【2歳馬ジャッジ】2022年の2歳戦総復習(2) 牝馬芝路線トップは阪神JF優勝馬リバティアイランド
山崎エリカ
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2022年2歳戦振り返り第二弾 牝馬芝路線
昨年6月から2歳戦の指数と評価を掲載してきた「2歳馬ジャッジ」。2022年の2歳戦を路線ごとにPP指数ランキングで振り返っていく。今週は振り返りの第2弾「牝馬芝路線」をお送りする。
2歳牝馬芝路線 PP指数ランキング (2022年12月31日まで)
1位 リバティアイランド 指数-17 阪神JF・1着
2位 ラヴェル 指数-15 アルテミスS・1着
3位 アリスヴェリテ 指数-14 アルテミスS・3着
4位 ドゥーラ 指数-13 札幌2歳S・1着
4位 シンリョクカ 指数-13 阪神JF・2着
4位 ドゥアイズ 指数-13 阪神JF・3着
4位 デインバランス 指数-13 アルテミスS・4着
8位 モリアーナ 指数-12 コスモス賞・1着
8位 ウンブライル 指数-12 もみじS・1着
8位 リバーラ 指数-12 ファンタジーS・1着
8位 アロマデローサ 指数-12 阪神JF・4着
8位 トレンディスター 指数-12 中京2歳S・2着
8位 マラキナイア 指数12 アルテミスS・5着
1位 リバティアイランド
7月新潟の芝1600m新馬戦を、上がり3Fタイム31秒4の脚で3馬身差の圧勝。20年以上前から新潟の新馬戦を速い上がり3Fタイムで勝利すると過剰評価されることが多く、それらのほとんどが人気先行タイプで、能力はそこまで高くない馬が多かった。本馬もレースが終わった後に上がり3Fタイムは素晴らしいと報道された時点は、またいつものパターンかと思った。
ラスト2Fの数字を見ると10秒2-10秒9とやはり減速している。そこまで余裕はない証拠。過剰人気タイプ確定のようにも思えた。しかし、31秒4は同日の古馬レースと比較しても断トツに速いタイムであることに気が付いた。
また翌日の新潟芝との対比でも、重賞のアイビスサマーダッシュに出走していた全ての古馬たちよりも断然速かった。「これはいつものダミー人気馬ではない、本物だ」と、新馬戦の時点でかなり高い評価をすることになった。
2戦目のアルテミスSではミシシッピテソーロに蓋をされて外に出せなかった。3~4角でも包まれたまま直線を迎え、ラスト2Fまで前が壁になるスムーズさを欠く競馬で2着。しかし、2022年アルテミスSは高指数決着。これは能力を出し切った馬は疲れが残ってしまうレベルなのではと懸念していた。
そうなると能力全開に至らなかった本馬は、阪神JFに向けてはラッキーだった。実際2馬身半差で快勝。現3歳世代の芝部門では牡牝合わせてNO.1の指数を記録した。
おそらく今年の牝馬クラシック戦線でずっと高い支持を受けるだろう。しかし、アルテミスSではラヴェルに負けたわけで、そのことが阪神JFの快勝に繋がっていることは理解しとかなければならない。本馬が強いことは間違いなく、春クラシックの最有力候補であることは確かだが、ここから取りこぼしがあってもおかしくない。
2位 ラヴェル
7月小倉の芝1800mの新馬戦では約2馬身も出遅れるロスがありながら、ラスト2F11秒7-11秒3の末脚で快勝。高い素質を感じさせる走りで、新馬戦の時点でかなり高い評価をした。その期待に応えて次走のアルテミスSでは抜群の末脚を発揮して優勝。なかなかの好タイム、好指数決着となり、高い評価ができるものではあったが、本馬は少し頑張りすぎてしまったのではないかと感じる走りだった。
阪神JFでは11着と惨敗。内有利の馬場で大外18番枠が応えた面もあったが、アルテミスSで頑張りすぎてお釣りがなかったことが最大の敗因だろう。真面目に走り、その次走で疲れが残って人気を裏切ってしまうというのは、半姉ナミュールとよく似ている。能力を出し切ればリバティアイランドに劣らない瞬発力の持ち主だけに、今年もどこかで決めてくれる可能性は十分だ。
3位 アリスヴェリテ
7月小倉の芝1800mの新馬戦では、出遅れて終始促されながら外々を回らされるロスがあった。それでもラスト2F11秒8-11秒6と最後までしっかり伸びて勝利と、高い素質を感じさせた。次走9月中京の野路菊Sではファントムシーフの2着も、自らレースを作って3着馬に6馬身差を付け、ここでも好指数を記録した。
