【2歳馬ジャッジ】2022年の2歳戦総復習(3) 牡馬芝路線のトップは野路菊S勝ち馬ファントムシーフ
山崎エリカ
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2022年2歳戦振り返り第三弾 牡馬芝路線
昨年6月から2歳戦の指数と評価を掲載してきた「2歳馬ジャッジ」。2022年の2歳戦を路線ごとにPP指数ランキングで振り返っていく。今週は振り返りの第3弾「牡馬芝路線」をお送りする。
2歳牡馬芝路線 PP指数ランキング (2022年12月31日まで)
1位 ファントムシーフ 指数-16 野路菊S・1着
2位 ドルチェモア 指数-15 朝日杯FS・1着
2位 ミッキーカプチーノ 指数-15 葉牡丹賞・1着
2位 ドゥラエレーデ 指数-15 ホープフルS・1着
2位 トップナイフ 指数-15 ホープフルS・2着
2位 ビッグシーザー 指数-15 中京2歳S・1着
7位 ダノンタッチダウン 指数-14 朝日杯FS・2着
7位 レイベリング 指数-14 朝日杯FS・3着
9位 オールパルフェ 指数-13 デイリー杯2歳S・1着
9位 ガストリック 指数-13 東京スポーツ杯2歳S・1着
9位 グリューネグリーン 指数-13 京都2歳S・1着
9位 ミルトクレイモー 指数-13 さざんか賞・1着
9位 キングズレイン 指数-13 ホープフルS・3着
参考
2023年1月22日までの芝部門高指数馬 (指数-13以上)
ソールオリエンス 指数-16 京成杯・1着
クルゼイロドスル 指数-15 ジュニアC・1着
パクスオトマニカ 指数-14 若竹賞・1着
ライトクオンタム(牝) 指数-13 シンザン記念・1着
ショウナンバシット 指数-13 1勝クラス・1着
1位 ファントムシーフ
6月阪神芝1600mの新馬戦を上がり3Fタイム最速タイ、ラスト2Fは10秒8-11秒5で勝利した馬。時期的なものを考慮しても、新馬戦としてはまずまず強いくらいの内容だった。実際に2着以下はその後苦戦していることが多い。ところが次走の野路菊Sでは好位の外で流れに乗り、最後の直線では前を行くアリスヴェリテを目標にラスト1Fで抜け出した。2着に2馬身、3着にはさらに6馬身差の圧勝。まさに一変だった。
倒した相手も札幌未勝利戦で高指数勝ちしていたトップナイフ、新馬戦を好指数勝ちしていた評判馬カルロヴェローチェとかなり強く、本物の強さで高指数マークだった。結局このレースで本馬がマークした指数が世代最高指数のまま、昨年の2歳牡馬芝部門は終了した。
次走はホープフルSに出走して4着に敗退。野路菊S時に記録した指数では走れなかった。休養明けだったこともあるが、4角で前のシーウィザードとのスペースを詰め切っていたため外に出せず、仕掛けを待たされ直線序盤では前が壁になりブレーキ。そこから外に出して、再度スピードに乗せて行く形になったことも敗因だろう。
よって、ここから使われながら少しずつ上昇していくものと推測される。仮に今後の一連のトライアルレースで一気に上昇しきらず、馬柱が多少汚くなったとしても、クラシック本番までノーマークにしない方がいいだろう。
2位 ドルチェモア
8月札幌芝1500mの新馬戦を3馬身差で逃げ切り、なかなかの好指数を記録した。当時2、3着にのランフリーバンクス、ミルトクレイモーは後に好指数勝ちを決めており、出走馬の質も高かった。
次走のサウジアラビアRCは逃げたグラニットが引っ張る流れを、離れた2番手から抜け出して快勝。競馬とは前でレースを進めて勝利した馬が数字以上の強さを持っていることを再認識させてくれたレースだった。
そして朝日杯FSも好位で流れに乗り、3戦3勝で見事に2歳チャンピオンとなった。本馬は同レースでトップスタートを切り、そこからコントロールして2列目の最内を追走。確かにこの週の阪神芝は内が有利で恵まれた面はあったが、好位で流れに乗れること自体も強さ。
また競走馬は毎回同じコンディションで走れるわけではなく、負けていない、崩れていないということは成績以上に潜在能力が高いことを示している。今後も活躍が楽しみだ。
2位 ミッキーカプチーノ
10月東京芝2000mの新馬戦をラスト2F11秒3-11秒3とかなり優秀な内容で勝利した馬。当時2着以下に倒したフリームファクシ、グリューネグリーン、ニシノプロポーズが次走の未勝利戦を好指数勝ちしており、本馬は葉牡丹賞の戦前の段階からどれほどの指数を記録するのかとても楽しみにしていた。
葉牡丹賞は前走の新潟未勝利戦を逃げて好指数勝ちしていたパクスオトマニカがここでも逃げ、緩みない流れ。やや出遅れて中団の内で脚をタメた本馬は展開に恵まれ、3馬身半差の圧勝。能力全開で期待どおりの高指数を記録した。
