【セントウルS】前走GⅠ組の好走率に潜む落とし穴 データで導く「過信禁物の注目馬」
藤川祐輔
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夏から一転 1番人気が7連勝中
9月10日、阪神競馬場ではセントウルS(GⅡ)が行われる。当レースは3週間後に控えたスプリンターズSの重要な前哨戦であり、今年も大舞台を見据える有力馬が多数出走予定だ。
近年の傾向に目を移すと、中京・阪神開催を通じて7年連続で1番人気が勝利しており、夏競馬からは一転して堅い決着が多い。高配当は期待しにくいレースだけに、人気馬を精査し、点数を絞って勝負することが馬券検討の上では重要だ。今回は阪神競馬場で行われた過去10年(10年~19年)のデータを基に「過信禁物の注目馬」を導いていく。
前走GⅢで馬券圏外の馬は苦戦傾向
最初に注目するのは前走のクラス別成績だ。前走が非重賞だった組が最も成績が悪く【0-0-1-27】勝率0.0%、複勝率3.6%となっている。だが今年の出走馬で該当するのはモリノドリームだけで、大半の馬は重賞からの転戦となる。最も好成績なのは前走海外GⅠ組で、サンプルは少ないが【1-2-0-2】勝率20.0%、複勝率60.0%と高水準だ。
この中には外国馬も含まれるが、18年には日本馬ファインニードルがチェアマンズSP(香港・GⅠ)からの転戦で勝利しており、海外帰り初戦を過度に割り引く必要はないだろう。
データを精査したいのは最もサンプルの多い前走GⅢ組だ。成績は【7-6-8-73】勝率7.4%、連対率13.8%、複勝率22.3%で、勝ち馬を7頭輩出しており複勝率も悪くはない。だが、前走の着順に注目すると、明暗がハッキリと分かれてくる。
前走GⅢで1~3着だった馬の成績は【5-5-3-14】勝率18.5%、連対率37.0%、複勝率48.1%と良好だ。これに対して4着以下に敗れていた馬は【2-1-5-59】勝率3.0%、連対率4.5%、複勝率11.9%と一気に落ち込んでいる。GⅠへと繋がるハイレベルな前哨戦だけに、GⅢで通用しない馬には舞台といえそうだ。
「前走GⅠ」の好走例はGⅠでも人気の馬ばかり
もう1つ、前走クラス別の成績に関して触れておきたい点がある。前走国内GⅠ(以下GⅠと略)を使った馬の成績は【1-2-1-10】勝率7.1%、連対率21.4%、複勝率28.6%と悪くない数字だが、回収率を見ると単15%/複37%と低調だ。この要因として挙げたいのが、この組における前走人気別の成績だ。前走で1~2番人気に支持されていた馬は【1-2-0-1】勝率25.0%、複勝率75.0%と好走率は高いが、一方で3番人気以下だった馬は【0-0-1-9】勝率0.0%、複勝率10.0%と奮っていない。
前走GⅠ組の成績を引き上げているのは、「GⅠで1~2番人気に推される程に」実力の抜けた馬たちだと分かる。当然ながらそういった馬は当レースでも上位人気に支持されるため、成績の割に回収率が低い点にも納得がいく。相当な実力馬でない限りは、前走GⅠ組に過度な期待は禁物だ。
次は前走の距離別成績に着目した。前走で1200mを使っていた馬が圧倒的に多く、成績は【8-6-8-83】勝率7.6%、連対率13.3%、複勝率21.0%とまずまずだ。一方で気になるのは前走で1400m以上を使っていた距離短縮組で、成績は【1-2-2-26】勝率3.2%、連対率9.7%、複勝率16.1%とやや低調な数字だ。
これとリンクするデータとして、当レースにおける脚質別成績を取り上げる。逃げ馬の成績が【3-1-0-6】勝率30.0%、連対率40.0%、複勝率40.0%と良い。そこから先行、差し、追込と位置取りが下がるにつれて複勝率はそれぞれ31.6%、22.0%、6.4%と下降していく。当レースは開幕週施行で、先行有利な馬場になることが多い。スムーズに先行できるかが好走のカギとなる。前走で相対的に遅いペースを経験した距離短縮組は不利といえるだろう。
となれば速いペースを経験した前走1000m組が有利なはずで、実際に成績も【1-2-0-6】勝率11.3%、複勝率33.3%と良好だ。ここに含まれる9頭は全て前走でアイビスSDを使っているが、当レースでも好走した3頭のうち2頭は最初の400mを先頭で通過していた。
アイビスSDで2番手以下からレースを進めた馬で唯一ラインミーティア(17年2着)が当レースで好走しているが、当馬はアイビスSDで後半3ハロンを31.6秒の速さで駆け抜けて勝利している。また、前走1000m組で好走した3頭はいずれもアイビスSDで連対しており、秀でたスピード能力を証明していた。距離延長組が有利とはいえど、道中でハナに立てなかった馬、連対できなかった馬は別枠で考えたい。
データで導く「過信禁物の注目馬」
ここまでに紹介したデータを総括すると、当レースにおける不安要素は以下の点となる。
・前走GⅢで4着以下
・前走GⅠで3番人気以下
・距離短縮組
・アイビスSDで道中2番手以下、3着以下
これらを踏まえて、今回はドルチェモア、ジャングロの2頭を「過信禁物の注目馬」として挙げる。
ドルチェモアは2歳時に朝日杯FSを制した実績馬だが、3歳の3戦はいずれも馬券外に敗れている。前走の安田記念は17番人気(18着大敗)、距離短縮組という点と、合わせて2つの不安データに該当する。1200m戦の出走はこれが初めてで、結果を残してきた2歳時のマイル戦のように、スムーズに先行できるとは限らない。血統面でも父ルーラーシップ、母父ディープインパクトと字面をみればマイル~中距離が守備範囲に思える。GⅠ制覇の実績だけで人気を集めるようなら、馬券的な妙味も薄く買いにくい。
ジャングロは前走のアイビスSDで1年以上の長期休養明けながら6着と善戦。叩いた上積みへの期待も含めて上位人気に推されるだろう。しかし3歳時のNHKマイルCでは大きく出遅れて惨敗を喫しており、短距離戦では肝心のスタートに不安が残る。前走も発馬こそ決まったものの、二の脚がつかずに道中は7番手を追走しており不安データに該当する。前走GⅢで4着以下に該当する点も含めて、積極的に馬券に組み込む必要性は感じない。
《ライタープロフィール》
藤川祐輔
98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。
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