デビュー3戦目のアルテミスSは逃げて3着、重賞勝ちレベルの指数を記録したように、自分の競馬が出来ればとても強い馬だ。ただその後の2戦は1番人気の支持を受けながら連続凡退。アルテミスS好走の疲れが残った面もあり、逃げてパフォーマンスが上昇するタイプだけに距離が短いレースでは持ち味が活きなかった面もある。力がある馬なのは確かなだけに、条件が揃った時に巻き返しが予想され、馬券的に楽しみな馬だ。
4位 ドゥーラ
新馬戦は4着に敗れたが、デビュー2戦目の札幌芝1800mの未勝利戦は1クラス上で通用するレベルの好指数を記録して勝利。8月の未勝利クラスとしてはかなり優秀な指数と評価したが、その期待に応えて続く札幌2歳Sも優勝した。
早い時期の2歳未勝利クラスを1クラス上で勝ち負けになるような指数で勝利するような馬は、やはり出世することが多い。現3歳世代の牡馬でもトップナイフが同じような形で出世した。ドゥーラは阪神JFでは休養明けで16番枠と外枠だったために能力を出し切れなかったが、能力は確か。叩かれながら着実に上昇し、スタミナが要求される舞台で楽しみな馬となりそうだ。
4位 シンリョクカ
10月東京の芝1600mの新馬戦をラスト2F11秒0-11秒1を記録し、3馬身半差で勝利。もちろん好評価した。走破タイムが平凡で疲れが残るような内容ではなかったので、次走が楽しみな馬だと見ていた。すると阪神JFと朝日杯FSにダブル登録。牡馬のレベルがさほど高くないだけに、どちらに出ても穴馬として面白いと見ていたが、阪神JFに出走した。
結果はやはり2着と好走。ただデビュー2戦目にGⅠで好走すると大きくダメージが残るようで、同様の成績だった先輩馬たちはそのあと故障がちになったり、期待ほど成長しなかったりという結果になっている。本馬は桜花賞直行とのことだが、まずはしっかりと疲れを取り、万全のデキで能力全開を期待したい。
4位 ドゥアイズ
好素質馬が集結していた7月札幌の芝1800mの新馬戦を勝利。2着ウヴァロヴァイトは後に赤松賞3着、3着ジェモロジーは中京の未勝利戦を1クラス上で通用するレベルの好指数で圧勝した。4着ドゥーラは札幌2歳Sの優勝馬、6着トップナイフはホープフルSの2着馬である。本馬が勝った新馬戦のレベル自体は高くなかったが、後の活躍馬が揃った一戦だった。
本馬は次走コスモス賞でモリアーナに完敗の2着。その次の札幌2歳Sでも2着だったが、勝ち馬ドゥーラに徹底マークされ3角から進出して行くという強いレース内容だった。阪神JFではラスト2F目の内で少し詰まり、そこから中目に進路を切り替えて捌くロスがなければ、2着はあったという伸びを見せていた。
着順以上にレース内容が良い馬だけに、今後も期待できる。一戦ごとに着実な上昇があり、無理をしているような感じもない。まだまだ良化が見込めそうだ。
4位 デインバランス
8月新潟の芝1600mの新馬戦を好位の最内から差し切って勝利。しかしスローペースの一戦ながらラスト2Fは11秒1-11秒7とかなり減速しており、高くは評価できなかった。それでもデビュー2戦目のアルテミスSでは強豪馬に混じって2番人気と高い評価を受けた。祖母が凱旋門賞馬デインドリームという血統面の評価もあったのだろう。
その期待に応えて4着と大健闘。良血馬ならではの上昇力を見せ、なかなか良い指数を記録した。昨年のアルテミスSで頑張りすぎてしまった馬たちはその後疲れが残って凡退した例が目立つ。本馬は3~4角で包まれ2列目の内から1列下げ、直線進路がない状況で捌くのに苦労し、やや脚を余したようなところもあっただけに、まだ奥があるかもしれない。いずれにしても楽しみな馬だ。
8位 モリアーナ
6月東京開幕週の芝1600mの新馬戦をラスト2F11秒0-11秒1、3馬身差で楽勝し、GⅠ級の素質を感じさせた。デビュー2戦目のコスモス賞でもやや出遅れを挽回し、早め先頭からドゥアイズを突き放して快勝。能力だけなら阪神JFでも当然勝ち負けになる馬だった。しかし、休養明けが応えたか12着と惨敗。休養明けの調整の難しさを改めて感じた結果となった。
