【2歳馬ジャッジ】2022年の2歳戦総復習(1) ダート路線トップは新馬戦で2着馬に4.3秒差つけたヤマニンウルス

山崎エリカ

2022年2歳ダート馬ジャッジ,ⒸSPAIA

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2022年2歳戦振り返り第一弾 ダート路線

昨年6月から2歳戦の指数と評価を掲載してきた「2歳馬ジャッジ」。2022年の2歳戦を路線ごとにPP指数ランキングで振り返っていく。今週は振り返りの第1弾「ダート路線」をお送りする。

2歳馬ダート路線 PP指数ランキング (2022年12月31日まで)

1位 トレド 指数-21 プラタナス賞・1着
1位 ヤマニンウルス 指数-21 新馬戦・1着
3位 オマツリオトコ 指数-20 兵庫ジュニアグランプリ・1着
4位 デルマソトガケ 指数-19 全日本2歳優駿・1着
4位 ペリエール 指数-19 オキザリス賞・1着
4位 ユティタム 指数-19 1勝クラス・1着
7位 コンティノアール 指数-16 カトレアS・1着
7位 ゴライコウ 指数-16 JBC2歳優駿・1着
7位 ヒーローコール 指数-16 鎌倉記念・1着
10位 フェルヴェンテ 指数-15 なでしこ賞・1着
10位 エンペラーワケア 指数-15 未勝利戦・1着
10位 エコロアレス 指数-15 1勝クラス・1着
10位 ニシノカシミヤ 指数-15 寒椿賞・1着
10位 マニバドラ 指数-15 1勝クラス・1着

1位 トレド
9月中山のダ1800mの新馬戦を6馬身差で逃げ切り、古馬1勝クラス勝ちレベルの指数を記録した馬。ラスト2Fは12秒4-12秒4と減速せず余裕を感じさせる勝利で、非の打ちどころがない内容だった。

2戦目は10月東京ダ1600mのプラタナス賞。ここでは逃げ馬の外2番手でレースを進め、結果は7馬身差の圧勝。古馬3勝クラスでも通用するレベルの好指数を記録した。この時のトレドの走りが結果的に現3歳世代のダート路線では指数最高値タイとなった。前途洋々かとも思われたトレドだったが、次走兵庫ジュニアグランプリでは競走中止、残念ながらこの世を去ってしまった。

1位 ヤマニンウルス
8月小倉のダ1700mの新馬戦は逃げ馬の外2番手追走から、3~4角で一気に先頭に立ち大差のレコード勝ちした馬。記録した指数は古馬3勝クラスで通用するレベル。この1戦の指数が現3歳世代ダート路線では1位タイ。とにかく圧倒的な強さだった。

しかし、新馬戦で強すぎた走りをした馬には大きなダメージが残ることが多い。一見、大丈夫なように見えても疲れが残ってしまう。特にデビュー2戦目までの2歳馬の高パフォーマンスは、そのあと長くダメージが残ってしまうことも多々ある。本馬は新馬戦を勝利したあと休みに入ったままだ。

母ヤマニンパピオネは高指数で新馬戦を勝利した馬だったが、結果的に新馬戦の高指数での走りによるダメージが残り、大成しきれなかった。本馬も新馬戦の走りから間違いなく高い能力を持っている。しかし使い方を間違えれば、故障したときに本当は晩成型の馬だった可能性があったにも関わらず、「早熟馬だ」などと言われることもある。ゆっくり疲れを癒やし、万全な状態で復帰して欲しい。

3位 オマツリオトコ
6月函館のダ1000m新馬戦でデビューした馬。同レースでは出遅れ&二の脚が付かず、後ろから好位の外まで挽回した。外々を回るロスがあったが最後までほぼ減速せず、高い素質を感じさせる勝ちっぷり。ダ1000mデビューの馬で大物は多くないが、何かやってくれそうな気配があり、高い評価をした。

その期待に応えてくれたのが次走の函館2歳S。後方から一気に追い込む素晴らしい末脚で初芝の一戦ながら見事3着に入った。その後はダートに戻り、ヤマボウシ賞勝ち。そして兵庫ジュニアグランプリでは好位から直線序盤で先頭に立ち、4馬身差で圧勝した。

