【大阪杯】穴はダノンザキッドとマリアエレーナ 前走大敗もスムーズな競馬が出来れば巻き返し可能
山崎エリカ
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GⅠ昇格後の過去6年の勝ち馬は全て3角5番手以内
大阪杯が行われる阪神芝2000mはスタート直後に急坂があるため、ペースが上がりにくいのが特徴。2021年は直前の大雨で一気に重馬場まで悪化し、前半5F59秒8-後半5F61秒8のかなりのハイペースだったが、良馬場時は過去5回中、3回がかなりのスローペースで決着している。
そういった影響もあり、GⅠ昇格後の過去6年の勝ち馬は全て3角5番手以内である。内訳は逃げ1勝、先行4勝、マクリ1勝。大阪杯当日は1回阪神初日からAコース使用16日目になる。しかし、ロングラン開催を意識して路盤の内側が固く作られており、極端な外差し馬場になることは考えにくく、内でも粘れるはず。今年も前で立ち回れる馬を中心に予想を組み立てたい。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 ジャックドール】
昨年の金鯱賞をレコードタイムで逃げ切り勝ちした馬。同レースは3番枠からまずまずのスタートを決め、1角でハナを取り切り、向正面で速度を上げ、4角から仕掛けて2馬身半差で優勝した。そこまで高速馬場ではなかったが、自ら緩みないペースで逃げての勝ちだった。
その次走の大阪杯では好スタートを切ったが、二の脚がひと息でアフリカンゴールドに競られる形。直後には同型馬のレイパパレが控えていたこともあり、本馬はアフリカンゴールドに抵抗し、1~2角からペースを引き上げていく競馬。ややオーバーペースの逃げとなり5着に敗れた。
今回は同型馬が不在。前走の香港Cでは出遅れて、中団中目からの競馬となったように、徐々にゲートや二の脚でやや甘さを見せているのは気掛かりだが、大阪杯の脚質傾向から要注意だ。
【能力値2位 ヒシイグアス】
昨年の宝塚記念2着の実績馬。同レースはタイトルホルダーがペースを引き上げて行く中で、10番枠からまずまずのスタートを切り楽な手応えで2番手まで上がり、そこから控えて好位の中目を追走する形。道中でやや折り合いに苦労していたが、3~4角で4列目の最内から最短距離を通り、4角で中目を捌いて3列目で直線へ。そこからしぶとく伸び、タイトルホルダーに2馬身差まで詰め寄る驚きの好内容だった。
そこから長期休養明けとなった前走の中山記念は、出脚は良くなかったが、中団中目をスムーズに立ち回り、一昨年に続く中山記念2勝目を挙げた。本馬の能力の高さは健在だが、問題はいつもレース間隔を開けて使われていた馬が、今回中4週で使われる点。続戦するのは人間の視点では調子が良いからだろうが、中身がともなわずに取りこぼす危険性もある。
【能力値3位 ジェラルディーナ】
昨年6月の鳴尾記念以降の5戦全て3着以内かつ、秋のオールカマー、エリザベス女王杯を連勝するなど、成績に安定感を持ちながら上昇してきた馬で、この点は評価できる。ただ昨年のエリザベス女王杯は、時計の掛かる重馬場で緩みなくレースが流れ、外差し決着だった。そんなレースを中団外々から差し切って優勝しているように、時計の掛かる馬場のハイペースがベストの馬。一方、今年の大阪杯は良馬場なら高速馬場であり、芝2000mではやや距離が短い。
前走の有馬記念を始め、近走は距離の長いレースで後方からのレースを続けているだけに、今回はレースの流れに乗ることが難しそう。意識して前に行こうとすれば、無駄に脚を使うことにもなりそうだ。重馬場ならともかく、高速馬場であれば評価が下がる。
【能力値4位 ヴェルトライゼンデ】
昨秋のジャパンCの3着馬。同レースは3番枠からまずまずのスタートを決め、2列目の内から2頭目を追走。前半、中盤とペースが上がらず、3~4角で包まれて直線序盤では進路がなかった。しかし、ワンテンポ追い出しを待ち、狭い内から何とか抜け出してラスト1Fで先頭。外からシャフリヤール、さらに馬群の中目を割って抜け出したヴェラアズールに差されて、3/4+クビの3着だった。
最後の直線で抜け出したいタイミングで進路を作り切れず、待たされたのは少し痛かった。ただペースが上がった3~4角で内目と他の上位馬よりもロスなく立ち回れたことが好走に繋がった面がある。