阪神JFはそれにしても見どころのない悪い内容だった。モリアーナと同様に素晴らしい内容で6月の新馬戦を勝利したノッキングポイントはサウジアラビアRCでかなり悪い内容での敗戦を喫し、立ち直りに苦労している。本馬も同様の懸念はあるがともに新馬戦の内容は秀逸。高い素質を秘めていることは間違いない。いずれ復調してくるだろう。
8位 ウンブライル
ステルヴィオの全妹ということもあり1番人気に支持された東京芝1400mの新馬戦は、逃げ馬の外2番手から早め先頭に立ち3馬身半差で完勝。実力のあるところを見せた。6月の新馬戦としてはなかなか優秀な指数で勝利したことで期待していたが、次走10月のもみじSでは期待に応えて3馬身差の快勝。ここでも良い指数を記録した。
デビュー3戦目の阪神JFでは15着と大敗したが、能力を出し切っていないことは明らか。内有利の馬場の17番枠で距離損したことや、最後の直線で外からラヴェルに交わされる時に窮屈になって下がり、その時点で鞍上のやる気もなかった。また手応えも悪く、休養明けでもみじSを好走した疲れが残ったような内容だった。立ち直れば当然、巻き返しの期待は出来る。
8位 リバーラ
7月福島の新馬戦では出遅れて後方からの競馬で3着。次走8月新潟の芝1200mの未勝利戦はスタートを決め好位の最内からの競馬で勝利した。未勝利戦時の指数は並レベルだったが、次戦11月のファンタジーSでは逃げて大波乱の勝利を決めた。勝因は新潟未勝利戦でタフな稍重馬場を経験していたことが大きい。
この時期の2歳芝馬は厳しい流れの競馬を経験したことがないことが多く、前走でタフな馬場、ダートなどを経験している馬がスタミナ面で優位に立つことが多い。そのスタミナ面での優位性を前面に押し出す、逃げ戦法も見事にハマった。それにしても前週に行われたアルテミスSと比較すると、ファンタジーSは随分と出走馬の質が違ったように感じた。
8位 アロマデローサ
7月小倉の芝1200mの新馬戦を序盤は好位から道中で好位直後の中目に下げて、ラスト2F11秒6-11秒4で差しきり勝ち。好内容で高い評価をした。次走ききょうSではそこまで高い指数ではなかったが、2歳レコードタイムで勝利して2戦2勝となった。
デビュー3戦目のファンタジーSでは、ラスト1F過ぎでブトンドールが内に斜行したことでコスモフーレイとの間に挟まれ、10着と大敗。致命的な不利で能力を出し切れなかったことで、エネルギーが溜まる結果となったのか、阪神JFでは4着と巻き返した。現状の能力を出し切ったものと見ている。ただしここから先のGⅠで好走するためには、かなりの成長が求められそうだ。
8位 トレンディスター
9月中京の芝1200mの新馬戦を3馬身差で逃げ切り勝ち、なかなか良い指数を記録した。ただラスト2Fは10秒8-11秒7。そこまで余裕を感じさせるものではなく、昇級後はやや苦戦するとみていた。
ところが次走11月東京の1勝クラス、バグラダスが勝利した一戦は1勝クラスとしてはなかなかハイレベルな決着だった。そのハイレベル戦を演出したのが逃げて4着に粘った本馬である。ここで大幅に評価を上昇させることになった。
デビュー3戦目の中京2歳Sはビッグシーザー他、強敵揃いの一戦だったが逃げて2着、好指数を記録した。素晴らしいスピードで強敵相手に健闘の連続。面白い存在に成長していきそうだ。
8位 マラキナイア
6月中京の芝1600mの新馬戦を好位3番手から勝利した馬。ラスト2Fは11秒4-12秒1と余裕を感じさせるものではなかったが、当日の馬場を考えれば走破タイムの1分34秒7はなかなか優秀だった。
2戦目はアルテミスS。疲労をしっかり取ってのレースで強敵相手に小差の5着と大健闘した。好走の疲れが多少残ったようで、次走ひいらぎ賞は1番人気で6着と凡退したが、これは仕方のないところがある。体調を万全にしてからの巻き返しが期待できる。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)リバティアイランドの阪神JF1着時の指数「-17」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.7秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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