この時の指数が現3歳世代ダート路線で3位。続く全日本2歳優駿でも底力で2着を死守したことは価値が高い。芝でもまだ底を見せていない。この後も世代トップクラスの1頭として活躍してくれそうだ。

4位 デルマソトガケ
デビューから2戦は芝を使われ6、4着だったが、3戦目にダートレースに出走して3着と前進を見せた馬。そこからはダート路線転向し、次走の未勝利戦を古馬1勝クラス勝ちレベルの好指数で4馬身差の勝利を飾った。その後、もちの木賞1着、続く全日本2歳優駿では中団外からペリエールをマークして乗り、結果優勝した。

ダート路線転向後は昇竜の勢いで上昇している。しかし全日本2歳優駿は当時指数上位の存在だったペリエール、オマツリオトコが能力を出し切れず、決着ハードルが下がったことが大きな勝因。よって、まだ暫定チャンピオンのような状況だ。ここからさらにダートで上昇し、真のチャンピオンホースとなれるか注目したい。

4位 ペリエール
8月札幌のダ1700mの新馬戦は好位の外からの競馬で、古馬1勝クラスレベルを超える指数で勝利した馬。当時3馬身半馬差をつけたユティタムもその後活躍している。

デビュー2戦目は11月東京のオキザリス賞。前走から一気に距離が短くなりさらに内枠。序盤でキックバックを嫌がって急に外に斜行し、終始外に張られ気味の競馬になったが、3馬身半差で勝利した。この時に記録した指数が現3歳世代ダート路線では4位である。

続く全日本2歳優駿では1番人気の支持を受けたこともあり、好位の外から4角先頭の勝ちにいく競馬。時計の掛かる馬場状態で後続の目標となって最後に苦しくなったが、負けて強しの内容だった。実質、現3歳世代ダート路線で一番強い馬と言えるかもしれない。

4位 ユティタム
8月札幌のダ1700mの新馬戦は2着だったが、勝ち馬ペリエールが強すぎただけで並の新馬戦ならば楽勝レベルの指数を記録していた馬。次走12月阪神の未勝利戦では折り合いを欠いて先頭に立とうとするロスがあったが、どうにか逃げ馬の外を追走して楽勝。続く1勝クラスも好位の外から追走し、3馬身差で勝利した。

1勝クラスで記録した指数はオキザリス賞と同等。新馬戦で負けたペリエールに並んだ計算となる。これまで外を追走するレースぶりで砂を被る競馬は未経験だが、ダートの世代トップクラスとの戦いでも、勝ったり負けたりしながら互角以上にやっていけそうだ。

7位 コンティノアール
10月阪神のダ1800mの新馬戦を、逃げ馬の外2番手から上がり3Fタイム最速という濃い内容で勝利した馬。次走のもちの木賞では、後に全日本2歳優駿を制覇するデルマソトガケと接戦の2着。3戦目はオープンのカトレアSに格上挑戦した。

格上挑戦と言っても2勝馬不在でそういった感じは全くなかったが、好位馬群の後方外で脚をためる競馬で、古馬2勝クラス通用レベルの指数で勝利した。ここからは相手が一気に強くなるが、勝ったり負けたりしながらダート路線を盛り上げてくれそうだ。

7位 ゴライコウ
8月小倉のダ1700mの新馬戦はヤマニンウルスに大差を付けられ2着だった馬。デビュー2戦目は10着と大敗したが、初めてブリンカーを着用した3戦目の中京未勝利戦では、それまでとは行きっぷりが一変。逃げ馬をぴったりとマークしながらの競馬で、先頭に立ったのはラスト100m辺りも、後続をバラバラの着差にさせる強い勝ちっぷりだった。

そしてJBC2歳優駿では今年は強いと謳われた門別勢を撃破。後方外から捲って4角で先頭に立つレースぶりで、かなりのスタミナを感じさせる内容だった。ダートのスタミナ比べとなりそうな舞台で警戒したい馬だ。

