【2歳馬ジャッジ】ラヴェルが現2歳世代牝馬芝部門の最高指数を記録 阪神JFでモリアーナとの激突が楽しみ

山崎エリカ

10月5週目の2歳馬ジャッジ,ⒸSPAIA

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10月5週目の2歳戦

このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回はアルテミスSで現2歳世代牝馬芝部門の最高指数を記録したラヴェル、萩ステークスで好指数勝ちしたトップナイフなどが出た、10月29、30日の2歳戦について指数と評価を掲載する。

10月29日(土) 東京3R 優勝馬 グリューネグリーン 指数-9 評価A
秋の東京開幕週のミッキーカプチーノが勝利した新馬戦では、4着馬に5馬身差をつけての3着と善戦。まずまず良い指数を記録したグリューネグリーン。今回はデビュー2戦目。2番枠から好発を切って、トップスタートを決めたエエヤンに内から抵抗していく形。ところが本馬がエエヤンに競ったことで、同馬が引っ掛かってコントロールしきれなくなり、5Fm通過57秒9の明確なハイペースとなった。

本馬は控え、離れた2番手で折り合う競馬。最後の直線では内にモタれる場面があったが、そこから立て直し、逃げるエエヤンをラスト1F地点で交わして先頭に立ち、そのまま突き放して勝利した。2着馬に2馬身半差、3着に6馬身差をつけ、1クラス上でも通用する好指数を記録した。

ラスト2Fは12秒7-12秒5と減速しておらず、良い内容、良い指数での勝利と言える。ただ今回は逃げ馬が飛ばしてハイペースとなったので、能力を無理やり引き出されてしまった感があり、多少疲れが残る可能性を感じた。順調に使っていけるようなら、かなりの活躍が期待できそうだ。

10月29日(土) 東京4R 優勝馬 ルミノメテオール 指数-2 評価A
10番枠から五分のスタートを決め、好位の中目を追走したルミノメテオール。4角では包まれ、直線序盤では2着馬に外から前に入られて進路を失う不利があった。しかし、本馬はそこで待つ余裕があり、前が開いてからは一気に加速しゴールした。

ラスト2Fは11秒1-10秒9と素晴らしい数字。このレースは超絶スローペースで流れ、芝1400mで5F通過が63秒0。本当にラスト2Fだけの競馬だったが、素晴らしいラスト1Fのタイムを記録した。走破タイムがかなり平凡なので疲れもあまり残らず、順当に上昇しそう。次走昇級戦でも楽しみな馬だ。

10月29日(土) 東京11R 優勝馬 ラヴェル 指数-15 評価AA
今年のアルテミスSは現2歳世代牝馬芝部門のスター候補生が集結した。新馬戦は出遅れながらラスト2F11秒7-11秒3と素晴らしい瞬発力を見せ、AA評価したラヴェル。新馬戦で上がり3Fタイム31秒4と言う破格の数字をマークしAA評価したリバティアイランド。前走の野路菊Sは現2歳世代最高指数の決着だったが、そこで自らレースを作り優秀な指数を記録し2着だったアリスヴェリテなどが出走、注目の一戦となった。

レースは最後の直線で一気に弾けたラヴェルが快勝。現2歳世代牝馬芝部門の最高指数を記録した。2着リバティアイランド、3着アリスヴェリテ、強い馬が能力を出し切った素晴らしい一戦だったと言える。

このレースは4着デインバランス、5着マラキナイア、6着ディナトセレーネまで勝ち馬と差のない競馬で好指数を記録した。今回の上位入線馬たちは今後活躍していく馬になるだろう。

実は今回のラヴェルが記録した指数は姉のナミュールがデビュー2戦目の赤松賞で記録した指数を上回った。だからと言ってラヴェルがナミュールよりも上に行くとは言えないが、互角の力はあると見て良さそうだ。今年の阪神JFは、とりあえず現段階ではアルテミスSの上位馬VSコスモス賞を優秀な内容で勝利したモリアーナ、という図式になりそうだ。

10月30日(日) 東京3R 優勝馬 ニシノプロポーズ 指数-7 評価A
秋の東京開幕週でミッキーカプチーノが勝利した新馬戦では、1.1秒も差をつけられ4着だったニシノプロポーズ。今回はデビュー2戦目。まずまずのスタートからダッシュ良く逃げ、向上面序盤までは先頭だったが、最初のコーナーを回ったところで2番手にいたポーラーナイトが折り合いを欠き、一気に交わして先頭に立った。

結局、大逃げするポーラーナイトから離れた2番手を追走する形となった本馬。最後の直線では同馬を楽に交わしラスト2Fで先頭。そこからアスコルティアーモが迫ってきたが、最後まで抜かせず勝利した。終わって見れば、3着馬には6馬身半差をつけての好指数勝ちだった。

逃げ馬が緩みなく引っ張った流れなので、通常は好指数勝ちでも最後は減速フィニッシュとなるが、このレースはラスト2Fが11秒3秒-11秒3と減速していない。まだ余裕があったのか…。これは意外と今後楽しめる馬になりそうだ。

