【大阪杯】遅咲きの良血開花! ポタジェの勝因とエフフォーリアの今後を考える
勝木淳

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死角が少なかったエフフォーリア
大阪杯はGⅠ昇格前の11年ヒルノダムールからサンデーサイレンス系が連勝中。最後に非サンデー系で勝ったのは10年テイエムアンコール(父オペラハウス)。エフフォーリア9着は血統に敗因を求めることもできる。しかし東京のGⅠ、日本ダービー2着、天皇賞(秋)1着と広いコースで強い一方で、中山も皐月賞、有馬記念の2勝。決して小回りが苦手なタイプではない。
まして昨秋はコントレイル、グランアレグリア、クロノジェネシスに先着し、年度代表馬に選出された。よもや4コーナーで追走一杯になるとは想像できただろうか。負けるかもしれないと考えた方も、惜敗はあっても大敗はないと踏んだはずで、想定を超えた負け方だった。敗因は状態面だろうか。当日の返し馬から「らしさ」がなかったと横山武史騎手は語った。レース後になにかアクシデントがないことを願う。
ジャックドールとレイパパレの攻防
レースのカギはジャックドールが握っていた。5連勝で金鯱賞制覇。前哨戦では昨年覇者レイパパレを完封。サイレンススズカのように序盤から突っ込んで入るタイプではないが、緊張感ある逃げを打ち、後半でさらに加速するという理想形。エフフォーリアがどのタイミングで並びかけるかが焦点でもあった。
そのジャックドール、今回はスタートこそまずまずだったが、そこからダッシュが前走ほどつかない。じわりと先頭に立ちたかったが、外から勢いよくレイパパレ、アフリカンゴールドに来られ、ちょっと泡を食った。コースは違うが金鯱賞は2ハロン目11.0、大阪杯10.3。金鯱賞を勝ったことで目標にされ、外から来たプレッシャーに若干無理をした。ハナに立ち切るまでに脚を使った分が最後に響いた。
ただ先頭に立ってからはこれまでと変わらず、後ろをある程度引きつけながら、ペースを落とさない逃げに持ち込んだ。3ハロン目から12.0-12.2-12.0と精密なラップを叩き、前半1000m通過58.8はジャックドールのリズムではあった。それだけに最初の正面スタンド前でもたついた点が悔やまれる。
ジャックドールが序盤に少し脚を使ってしまったのはレイパパレの仕掛けによるもの。外からハナに行くと見せかける動き、ジャックドールが突っぱねたあと、アフリカンゴールドを先に行かせ、さっと引いたあたりに駆け引きが見える。1コーナー3番手という絶妙な位置ゆえに最後2着に粘った。川田将雅騎手、一流の駆け引きだった。
大器晩成のポタジェ
1コーナーまでのこれら駆け引きをすべて内でうかがっていたのが勝ったポタジェ。行きたい馬をすべて行かせて、1コーナー好位のイン、左前にレイパパレがいる絶好位をとった。
後半1000mは12.1-11.7-11.5-11.8-12.5。ジャックドールはこれまでと同じく脚を溜めすぎず、残り800mからロングスパート。レイパパレがそれについて行くと、その動きにシンクロさせるようにポタジェもインから進出開始。変にゴールまで残り距離を意識せず、強気に動いたからレイパパレを捕らえられた。4コーナー出口までインに潜み、最後にレイパパレの外へ出すという手順も冷静さを感じさせた。吉田隼人騎手の戦略とポタジェの状態がかみ合った勝利だ。
ポタジェの母ジンジャーパンチといえば、その仔・重賞4勝ルージュバック。間隔をとらないと連続好走が難しく、前哨戦好走、本番凡走が多かった。また広いコース向きで中山より東京というタイプだったが、5歳秋にオールカマーで好位からインを強襲した姿は印象に残る。ポタジェはこれまで重賞善戦こそあったが、勝ちきれずという戦歴。5歳春に一気に払拭したようにこの血統は晩成タイプ。まだまだこれからだろう。
もっと強くなれるジャックドール
晩成といえばジャックドールも同じだ。3歳秋から5連勝でGⅠ・2番人気。同期エフフォーリアに先着の5着は立派。ちょっと使い詰めが響いたこともあるが、今回はレイパパレに巧みに脚を使わされてしまった印象。今後は成長して、もっと序盤から突っ込んで入っても止まらないしぶとさを身につけたい。そうなれば脚を使わされても気にならない。父モーリスは4歳春にきっかけをつかみ、その秋、見事に開花。5歳秋には中距離チャンピオンになった。
3着アリーヴォは序盤、急流を避け、後方のイン。一旦待って残り600mから外を回らず馬群を割る形で進出、ポタジェの後ろから器用に追いあげた。急遽乗り替わりだった武豊騎手の、流れを読んだ騎乗が光った。前走小倉大賞典とあわせて、最後時計を要するような流れを遅れ気味に突っ込んでくる競馬スタイルが合う。取りこぼしもありそうだが、流れ次第で好走できる。
エフフォーリア9着は前半から行きっぷりが悪く、続報を待ちたいところだが、小回りで後半早めにスパートする競馬を外からまくり気味に動く形は合わないかもしれない。有馬記念は後半すべて12秒台のため勝負所で11秒台がなく、皐月賞は好位のインに収まり、スパートを遅らせて対応した。終始外目を追走、早めに外をまくっていく王者の競馬を身につけたい。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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