【オールカマー回顧】ローシャムパークが重賞2連勝 3代母エアグルーヴと同じ天皇賞(秋)での活躍へ期待

勝木淳

2023年オールカマー、レース結果,ⒸSPAIA

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タイトルホルダーが裏づけたローシャムパークの素質

重賞には季節を感じるものがいくつもある。オールカマーや毎日王冠、京都大賞典は秋の入り口を感じるレースだ。同時に秋の主役が出走し、夏に活躍した馬たちと入れ替わっていくタイミングでもある。実際、オールカマーでは2000年以降、夏のGⅢ経由でここを勝ったのはローシャムパークを含めわずか6頭しかいない。夏の上がり馬的存在は夏休み明けの実績馬にはね返されることが多い。GⅠの前に立ちはだかる壁。それが秋の中距離GⅡだ。

だからこそ、ここを突破したローシャムパークは価値がある。前走サマーシリーズ出走馬の勝利といえば、昨年のジェラルディーナと同じ。同馬は次走エリザベス女王杯を勝った。さらに上述した6頭のうち 、GⅢ、GⅡ連勝はローシャムパークただ1頭。つまりサマーシリーズで負け、舞台替わりで適性を味方につけたわけではない。これは実力の勝利といっていい。

それを裏づける存在がタイトルホルダーだ。天皇賞(春)で競走中止以来、状態面、特に精神面が気になったものの、好発からこれまで通り逃げの手に出て、らしさを見せた。タイトルホルダーといえば、宝塚記念勝ち時計の2:09.7などハイレベルな流れに強く、自ら先手をとり、スキのない流れを生み出す存在でもある。

今回も1000m通過こそ1:01.1とゆったりだったが、後半1000mは11.5-11.5-11.6-11.5-12.4とロングスパートを仕掛け、好位勢を振り払いにいった。3コーナーからゴールまで末脚を持続させねばならない展開をローシャムパークはタイトルホルダーの2、3馬身後ろから動き、1馬身1/4差つけた。恵まれた勝利ではない。

甦る、3代母エアグルーヴの記憶

ローシャムパークは夏の上がり馬というより、今年最大の上がり馬ではないか。4歳初戦は中山金杯当日の最終レースで、GⅢである中山金杯と同タイムを叩き出した。そこからオールカマーまで5戦4勝。負けたのは道悪のスピカSのみ。無理せず育て、9カ月で重賞2勝。2週連続GⅡを勝った田中博康調教師の確かな手腕がローシャムパークの素質を開花させたともいえる。セントライト記念のレーベンスティールにも重なる部分だ。

レーベンスティールも味わいある血統だが、ローシャムパークも3代母がエアグルーヴでダイナカール牝系と90年代の競馬ファンを熱くさせる。成長がゆっくりな父ハービンジャーの影響もあるが、エアグルーヴも4歳夏から秋にかけて、一段ステップアップ。3連勝で天皇賞(秋)を制し、名馬となった。

馬へのジャッジ が的確な田中博康調教師なので、次走はなんともいえない。ただ天皇賞(秋)なら夢がつながり、またひとつレースの見どころが増えそうだ。エアグルーヴが天皇賞(秋)を制して26年。その子孫が挑むならぜひ応援したい。

高速馬場で見直したいゼッフィーロ

2着タイトルホルダーは上記のように得意な形を取り戻しつつある。以前より、前半のリズムがとりやすくなっておりその分、ロングスパートに持ち込みやすい。最後200mが12.4でローシャムパークに差されはしたが、このもっとも苦しいところでひと踏ん張りできれば、完全復調といえる。いい意味で伸びしろを感じる一戦だった。順調なら次はもっと粘れるのではないか。

3着ゼッフィーロは後方から上がり最速34.7を記録。馬群を縫うようにソツなく走り、上位に入った。2月但馬Sからクラスをあげながら5戦連続で上がり最速を叩き出しており、充実してきた。3歳夏の小倉で芝2000mを勝利したときの時計は1:58.7。ここ数戦は速い時計が出にくい舞台で戦っており、上がりが速く、高速決着になりそうな舞台で改めて狙ってみたい。

2番人気ガイアフォースは5着。好位からタイトルホルダーをつかまえに行く正攻法でどこまで戦えるか挑んだ。結果、最後は離されてしまったが、休み明けでもあり、このチャレンジは次につながりそうだ。セントライト記念を勝ってはいるが、中距離のロングスパートは少し厳しいかもしれない。安田記念4着が示すように厳しい流れのマイル戦に距離適性がシフトしている可能性も検討しておこう。

連覇を狙った3番人気ジェラルディーナは6着に敗れた。昨年は好位から進められたが、今年は中団後ろと位置取りも悪かった。エリザベス女王杯を勝って以降、位置取りが後ろになる競馬が目立っている点は気になる。本来はロングスパートを必要とする競馬は合うはずだ。ジェンティルドンナは引退レースで有馬記念を勝ったが、ジェラルディーナも距離適性が若いころより延びているのではないか。

2023年オールカマー、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。

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