次走のホープフルSでは外枠の不利、葉牡丹賞激走後で疲れも残っていたようで5着に敗退。不利な状況でも大崩れしなかったことは価値がある。疲れが取れて万全の状態になれば当然巻き返しが期待できる。
2位 ドゥラエレーデ
新馬戦ではカルロヴェローチェの5着に敗れたが、次走の未勝利戦ではドゥーラの2着、なかなかの好指数を記録した。続く未勝利戦では初ダートでも古馬1勝クラス勝ちレベルの指数を記録し能力の高さを見せた。4戦目の東京スポーツ杯2歳Sではシルトホルンと競り合ってペースを引き上げ、緩みない流れ。先行馬にとってかなり苦しい流れながらも4着。一戦ごとの成長力と着順以上の強さを感じさせる結果だった。
よってホープフルSではチャンス十分と見ていたが、その期待に応えて見事に優勝。前走で厳しい競馬をしていた経験が生かされた。ただ指数上位のファントムシーフ、ミッキーカプチーノが能力を出し切れず、その隙を突いての勝利だったことも確か。今後も勝ったり負けたりしながらトップクラスで戦っていく馬になるだろう。
2位 トップナイフ
新馬戦では6着に敗れたが、次走未勝利戦で逃げて3着と見せ場十分の走りを見せた。デビュー3戦目の9月札幌の未勝利戦で4馬身差の圧勝、1クラス上の破格の高指数を記録。次走の野路菊Sは凡退も、続く萩Sでは重賞級の指数を記録して快勝した。
京都2歳Sでは好位直後の内目を追走していたが、4角出口で本馬が押し上げようとしたところでビキニボーイが内から接触し外に弾かれ、中団まで下がってしまう不利があった。それでもそこから立て直して2着を死守したことに、成長力と同時にまだ奥があると感じさせた。
そしてその期待に応えてホープフルSでは2着。同レースは出走メンバー中PP指数1位だった。在籍クラスの中で飛び抜けた好指数を記録した馬は、その後スランプになったとしてもいずれ大仕事をすることが多い。いくら走っても不思議と人気にならない馬だが、指数が示す通り能力は高い。今後も楽しみだ。
2位 ビッグシーザー
デビューからの2戦は3、2着だったが、未勝利クラスは勝てる指数を記録していた。それがデビュー3戦目の未勝利戦で化けた。スタート直後は2番手もスピードの違いで早々と先頭に立ち、1クラス上で勝ち負けになる好指数でレコード勝ちした。
そこからはまさに快進撃。福島2歳Sを重賞勝ちレベルの指数で勝利すると、中京2歳Sも朝日杯FSと同等の指数を記録して勝利した。前年度の中京2歳S勝ち馬ジャングロも強かったが、本馬は指数上それを上回る。ここからは距離克服がカギとなるが、能力は世代トップ級と評価できる馬だ。
7位 ダノンタッチダウン
ダノンザキッドの全弟、ミッキーブリランテの半弟ということでデビュー前から評価が高かった。新馬戦はラスト2Fが11秒1-11秒4とまずまずだったが、上がり3Fタイム33秒6はこの日の中京芝では古馬を含めて最速タイ。なかなか光るものを見せていた。
次走デイリー杯2歳Sは逃げたオールパルフェが残る流れを最後方付近の外から差し脚鋭く追い込んでの2着。素質の高さを証明した。続く朝日杯FSでは外枠不利な馬場状態ながら、12番枠から3角までに最内に入り込む鞍上の好騎乗もあって2着。一戦ごとの上昇度と瞬発力の高さを感じさせる好走だった。
本馬は芝1600m戦では二の脚が遅く、これまでの3戦全てが後方からの競馬。現状では勝ちにいく競馬で結果を残せるかは微妙なところだ。少頭数のトライアルではある程度勝ちにいって伸びきれないところが出る可能性を感じるが、末脚を全開にできる舞台では楽しめそうだ。
7位 レイベリング
11月東京最終週の芝1600m新馬戦では内と前が有利な馬場状態のなかで、不利な外枠から好指数を記録して勝利。同レースは終始中団の外を回るロスがありながら、最後の直線で大外から豪快に伸び、ラスト1Fで2番手から先頭のショウナンアビアスを捉えて3馬身半差の快勝。レース内容が優秀だった。次走予定だった朝日杯FSでも十分に好走が狙えそうで、2歳馬ジャッジでも高評価をした。
その評価のとおり朝日杯FSでは3着と好走。上位2頭は馬場状態が有利な最内を回ったのに対して、本馬は不利な外枠から好位を狙ったため内に入れることが出来ず、終始外を回るロス。この3着には勝ちに等しい強さを感じた。
しかし、この好走は手放しで喜ぶわけにはいかない。新馬戦直後の2歳馬ジャッジでも記したとおり、ダメージがかなり残る危険性がある。競走馬はデビュー3戦目にGⅠ好走ならば、その後も順調なことが多い。しかし、まだ体ができていないデビュー2戦目での激走はその後故障しやすくなってしまうことが多い。順調に行けば世代最強になる可能性を秘める素質馬だけに、まずは無事にいってほしい。
