【桜花賞】ナミュール、サークルオブライフ中心 一発なら未対戦アルーリングウェイ!
勝木淳
ⒸSPAIA
最終的に2番人気だったソダシ
直近4年連続でトライアル不出走馬が桜の女王に輝いた。繊細な3歳牝馬の春、間隔をとり、ストレスをかけずに育てる。馬優先の理にかなった世界になりつつある。果たして今年も非トライアル組に凱歌があがるのか。今年は主力勢がトライアルにそろって参戦したので、これで非トライアル組となれば、桜花賞路線はいよいよ大転換を迎えるだろう。ここでは過去10年間のデータと各トライアルを振り返りつつ、勢力図を改めて整理したい。
まず人気別成績。1番人気は【1-3-1-5】勝率10%、複勝率50%。ビッグネームが勝ち馬に並ぶわりに1番人気は勝っていない。ここ4年の勝ち馬はいずれも2番人気。その成績は【5-3-0-2】勝率50%、複勝率80%。ソダシも最終的には1番人気をサトノレイナスに譲っていた。近年の桜花賞は評価逆転のレースだったりする。今年もチューリップ賞を勝ったナミュールを信用できるだろうか。
過去10年間のデータを見れば、やはりトライアル組が優勢になる。特に前走チューリップ賞が【5-7-6-29】勝率10.6%、複勝率38.3%と断然。フィリーズR【1-0-2-49】勝率1.9%、複勝率5.8%、アネモネS【0-0-0-23】。ただし、これを過去5年に絞ると、チューリップ賞は【0-4-3-14】複勝率33.3%。なんだかんだチューリップ賞組連軸は有効も、単勝、アタマ狙いはしにくくなった。また過去10年でみるとクイーンCが【0-1-1-16】複勝率11.1%と、間隔をとったローテの割に機能していない点には注意したい。
前走阪神JF【1-2-0-2】
それではここからは阪神JFを起点に牝馬クラシック戦線を振り返り、各トライアルで抑えたい馬をあげていきたい。
阪神JFは前後半800m46.4-47.4、1.33.8。サークルオブライフが後方追走から外から追い込んだ。連続開催のダメージから内が伸びない馬場。勝ったサークルオブライフはマイルがベストではなく、反応の悪さを見せながらも差し切り勝ち。桜花賞への自信を深めた。出遅れてインに行かざるを得なかったナミュールを含め、やはり桜花賞路線の主軸。今年はラブリイユアアイズが直行ローテ。前走阪神JF2着は21年桜花賞2着サトノレイナスと同じ。
前走チューリップ賞【5-7-6-29】
今年はナミュールが1.33.2で勝ち、2着ピンハイ、3着サークルオブライフ、ウォーターナビレラが5着だった。決着時計は阪神JFより速いが、これは暮れと春の馬場状態の差が大きい。前後半800m46.5-46.7とイーブンで前半は阪神JFとほぼ同じ。後半の差は阪神JFが内を使えなかった分ではないか。とはいえ、トライアルのチューリップ賞は阪神JFと比べ、スローになりやすく、ラップバランスが異なるケースが多い。だが、今年のチューリップ賞は違う。それだけレベルの高い一戦だったととらえたい。
その着順別成績は1着【1-2-1-6】勝率10%、複勝率40%、2着【1-1-1-6】勝率11.1%、複勝率33.3%、3着【2-2-1-5】勝率20%、複勝率50%で必ずしもチューリップ賞での着順がリンクせず、2、3着馬の逆転もしばしば起きる。これはチューリップ賞がスローになりやすく、桜花賞で厳しいラップになることも関係する。
スローでちょっと負けた馬が底力勝負で逆転するという現象は桜花賞に限らず、よくあること。阪神JFとは一転して、好位で流れに乗ったサークルオブライフは不気味。明らかな試走であり、内枠から無理に下げてストレスをかけなかったことをむしろ評価したい。次はきっと以前のスタイルに戻してくる。
チューリップ賞組は2、3着の逆転まであるものの、ピンハイはやや怪しい。というのもチューリップ賞組は当時上位人気評価だった馬が強く、1番人気【2-4-1-3】勝率20%、複勝率70%、2番人気【2-2-1-3】勝率25%、複勝率62.5%。トライアルの時点で1、2番人気に評価されていないと厳しく、3番人気すら【0-0-0-7】。1番人気ナミュール、2番人気サークルオブライフはクリアするが、3番人気ウォーターナビレラ、13番人気ピンハイには減点材料だ。
前走フィリーズR【1-0-2-49】
今年は1.19.9の好時計決着。前後半600m33.5-35.0とラップ構成はスプリント寄り。決着時計を高評価しつつも、この流れを勝ったサブライムアンセム、2着ナムラクレア、3着アネゴハダはスプリンターとして資質が強く出た印象で、マイルへの距離延長に不安がありそう。
チューリップ賞以上にフィリーズRはシビア。前走人気別成績をみると、前走フィリーズR【1-0-2-49】のうち、1番人気だった馬が【1-0-2-4】勝率14.3%、複勝率42.9%。フィリーズR組で好走するのは1番人気しかいない。今年はナムラクレアを抑える程度か。
非トライアル組
トライアル以外ではクイーンC。今年は上位3頭すべて登録してきた。時計は前後半800m47.5-46.6で1.34.1。東京マイルらしいスローの瞬発力勝負になり、鋭く伸びたプレサージュリフト、ベルクレスタが1、3着、好位で粘ったスターズオンアースが2着だった。
間隔をとったローテであっても、クイーンC組が桜花賞でなかなか通用しないのは、今年のようなスローの瞬発力勝負になりやすいところにある。チューリップ賞でも触れたが、本番は開催の進んだ馬場でもあり、そうそう軽いレースにならない。リンクしない要因がこの点にあるとすれば、今年も危ない。
クイーンC組は着順別成績。1着が【0-1-1-6】複勝率25%で好走すべてがここに該当する。2着以下は【0-0-0-10】なので、プレサージュリフトを買えばいい。とはいえ、上記の理由があるのでつながる可能性は低く、積極的には推しにくい。
最後にアルーリングウェイが勝った中京のエルフィンSについて。前後半800m47.2-46.8、1.34.0とコーナーが多くペースがあがりにくい中京マイルとしては平均ペースに近く、軽い流れではなかった。2番手から抜け出したアルーリングウェイは、2戦目万両賞でのちにシンザン記念を勝つマテンロウオリオンの2着と地力はある。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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