【桜花賞】本格化したシングザットソングが本命候補 大穴は枠に恵まれたブトンドール
山崎エリカ
ⒸSPAIA
Bコース替りで高速化
かつての桜花賞は外差し有利の傾向だった。しかし、京都競馬場改修の2021年以降はロングラン開催を意識し、馬場が硬い作りになっている。なので内側が悪化せず、Bコース替わりで一気に高速化する傾向だ。
昨年の桜花賞は4角で内々を回った馬が上位を独占。16番枠から4角で外を回った前年の2歳牝馬チャンピオンのサークルオブライフが惜しい4着に敗れたように、内が有利の傾向だった。特にスローペースの上がりの速い決着では、内と前に行ける馬が活躍している。
今年も明確な逃げ馬が不在でスローペースが濃厚。ただ内枠に差し馬が入り、外枠に先行馬が入ったことが馬券を難しくさせる。断然1番人気のリバティアイランドは難しい枠に入ったと思うが、そのあたりがどう影響するか。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 リバティアイランド】
新馬戦は中団で脚をため、ラスト3F31秒4と優秀な上がりタイムで勝利した馬。ハイレベルだった次走のアルテミスSでは2着。断然の1番人気に支持された同レースは、3番枠から五分のスタートを切って、好位の直後と出遅れた新馬戦時よりも前の位置を取りに行く形。そのため3~4角の中目で包まれ、そのままの状態で直線へ。ラスト2Fでようやく外に出して進路を確保すると、ラスト1Fで3馬身はあった3着馬との差をしっかり詰めて交わし、1着馬との差も詰めたがクビ差届かず惜敗した。
しかし、前走の阪神JFでは巻き返しV。9番枠から五分のスタートを切り、そこからコントロールされ、これまでよりも楽な入り方で中団外目を追走。3~4角で前との差を詰め、直線の外からじわじわ加速し、ラスト1Fでは2番手。そのまま突き抜けて2馬身半差で完勝した。
前走は完勝だったが、サンティーテソーロが逃げて前半4F45秒2-後半4F47秒9の超ハイペースを演出したことで、最後の直線で前が失速する展開に恵まれたのも確か。今回はサンティーテソーロのようなペースメーカーは不在、アルテミスS同様に3番枠となると包まれてしまう危険性もある。またぶっつけ本番という臨戦課程も、2020年にソダシが優勝しているがベストではない。連下には入れたい馬だが、人気ほど信頼度は高くない。
【能力値2位 ドゥアイズ】
トップナイフなど後の活躍馬が揃った新馬戦を勝利し、札幌2歳Sは好位の直後の外目から向正面で進出して2着。阪神JFは13番枠から出遅れ、そこから押っ付けたが進みが悪く後方中目を追走。3~4角で上手く内に入れたが、直線序盤では前がキレイに壁になり、ブレーキを踏む痛手があった。そこから立て直して外に誘導するとラストの伸びは良く、2着のシンリョクカにクビ差まで迫っての3着だった。
前走クイーンCも7番枠からやや出遅れたが、そこから押してじわじわ挽回し、好位の最内を追走。向正面で2列目まで上がり、最後の直線序盤ではやや捌くのに苦労しながらも、ラスト2Fで先頭に立って押し切りを図る強気な競馬を見せた。最後にハーパーに交わされクビ差敗れたが、緩みないペースで逃げるニシノカシミヤを積極的に追いかけながらも崩れなかった点は収穫だった。
本馬は最後の直線で不利があった阪神JFこそ3着だったが、それを含めここまで5戦して複勝率100%。総合力が高く、幅広い競馬に対応できる点が魅力だ。ゲートが良くなってきているだけに、今回も五分のスタートを切って、前走のような積極策なら内枠の利を生かせるはず。重い印を打ちたい。
【能力値3位 エミュー】
デビューからマイル戦を使われていたが、そこでは勝ち切れず。距離を1800mに延ばしてデイジー賞とフラワーCを連勝した馬。前走フラワーCは4番枠から出遅れて後方からの競馬。道中も無理せずリズム重視で乗られ、後方2列目の外を追走した。極悪馬場だったため3~4角から苦しくなった前が減速し、ペースダウンしていく中、外から押し上げながら中団列に取りつき、馬場の良い大外から直線へ。追われても序盤の伸びは地味だったが、ラスト1Fでしぶとく伸びて半馬身差で優勝した。
前走は外差し有利の馬場&展開に恵まれての初重賞制覇。今回はそこから一転して内と前に行ける馬が有利な馬場&展開となると、レースの流れに乗れない公算が高い。また1600mではやや距離が短く、今回さすがに苦しいと見る。
【能力値4位 シングザットソング】
阪神芝1600mの新馬戦では、中団後方で折り合い重視の競馬でラスト2F11秒0-11秒0と最後まで減速することなく、勝利したなかなかの素質馬。次走の白菊賞は前残り決着を発馬で外にヨレて2馬身差の不利。さらに内ラチに寄せる際に、前のコスモフーレが急に内に切れ込んだことでバランスを崩す不利。また最後の直線で内にモタれ気味になったり、ゴールまで詰まる不利もあって5着に敗れた。
その次走のエルフィンSは3着も、ここでも8番枠から出遅れた上に大きく外にヨレ、ダッシュが付かず。最後方追走から押して挽回して行く競馬。さらに前の馬のキックバックを食らってジタバタしていたが、外に誘導すると落ち着いて追走。4角最後方から直線では2着コナコーストと一緒にしぶとく伸び続け、同馬にクビ差迫ったところがゴールだった。