9位 オールパルフェ
6月東京の新馬戦ではノッキングポントの2着。ひと息入れての出走となった次走10月中山の未勝利戦は、なかなかの好指数で逃げ切り勝ちした。同レースはそこまで遅くないペースで逃げながらも、最後の直線で一気に加速した走りに将来を期待させた。
次走デイリー杯2歳Sでも見事な逃げ切り勝ち。テンが遅い馬が多く、マイペースで逃げられたことや馬場にも恵まれた面はあったが、見事な逃げ切り勝ちだった。
デイリー杯2歳Sも先に行われたサウジアラビアRCの結果同様、前でレースを進め好走した馬の数字以上の強さが出たものだった。本馬は次走の朝日杯FSでは逃げて6着敗退。負けはしたがしっかり逃げる競馬をしての敗戦は悪くない。このタイプはいずれ条件が揃ったところで再度の激走が見込める。今後も注目したい。
9位 ガストリック
10月東京芝1800mの新馬戦ではやや出遅れ、最後方追走。そこから最後の直線で外に出されると、一気の末脚を見せて勝利した。前半2F13秒6-12秒2の遅さでも置かれたが、レースが超スローペースになったことで4角で絶望的な位置にならず、最後の直線の末脚比べを制した。
次走東京スポーツ杯2歳Sでもゲートも二の脚もあまり改善されず、出遅れて最後方からの競馬だったが、最後の直線でしっかり脚を伸ばして優勝した。ただ例年の東京スポーツ杯2歳Sと比較すると平凡な指数で、ドゥラエレーデが逃げ馬に競り掛けて行ったことで展開に恵まれた勝利ではあった。
その懸念点が一気に出たのが次走ホープフルS。道中後方のまま16着。自力で動くレースをしていない馬の脆さ、弱さが出てしまった。このタイプは常に過剰人気となりやすいだけに、現時点ではあまり馬券妙味は感じない。ただ秘めたスピードはある馬なので、条件が揃った時に一発が期待できる。
9位 グリューネグリーン
10月東京のミッキーカプチーノが勝利した新馬戦で3着。しかし、次走の東京未勝利戦では1クラス上でも通用する好指数を記録し、能力の高さをアピールした。3戦目で重賞の京都2歳Sに格上挑戦し、秘めたスタミナを前面に出す逃げ戦法で優勝した。
その時点での能力を出し切った競馬だったため次走ホープフルSではお釣りがなく、11着と大敗。京都2歳Sでは絡んできたビキニボーイを最下位に沈めて優勝した走りから、キレる脚はそこまでないが、スタミナはかなりありそうなタイプ。自分の持ち味が活かせる舞台で一発を期待したい。
9位 ミルトクレイモー
新馬戦では後の2歳王者ドルチェモアの3着、次走は後のデイリー杯2歳Sの3着馬ショーモンの2着と惜敗。3戦目の未勝利戦は掛かってしまって崩れたが、次走の福島未勝利戦を1クラス上でも通用する好指数で逃げ切り勝ちした。自分の能力を出せれば強いことをアピールした。
さざんか賞では2番手からレースを進め、重賞級の指数でレコード勝ち。続く中京2歳Sは相手も強く、さざんか賞好走の疲れも多少あったようで3着に敗れたが、大きくは崩れなかった。すでに重賞でも通用する指数を記録しているだけに、条件が揃えば当然重賞勝ちは狙える。
9位 キングズレイン
新馬戦は3着、次走未勝利戦を並レベルの指数で勝利。ただレース内容は指数以上に優秀でラスト2Fを11秒6-11秒5と加速しながら叩き合いを制した。2歳馬ジャッジでは昇級以降も成長が見込め、楽しめそうだと好評価した。
するとそのあと2ヵ月休ませたことで大きく成長し、百日草特別をなかなか良い指数で快勝。そしてホープフルSでもさらに上昇し、3着と好走した。個人的にはホープフルSで3連単100万馬券的中を阻止される末脚を見せられてしまった。
ホープフルSはやや出遅れて後方外目を追走することになったが、向正面でじわっと動いたジュンツバメガエシを追いかけた。4角で少し膨らんだジュンツバメガエシの外からジリジリ伸び、接戦の3着。ホープフルSでは長くいい脚が使えていたことから、距離が延びる舞台でさらに良さが出ると見ている。ただこのタイプは人気があまり落ちないので、馬券妙味はそこまでないかもしれない。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ファントムシーフの指数「-16」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.6秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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