土曜日東京の未勝利戦を好指数勝ちしたグリューネグリーン、そして今回のニシノプロポーズはともに秋の東京開幕週でミッキーカプチーノが勝ち、AA評価した新馬戦で敗退した馬たち。同馬の評価は相対的に上昇した。

10月30日(日) 東京4R 優勝馬 パライバトルマリン 指数-8(ダート) 評価A
5番枠から好発を決め、芝の部分で加速をつけ逃げる形となったパライバトルマリン。ダートに入ってからも折り合いをつけながら逃げた。マイペースの逃げで先頭のまま直線を向くと、そこから大きいフットワークで少しずつ後続を引き離していく。結果は2着馬に5馬身、3着馬には8馬身半の差をつけて圧勝した。

ラスト2Fは12秒1-12秒1と減速せず。逃げて自らレースを作ってのものだけに価値がとても高い。いかにも走りそうな馬体、大きなフットワークにも大物感がある。今後の活躍が大いに期待できる。

10月30日(日) 東京5R 優勝馬 エメリヨン 指数-2 評価AA
8番枠から五分のスタートを切り、中団中目でスムーズに折り合ったエメリヨン。3~4角で外に出されるとじわじわ位置を上げ、直線入り口でもスムーズに外に出された。そこから末脚全開、最後にしっかりと前を捕らえて勝利した。ラスト2Fは11秒1-11秒2とほぼ減速せず。なかなか高く評価できる。

レース内容は評価Aだが、本馬はレース前にゲート入りを嫌って激しく転倒。競馬場をどよめかせるアクシデントがあった。まともな精神状態だったとは思えず、本来なら大きく出遅れ、大敗があってもおかしくない状況でありながら、優等生の競馬で勝利。そこに高い潜在能力を感じ、評価をひとつ上げてAAとした。次走でどう変わってくるか楽しみだ。

10月29日(土) 阪神9R 優勝馬 トップナイフ 指数-13 評価A
デビュー3戦目の札幌未勝利戦を逃げて1クラス上の指数を記録し圧勝したトップナイフ。前走の野路菊Sでは、好スタートを決めいったん先頭に立ちながらも、1角で引いて頭を持ち上げる場面もあった。やはりと言うか、逃げなかったからではなく、未勝利戦を好指数で走った疲れも残っていたのだろう。大きく離されて負けてしまった。

ところが今回は3番枠から好発を切り2番手で流れに乗った。最後の直線では馬なりで前との差を詰め、ラスト1Fで堂々の先頭。後続馬の追撃を封じて2馬身差の完勝。終わってみればとても順当な巻き返しだった。

今回で記録した指数は先に行われた札幌2歳S、サウジアラビアロイヤルCと同等なもの。もちろん今後も勝ったり負けたりだろうが、ピークの状態なら重賞級の力を持っていることを今回で証明した。

このレースで1番人気に支持されたのは、新馬戦を好指数で圧勝していたタイセイクラージュ。やはり新馬戦で余裕を感じさせない好タイム勝ちした馬は、どうしても疲れが残りがち。今回の4着凡退も仕方ない。立て直されての活躍に期待と言ったところだろう。

10月30日(日) 阪神4R 優勝馬 ヴィエンヌ 指数-2 評価A
8番枠から五分のスタートを切ったが、行き脚があまりつかず後方待機となったヴィエンヌ。このレースは前が飛ばしているように見えて、芝1200mのわりにはペースが速くなく、差し馬には有利とは言えない状況だった。

4角では前とかなり差があり、直線序盤で外に出された時点では反応もあまり良くなく、届くような状況ではないように感じた。しかし、追われるとグイグイ伸びてラスト1F付近で先行集団を捕らえ、差しきり勝ち。なかなかインパクトのある末脚だった。

ラスト2Fは12秒0-11秒4。ラスト1Fの急加速ぶりは高く評価できる。今回の走破タイムがかなり平凡だったことも、今後を考えれば疲れが残らず、良いことだろう。あくまで今回は追い込み勝ちなので、次走以降で全幅の信頼が置けるわけではないが、今回で見せた瞬発力はこの先の活躍に繋がりそうだ。

10月30日(日) 阪神5R 優勝馬 アイルシャイン 指数-1 評価B
このレースで1番人気に支持されたアイルシャイン。2番枠から出遅れたが、すぐに行き脚がつき前に突っ込むように後方馬群の内を追走。3~4角で外に出し、前を捕らえに行ったが、4角で2着馬に寄られ手綱を引く致命的なロス。普通なら大敗するところだが、直線では外から長く良い脚を使い、差しきり勝ちを決めた。

ラスト2Fは11秒0-11秒4。そこまで良い指数決着の一戦だったとは言えないが、大きな不利を受けながらそれをクリアし勝利したことは価値がある。新馬戦でこの手のレースぶりだった馬は指数が平凡でも次走で大きく上昇することがある。要警戒の馬だ。


2022年10月5週目の2歳馬PP指数,ⒸSPAIA


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ラヴェルの指数「-15」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.5秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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