7位 ヒーローコール
全日本2歳優駿では4着だったが、その前走鎌倉記念は逃げ馬スペシャルエックスをぴったりとマークする競馬で、後続をバラバラに入線させる強い勝ちっぷりを見せた。この時の2着馬スペシャルエックスが次走兵庫ジュニアグランプリで2着と善戦し、3着馬デステージョも兵庫ジュニアグランプリで3着したことで、2022年鎌倉記念のハイレベルさと高指数が推測できた。

全日本2歳優駿当日は外差し馬場だったが2番枠と枠順に恵まれず、最内から好位勢を追いかける競馬となったこともあり、力を出し切れず4着に敗れた。数多くいる小久保智厩舎の2歳馬の中でもっとも期待している馬とのことで、ここから巻き返してJRA勢と互角の戦いを見せてくれるだろう。

10位 フェルヴェンテ
6月中京芝の新馬戦でデビューし8着、その後芝で2、7着。デビュー4戦目で初ダートに出走すると4着と上昇した。その次走のダート2戦目ではリングハミに替えたことが吉と出たようで、スッと行き脚が付き、2列目の外からの競馬。最後の直線では外に行こうとしていたがラスト1Fでグンと伸び、後続馬をバラバラに入線させる強い内容での勝利だった。

そしてダート3戦目なでしこ賞では、前走から2Fの距離短縮で行き脚はそこまで付かなかったが、道中は馬群の後方で手綱を抑えながら追走。最後の直線では鋭い脚を見せて差し切り勝ちを決めた。ここで古馬2勝クラス上位入線レベルの指数を記録し、ダートでは3戦2勝。路線変更で軌道に乗り、今後も活躍が期待できる馬だ。

10位 エンペラーワケア
芝の新馬戦では5着。デビュー2戦目は11月阪神のダ1400mの未勝利戦に出走した。結果は逃げて独走し10馬身差の圧勝。このレースで記録した指数は古馬2勝クラス上位入線レベルだった。ダート短距離のトップクラスの一頭であるレッドルゼルのデビュー2戦目を思い出させるような走りで、今後もダートで大活躍を期待していい馬だ。

10位 エコロアレス
10月阪神のダ1400m新馬戦は逃げて2着に5馬身差、3着馬に12馬身差を付け優秀な指数で勝利した。次走のJBC2歳優駿では一気に距離が延び、タフな馬場を逃げるという苦しい競馬となり7着に敗れた。しかし、デビュー3戦目のダ1200m中山1勝クラスでは持ち前のスピードを生かして再度の逃げ切り勝ち。なかなか良い指数を記録した。

続く初芝の中京2歳Sでは9着と大敗したが、この後の復習でも登場するビッグシーザーなどの強敵が相手でもスピードが通用するところは見せていただけに、芝でも侮れない存在となりそうだ。

10位 ニシノカシミヤ
9月中山のダ1800mの新馬戦は逃げて3着馬に8馬身差を付けたが2着。新馬戦から2Fの距離短縮となった次走の東京未勝利戦では逃げ馬の外2番手を追走して4馬身差の圧勝を決めた。

驚かされたのは2走前のオキザリス賞。強敵相手の一戦だったがハイペースで逃げるスピードを見せ、他の馬に絡まれる苦しい展開になりながらも5着と粘り通した内容は素晴らしかった。

あの競馬で粘れるなら前走の寒椿賞を勝利したのは順当なところだろう。ここからはさらに相手強化となるが、持ち前のスピードと粘りで楽しませてくれそうだ。

10位 マニバドラ
芝の新馬戦では3着、次走は7着だったがデビュー3戦目の初ダートの未勝利戦は逃げて3着馬に7馬身差を付けながらもハナ差の2着。惜敗はしたがダートに高い適性を感じさせる走りを見せた。ダート2戦目の未勝利戦では逃げて好指数勝ち。次走なでしこ賞は逃げて3着、そして12月中山の1勝クラスを逃げて再び勝利した。

ダートに路線転向してからは、毎回逃げるスピードを見せながら大きく崩れたことがない。ここからさらにクラスが上がると超オーバーペースに巻き込まれ大敗という結果になってしまうこともあるだろうが、逃げるスピードは差しに転化し、さらなる上昇を呼ぶこともある。今後の活躍は期待できるだろう。

2022年2歳ダート馬PP指数,ⒸSPAIA


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)トレドのプラタナス賞1着時の指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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