【桜花賞】断然人気馬に苦戦傾向あり? 単勝オッズ1倍台の勝率はわずか36.7%

高橋楓

桜花賞、単勝1倍台の馬の成績,ⒸSPAIA

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11頭中4勝、競馬に絶対は無い

2023年桜花賞、最大の注目はリバティアイランドがどのようなレースをするかと言っても過言ではないだろう。デビュー戦の新潟芝1600mで叩き出した上がり3ハロンタイム「31.4秒」はJRA史上最速タイ。今でも語り草になっている、ハープスターが新潟2歳Sで殿一気を決め、イスラボニータ以下を3馬身突き放した際が「32.5秒」なのだから、いかに異様な数字か分かる。上がりタイムは天候や芝の状態、レース展開によって大きく左右されるものとはいえ、注目せずにはいられない。

今年の桜花賞は非常に高い賞金ボーダーをクリアした馬の戦いとなるが、それでも本命視されるのはリバティアイランドで間違いないだろう。当日のオッズがどうなるかは分からないが、断然の1番人気と想定して、今回はグレード制導入以降の桜花賞で単勝オッズが1倍台だった馬の成績を振り返ってみたい。

桜花賞 単勝1倍台の馬の成績一覧,ⒸSPAIA


1984年のグレード制導入以降、単勝1倍台で桜花賞に挑んだのは下記の11頭。

2018年 ラッキーライラック(2着・1.8倍)
2017年 ソウルスターリング(3着・1.4倍)
2016年 メジャーエンブレム(4着・1.5倍)
2015年 ルージュバック(9着・1.6倍)
2014年 ハープスター(1着・1.2倍)
2009年 ブエナビスタ(1着・1.2倍)
2007年 ウオッカ(2着・1.4倍)
2001年 テイエムオーシャン(1着・1.3倍)
2000年 サイコーキララ(4着・1.8倍)
1995年 ライデンリーダー(4着・1.7倍)
1986年 メジロラモーヌ(1着・1.6倍)

結果は【4-2-1-4】でまさかの勝率36.7%。連対率54.5%、複勝率63.6%。断然の支持にあまり応えられていないことが分かる。さすがに単勝1.3倍以下の3頭は勝っているが、1.4~1.9倍だと1986年のメジロラモーヌしか勝てていない。リバティアイランドが当日どれほど人気を集めるか注目だが、さすがに1.3倍以下になるとは考えづらく、穴も検討する必要がありそうだ。


1984年以降の桜花賞、単勝オッズ1倍台だった馬の成績,ⒸSPAIA


デビューから2連勝している素質馬に要注意!

桜花賞 単勝1倍台の馬が出走した際の払戻し(近10年),ⒸSPAIA


近10年で単勝1倍台の馬がいたケースは5回。1番人気ハープスターが勝ち切った2014年以外を振り返ってみたい。

2018年 1着アーモンドアイ(1番人気ラッキーライラック)
2017年 1着レーヌミノル(1番人気ソウルスターリング)
2016年 1着ジュエラー(1番人気メジャーエンブレム)
2015年 1着レッツゴードンキ(1番人気ルージュバック)

配当は下記の通りだ。

2018年 馬連480円(1番人気)、3連単3,780円(4番人気)
2017年 馬連17,000円(28番人気)、3連単94,890円(214番人気)
2016年 馬連960円(3番人気)、3連単20,330円(43番人気)
2015年 馬連7,860円(22番人気)、3連単233,390円(447番人気)

この4頭の勝ち馬の共通項は、前走で3歳重賞に出走し3着以内だったこと。また、2015年の2着クルミナル、3着コンテッサトゥーレ、2016年2着シンハライト、3着アットザシーサイド、2018年3着リリーノーブル、この5頭はデビュー2連勝を果たしているにもかかわらず、抜けた人気馬の陰で盲点になっていた。似たケースとして、2017年2着のリスグラシューはデビュー戦2着の後、すぐに未勝利戦、アルテミスSと連勝していながら14.5倍の3番人気だった。

今年、出走が叶いそうな馬の中でデビュー2連勝しているのはライトクオンタム、ブトンドール、ラヴェル。デビュー戦2着後2連勝のハーパーまではヒモに入れておきたい。

2000年、サイコーキララと石山繁の挑戦

2000年 第60回 桜花賞,ⒸSPAIA


2000年4月9日、第60回桜花賞。単勝オッズ1.8倍の圧倒的1番人気に支持されたのはサイコーキララと石山繁騎手のコンビだ。石山騎手はこの2年前、ファレノプシスのデビュー戦からパートナーをつとめ、エルフィンSを含む3連勝。しかしチューリップ賞4着でコンビ解消となり、桜花賞は武豊騎手で見事1着になるのをレースの外から見守ることとなった。

その石山騎手にすぐにチャンスが訪れる。サイコーキララとの出会いだ。デビュー戦で後続に7馬身差をつける圧勝。続く紅梅ステークスではGⅠ・阪神3歳牝馬Sの4着馬チアズグレイス、小倉3歳S覇者のアルーリングアクトを完封。さらにエルフィンSで1番人気に応え3連勝。ファレノプシスと若干ローテーションは違うが、エルフィンSを無敗で勝ったことで否が応でも記憶が重なり合う。

桜花賞前に挑んだのは現在のフィリーズレビューにあたる報知杯4歳牝馬特別。ここでもデビュー戦で後続に2.7秒差をつけたシルクプリマドンナや良血馬エアトゥーレ、ベルグチケットやエンゼルカロなどの重賞馬を相手に快勝。先行し他を寄せ付けぬ脚で後続を封じ込めるレースぶりからは、負ける姿が想像できなかった。

とはいえ石山騎手はこれがGⅠ初挑戦で、しかも断然の1番人気。凄まじいプレッシャーもあったのだろう。スタートでやや立ち遅れると、いつものようにすんなり先行することが出来ず2馬身差の4着。勝ったのは過去に退けていたチアズグレイスだった。

石山騎手はその後、レース中の不慮の事故で大怪我を負い引退。懸命なリハビリを経て、障害者馬術競技の全国大会で優勝するまでになる。桜の季節が来ると、サイコーキララがスタート五分だったならばどのような結末が待っていたのか、そんなことを思い出す。

《ライタープロフィール》
高橋楓
秋田県出身。競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。

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