】過去10年のレース結果一覧
おすすめ記事