【神戸新聞杯】芝2400mで躍進のハーツコンチェルトが最有力 穴馬はスタミナに期待、シーズンリッチ

山崎エリカ

2023年神戸新聞杯のPP指数,ⒸSPAIA

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日本ダービーよりもペースが上がりにくい

神戸新聞杯が行われる阪神外回りの芝2400mは、東京芝2400mと比べると3~4コーナーが緩やかだが、ストーレートは長く、あまり癖がないコース。レース自体は菊花賞トライアルで始動戦の馬が多く、各馬が本番を見据えた一戦のため、何が何でも逃げたい馬も捲りたい馬も少なく、ペースが上がらないのが特徴だ。

また、日本ダービーはスローペースになることが多いが、神戸新聞杯はそれ以上のスローペースになることが多い。実際に阪神で行われた直近10年ではかなりのスローペースが7回。2019年には前半5F63秒4-後半5F56秒4で決着するなど、前後半差5秒以上の超絶スローペースが3回も出現している。

このため本来は距離が長くなるほど前に行く馬は不利だが、逃げ馬の1着が1回、3着が2回、先行馬の1着が2回、2着が1回、3着が1回、中団馬の1着が4回、2着が1回、3着が3回と、前からでも意外と押し切れている。しかし、全体的には3~4角の下り坂で勢いに乗せられる、差し、追込馬が活躍しているので、逃げ馬不在でもそれらを中心視するのが得策だろう。


能力値1~5位の紹介

2023年神戸新聞杯のPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 ハーツコンチェルト】
芝2000m以下ではデビュー戦からテンが遅く流れに乗り切れない面を見せていたが、距離を延ばして大きく前進。芝2400mの青葉賞では中団中目から最後の直線馬群を上手く捌いて、ラスト1Fで先頭に立ったところを、外からスキルヴィングに交わされたが、半馬身差の2着に好走。前走の日本ダービーでも接戦の3着と好走した。

前走は11番枠から出遅れ、後方2番手からの追走。向正面で隊列が縦長になったが、超絶高速馬場で実質はかなりのスローペース。ここで外からじわっと位置を押し上げて、好位のタスティエーラの外まで進出。3~4角では同馬をマークし、直線でも同馬を追い駆けて進出。最後まで食らいついて前との差を詰めたが、クビ+ハナ差までだった。

ソールオリエンスが皐月賞優勝から指数を下げていた上に、最後の直線で中目から進路取りにやや苦労していた面はあったが、出遅れを挽回しながら、最後にしっかり差を詰めていることは評価できる。今回も実績のある芝2400m戦。阪神芝2400mはコーナーが緩やかなので、東京芝2400mと比べると位置を押し上げるタイミングが難しいが、自由に動ける大外枠を引いた点は好ましい。今回の本命候補だ。

【能力値2位 ナイトインロンドン】
デビュー3戦目で東京芝2400mの未勝利戦を勝利して破竹の3連勝。前走では札幌芝2600mの阿寒湖特別を勝利した。前走は4番枠から出遅れ。そこから押して位置を取りに行ったが、そこまで前の位置が取れず、中団中目からの追走。向正面でも促されていたがなかなか位置が上げられず、3角手前で徐々に進出。4角で激しく手が動いて大外から押し上げ、直線序盤でジリジリと伸びてラスト1Fでは4番手。最後は楽に突き抜けて2馬身差で完勝した。

本馬は芝2400mよりも芝2600mで指数が上昇したように、ゲートも二の脚もハーツコンチェルトやサトノグランツ以上に遅く、ステイヤーの感がある。なるべく前に行って、持久力を活かしたいところではあるが、2600mで差し競馬をした後の芝2400mとなると置かれて後方からの競馬になる可能性が高い。前に行くのであればロスなく立ち回れる内枠がいいが、前走同様に位置を押し上げることを考慮すると外枠の方が好ましい。ハーツコンチェルトをマークして走ればチャンスは十分と見て、重い印を打ちたい。

【能力値3位 サスツルギ】
春のクラシックに出走できなかったものの、新緑賞と木曽川特別を休養を挟んで連勝と着実に賞金を積み上げて来た馬。前走の木曽川特別は4番枠から出遅れたが、じわっと挽回して後方3番手から追走。道中も中団内目のスペースを拾いながら積極的に進出し、3角では中団馬群のやや後方。3~4角で中団中目を通して4角出口で3列目の外に出されると、序盤でスッと伸びて一気に先頭列まで上がり、ラスト1Fでしっかり先頭。食らい付くシテフローラルを寄せ付けず、2馬身差で完勝した。

休養明けの前走で成長力を見せつけることができた。前走から前進があればここでも通用するが、反動が出る危険性もある。またテンが速くない馬ではあるだけに、最内枠だと後方から動けない怖さもある。積極的には狙いにくいが、能力面からは警戒しておきたい。