白菊賞、エルフィンSではスタート後に外に逃げる癖を出すようになり、力を出し切れなかった。しかし、前走のフィリーズレビューではその癖が改善され、好スタートを決めることが出来た。その前走は先行馬には厳しい消耗戦だったが、好位の外から早めに勝ちにいく競馬で優勝。2着とはクビ差、3着とはクビ+クビ差だったが、その2頭は外から強襲したものであり、着差以上に強い内容だった。
外へ逃げる癖が改善され、前走では課題のゲートも決めており、まさに本格化という印象を受ける。またレースを順調に使われている強みもあり、ここでの期待は高まる。今回は12番枠、先行馬だけにもっと内枠が欲しかったが、この枠でも前には行ける。今回の本命候補だ。
【能力値5位 トーセンローリエ】
前走のアネモネSを勝利し、3連勝を達成した馬。前走は5番枠からまずまずのスタートを切り、そこから促されて逃げ馬スピードオブライトの外を追走。しっかりと折り合って同馬から半馬身後ろの2番手を維持して3角を通過。4角外から後続各馬が上がってきたタイミングでじわっと仕掛け、逃げ馬に並びかけて直線へ。同馬がしぶとく抵抗していたが、ラスト1Fの坂で抜け出し、外から強襲するコンクシェルを半馬身ほど振り切った。
超高速馬場だった前々走の春菜賞では、トレブランシュが大逃げを打ってレースがかなりハイペースとなった中、本馬は逃げ馬から離れた好位の5番手を追走。そこから3~4角でも最内と完璧に立ち回っての勝利だった。それゆえに前走は前々走から1Fの距離延長に未知数な面があったが、それを克服。正攻法の競馬で勝利している。今回は大外18番枠と最悪な枠を引いてしまったが、前へ行ける優位性はある。
穴馬は枠に恵まれたブトンドールと素質高いラヴェル
【ブトンドール】
昨夏の函館2歳Sの優勝馬で、秋のファンタジーSでも2着と好走した馬。ファンタジーSは5番枠から出遅れ、最後方まで位置を下げ切る形。道中もそこまでペースが上がらない中で我慢し、3角外からじわっと進出。3~4角の外目を通って、後方2列目の外から直線へ。直線での伸び始めはジリジリだったが、ラスト1Fでは強烈な脚でグンと伸びて先頭のリバーラには1馬身1/4差まで迫った。
ファンタジーSは内と前が有利な流れで、それを出遅れたのは痛かった。その後、位置を下げ過ぎて3~4角でロスを作ってしまったことが、逃げたリバーラを差せなかった理由だろう。またそこから1Fの距離延長となった阪神JFは10着に敗れたが、ここでも内有利の状況で位置を下げ過ぎ、3角中目から4角出口で外を走るロスのある競馬だった。また休養明けのファンタジーSで好走した疲れもあったと見ている。
そして前走のフィリーズレビューでは、13番枠からまずまずのスタートを切ったが、ここでもコントロールしながら位置を下げ、中団後方を追走。3~4角では馬群の中に突っ込む形で中団中目に入れたため、4角出口で蓋をされ、進路が作れないまま直線へ。後手を踏んで仕掛けが遅れた上に、ラスト1Fで内にモタれてまともに追えず、なだれ込んでの6着だった。
前走は明確にスムーズさを欠く競馬。ラスト1Fでモタれたのは馬の癖や余力がなかったものではなく、馬群に突っ込みブレーキを踏んでからの再加速が影響した可能性が高いと見ている。近3走のレースぶり、特に前走は全く噛み合っていなかった。なので今回の乗り替わりで、1番枠を利した上手い立ち回りが出来れば一発あっても不思議はない。
阪神芝1600mの阪神JFでは10着に敗れているが、ファンタジーSではロングスパートしてラスト1Fでもうひと脚使えていることから、高速馬場のマイル戦ならこなせそうな雰囲気がある。一発を警戒したい。
【ラヴェル】
新馬戦ではかなり出遅れたが、位置取りを最低限は挽回し、ラスト2Fを11秒7-11秒3で勝利した素質馬。その次走ハイレベルだったアルテミスSでも出遅れて最後方外2番手を追走。3~4角で前がペースを落としたところで、前の馬とのスペースを詰めながら外へ誘導し、4角でリバティアイランドに蓋をしながら直線へ。直線序盤で一気に伸びてラスト2Fでは2番手まで上がり、ラスト1Fで先頭を捉え、最後はリバティアイランドの追撃をクビ差で振り切って優勝。最後の直線で一瞬にして加速した瞬発力は素晴らしいものがあった。
前走の阪神JFは不利な大外18番枠から出遅れ、追走に忙しい競馬。休養明けで好走した疲れもあって末脚不発の11着だったが、立て直された今回は巻き返しが濃厚だ。ただこれまで出遅れ率100%で前に行ける脚がない本馬にとって、17番枠は明確にマイナス材料だ。
3~4角で外を回るロスが生じて、善戦止まりで終わる可能性が高いが、昨年の4着馬サークルオブライフ以上に上手く乗ってくれればという期待はある。前走の着順と今回の枠で、実力以上に人気が落ちている印象があるので、一応、穴馬候補として取り上げた。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)リバティアイランドの前走指数「-17」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.7秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
《関連記事》
・【桜花賞】やはり中心はリバティアイランド 穴はチューリップ賞敗退組とクイーンC1、2着
・【桜花賞】差し・追込届くレースで大穴の末脚に期待 京大競馬研の本命はコンクシェル
・【桜花賞】リバティアイランドに死角なし Cアナライズの相手筆頭は前走ハイレベル戦の2着馬
おすすめ記事