前走の日経新春杯も2番枠からまずまずのスタートを切って、序盤は2列目の最内、1~2角で前にキングオブドラゴンを入れて3列目の最内を追走。4角出口で外に出されるとジリジリと伸び、ラスト1Fでキングオブドラゴンを差し切った。今回ははっきりとしたマイナス材料は少ないが、最高指数がそこまで高くないことが不安点である。
【能力値5位 ノースブリッジ】
前走のAJCCで2度目の重賞制覇を達成した馬。前走は4番枠から五分のスタートを切ったが、内の馬との接触があってやや置かれ、そこから二の脚で内のスペースを拾って挽回していく形。道中は3列目の最内を追走、3~4角でひとつ外に出し、コントロールしながら仕掛けを待って、4角で空いた先頭列の間を通り直線へ。序盤でバビットをあっさり交わして最内に切り込みながらラスト1Fで先頭。そこから踏ん張って3/4差の完勝だった。
前走は前半5F61秒3-後半5F60秒2とそれなりには流れていたが、4角から仕掛けて粘った内容は優秀なもの。前走は初重賞制覇となった昨年のエプソムC時よりも指数が高く、着実に力を付けている。前走の走りからGⅠでもやれるだけの力を持っていると言える。しかし、問題は前走で自己最高指数を記録し、目一杯に走ってしまったこと。今回に向けての上昇度は見込みにくい。
穴馬は前目で立ち回れるダノンザキッド、マリアエレーナ
【ダノンザキッド】
昨秋のマイルCSの2着馬。同レースでは3番枠からスタート直後にやや躓いたが、そこから促して好位の中目を追走。道中で中団まで下がって、ソダシの後ろで3角へ。3~4角で同馬は外に出したが、本馬はその内から直線しぶとく伸びて2着に好走した。外差し馬場で大外一気のセリフォスには差されたが、同馬よりも内から先に動いての2着は褒められる内容だった。
本馬は一昨年の皐月賞大敗後、マイル路線に転向。しかし、マイル戦では追走に苦労しており、本質的にはもっと距離があったほうが良いと見ている。前走の中山記念では11着だったが、本馬はコーナーリングが苦手で、皐月賞同様に3~4角のペースアップで位置が下がってしまったのが主な敗因。中山よりもコーナーがゆったりとした阪神芝なら見直せる。またこの距離なら出遅れない限り、好位で立ち回れる点も魅力だ。
【マリアエレーナ】
昨夏の小倉記念で初重賞制覇を達成した馬。同レースは2番枠から好スタートを決め、一旦ハナから外の各馬を行かせて好位の最内と、完璧な入り方で3列目の最内を追走。3~4角で2列目まで上がり、4角でひとつ外から楽に先頭に立った。そこから突き抜けて5馬身差の圧勝、自己最高指数を記録した。
その次走の天皇賞(秋)は自己最高指数を記録した後の一戦らしく、あまり行き脚がつかなかったが、1番枠から積極的に前の位置を取りに行った。しかし、ノースブリッジに進路をカットされラチに接触しそうになり、危険回避のため4列目まで位置を下げる不利があった。そこから4角まで包まれ、直線序盤でも前が壁になり、本来の力を出し切れなかった。
前々走の愛知杯は2番枠からトップスタートを切り、そこから逃げの手をチラつかせたが、アブレイズが外から一気に来たことで進路を塞がれ、ここでもスムーズさを欠く競馬で3着だった。3走前、前々走も噛み合っていなかったが、前走の金鯱賞はそれ以上に厳しい競馬だった。
前走でも2番枠から好スタートを切ったが、内のアラタがハナを主張。さらに外からフェーングロッテンがそのハナを叩きに来たので、本馬はコントロールして好位の最内に下げた。そこから道中で包まれて中団まで下がり、3~4角でも中団最内で包まれ、進路がないまま直線へ。ラスト1Fでようやく中目に進路を切ったが、そこでも詰まって力をほぼ出し切れず、8着凡退。今回も2番枠だが、小倉記念のような騎乗が出来れば巻き返せるだろう。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ジャックドールの前走指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.Com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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