【能力値3位 ロードデルレイ】

デビューから3連勝の新星。前走は長期休養明けながら、赤倉特別を勝利。前走は5番枠からまずまずのスタートだった。二の脚は速く、コントロールしながら内のパンドレアを行かせてその外2番手を追走。道中はパンドレアが後続を引き離して隊列が縦長になっていく中、本馬は離れた2番手で脚を溜め、3角地点では4馬身はあった差を一気に4角で1馬身差まで詰めて直線へ。序盤でスッと先頭に立ったところで上がってきたシーウィザードに競られ、ラスト2Fからスパート。ラスト1Fでも同馬とのマッチレースが続いたが、それをクビ差で振り切った。

シーウィザードは3歳重賞路線で惨敗し続けた馬。前走で同馬に食らいつかれたとなるとイメージが悪いが、シーウィザードはラジオNIKKEI賞大敗後の月岡温泉特別(2勝クラス)では好位最内から最後の直線で詰まり気味になりながらも3着に善戦しているように、成長力を見せている。実際に赤倉特別では3着馬に3馬身半差をつけていることからも本馬もシーウィザードも強かったと言える。

しかし、今回は長期休養明けの前走が好指数だったからこそ、今回で二走ボケを起こす危険性がある。また、前走は逃げ馬を目標にレースを進めていたが、今回はサヴォーナのスタート次第では本馬が逃げることになりかねない。前走から2Fの距離延長となる今回で逃げて仮に展開に恵まれたとしても、強豪に目標にされて楽に逃げ切れるとは思えない。ただ前走のように上手く2列目を追走できる可能性もあるので警戒はしておきたい。


【能力値3位 ファントムシーフ】

デビュー2戦目の野路菊Sでは、2歳の時点では牡馬ナンバーワンの指数を記録した馬。同レースは1番枠からまずまずのスタートだったが、そこから促して序盤は2列目の最内を追走。向正面では2列目トップナイフの外4番手でレースを進めて3角へ。3~4角の下り坂で勢いに乗せ、直線序盤は勢いを生かしてジリジリ伸びて先頭のアリスヴェリテに並びかけ、ラスト1Fで突き抜けて2着アリスヴェリテに2馬身差を付けて完勝した。

アリスヴェリテは先週のローズSでは大敗したが、逃げるとしぶとく、野路菊Sでも逃げている。また3着馬にはさらに8馬身差を付けているように、ファントムシーフは2歳の時点では最強クラスの馬と言えた。ところがその後、重賞で好走はしているものの、成長力が見せられていない。前走の日本ダービー後、やや出遅れた本馬に対し、鞍上の武豊騎手が「少し位置をあげたがもっと行くべきだったかも。向こう正面で勇気が足りなかった」とコメントしていたが、確かに2角過ぎで思い切って2番手の外まで持って行った共同通信杯のような競馬が出来ていれば、あとひとつは着順を上げられた可能性はある。ただ、上位争いは厳しかっただろう。

道悪の皐月賞では7番枠から様子を見ながら出して、先行争いが激化するとじわっと位置を下げ、それでも末脚抜群のソールオリエンスより前という馬場&展開と本馬の適性が考慮されて中団の外と上手いバランスで乗られているが、3着が精一杯だった。本馬は世間で言われているように、高速馬場よりも時計の掛かる馬場のほうが好ましいが、それ以前に成長力が欲しいところ。本馬が春から成長しているか、上がり馬が上昇力を見せられなかった場合はチャンスがある。

穴馬はスタミナを秘めたシーズンリッチ

デビュー4戦目、今年の始動戦となった3走前の共同通信杯は、引っ掛かって位置を取りに行きながらも、勝ち馬ファントムシーフと0.5秒差(6着)に善戦。休養中の成長を感じさせる内容だった。そして前々走の毎日杯では初重賞制覇を達成。前々走は3番枠からやや出遅れたが、二の脚で挽回して好位の中目を追走。3~4角でも中目を通したが、やや窮屈で進路がない状態で直線へ。序盤は2列目で前が壁で追走するのに苦労していたが、外へ外へと出して進路を確保すると、ラスト1Fでしぶとく抜け出し、ノッキングポイントの追撃も振り切って半馬身差で完勝した。

本馬は毎日杯から日本ダービーに直行。13番枠で前に壁が作れず、やや掛かり気味に先行。2列目の外まで上がってしまったが、最後の直線でも止まりそうで止まらず、ジリジリと脚を使って1~4着馬と0.4秒差の7着に善戦。かなりスタミナを持っていることを感じさせる走りだった。脚を溜めれば毎日杯のように、最後に伸びそうだったことから、距離延長にも十分に対応できる。気性の成長が欲しいところではあるが、前に壁を作ってレースを進められれば大勢逆転も期待できる。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ハーツコンチェルトの前走指数「-18」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.8秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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