【北九州記念】波乱上等の真夏のハンデ戦 穴候補はスマートリアンら牝馬勢

勝木淳

2023年北九州記念に関するデータ,ⒸSPAIA

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1番人気勝利は短距離になってからたった一度

北海道の豪華GⅡはGⅠ馬たちの腕比べが話題の中心になるが、同日の小倉メイン・北九州記念は馬券ファンの腕比べだ。もっとも、速い時計が出る小倉芝1200m、真夏のハンデ戦と波乱要素がそろった上に、サマースプリントシリーズは函館SSこそ堅めの決着だったが、CBC賞、アイビスSDと波乱決着が続いている。流れも波乱傾向にある今年、はたしてどんな結末が待っているのだろうか。データは過去10年分を使用する。

北九州記念の人気別成績,ⒸSPAIA


昨年は16番人気ボンボヤージが勝ち、単勝万馬券が飛び出したように、荒れる傾向にある。1番人気は【0-3-1-6】複勝率40.0%と未勝利。2006年に北九州記念が1800mから1200mに変更されて以降、1番人気の勝利はわずか1回。2008年スリープレスナイトが1番人気で勝利し、次走スプリンターズSでGⅠタイトルまで一気に駆け抜けた。言いかえれば、それほど充実していないと、北九州記念は1番人気で勝てない重賞でもある。

2、3番人気も各1勝にとどまり、6番人気2勝、8番人気3勝、9番人気以下2勝と、穴馬の単勝がよく出る。反面、複勝圏内は5番人気以内が比較的堅実で、人気薄を1着に、2、3着に上位人気という作戦が有効なのではないか。

北九州記念の年齢別成績,ⒸSPAIA


葵Sを勝ったモズメイメイや久々のロンドンプランが該当する3歳は【1-1-2-17】勝率4.8%、複勝率19.0%。2年前にヨカヨカが勝利したものの、昨年はナムラクレア、アネゴハダ、テイエムスパーダが1、4、2番人気で3、4、7着に敗れた。3歳牝馬は特に斤量が軽くなることもあり、人気を集めるが、そこまで信頼度が高くないのは気になる。

一方、古馬勢は4歳【2-2-4-15】勝率8.7%、複勝率34.8%、5歳【3-7-1-42】勝率5.7%、複勝率20.8%、6歳【3-0-3-38】勝率6.8%、複勝率13.6%とさほど差がない。やはりハンデ戦で、各馬の力関係が斤量によって均一化されるだけに、年齢の差は出にくい。そして短距離重賞らしく、斤量が軽くなる牝馬は【6-5-7-57】勝率8.0%、複勝率24.0%と優勢だ。この辺もヒントになる。


ママコチャよりテイエムスパーダ、スマートリアン

単純に牝馬に的を絞るとしても、モズメイメイ、ママコチャ、スマートリアンなど候補は多い。そこで前走成績を頼りに絞ってみたい。

北九州記念の前走クラス別成績,ⒸSPAIA


北九州記念の前走レース別成績(GⅢ),ⒸSPAIA


まずは出走数も多い前走GⅢ【6-5-6-71】勝率6.8%、複勝率19.3%からみていこう。内訳はサマースプリントシリーズのアイビスSD【3-3-2-26】勝率8.8%、複勝率23.5%、CBC賞【3-2-3-36】勝率6.8%、複勝率18.2%、函館SS【0-0-1-7】複勝率12.5%が中心になる。

アイビスSDは4着以内【2-2-1-6】、6~9着【1-1-1-8】、10着以下【0-0-0-9】なので、基本は好走馬を押さえたいが、今年は該当馬がいない。5着レジェーロ、9着スティクスの牝馬2頭は確率的には少し低くなるが、候補に残る。

どちらも有利な外枠から好位で運び、粘れなかったが、今年はオールアットワンスら差し追込勢が逆転したハイペースだったことを考えると、巻き返しもあるか。ただ、レジェーロもスティクスも小倉芝1200mでの好走歴は2、3歳時のもので、数字ほど実績があるとはいえない。

北九州記念の前走CBC賞組、斤量増減別成績,ⒸSPAIA


CBC賞は同じハンデ戦でもあるので、斤量に注目する。CBC賞よりハンデが増えた馬が【1-1-0-2】勝率25.0%、複勝率50.0%、増減なしは【2-1-3-32】勝率5.3%、複勝率15.8%、斤量減【0-0-0-2】なので、効率よくいくなら斤量が増える馬だ。これはCBC賞好走が前提になるので、勝ったジャスパークローネと格上挑戦で54キロを背負って2着にきたサンキューユウガだろう。どちらも牡馬だから趣旨とはちょっとズレるが、好走候補だ。

北九州記念の前走福島芝1200mOPでの位置取り別成績,ⒸSPAIA


前走オープン・L【3-1-2-42】勝率6.3%、複勝率12.5%は前走1200m【3-1-2-34】、短縮【0-0-0-8】なので、牝馬でもママコチャはデータ的には厳しい。

前走1200mのうち、間隔のほどよい福島芝1200mが【3-0-2-27】勝率9.4%、複勝率15.6%と好走の大半を占める。その取捨は位置取りにある。前走時逃げ【0-0-0-4】、先行【0-0-1-7】複勝率12.5%に対し、中団【1-0-1-9】勝率9.1%、複勝率18.2%、後方【2-0-0-7】勝率、複勝率22.2%と差してきた馬がいい。

これに当てはまるのは、牡馬ならバーデンバーデンCからデュガ、福島テレビオープン3着ストーンリッジなど。牝馬は同レースを勝ったスマートリアンがいる。特に同馬は、今回と同じ舞台の昨年CBC賞で4着。あと一歩だった。

北九州記念に関するデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。

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