【ニュージーランドT】マテンロウオリオン一歩リードも、注目はティーガーデンと前走関西圏の昇級組!
勝木淳
ⒸSPAIA
関西馬8勝、関東馬2勝
今年はじめ、JRAはニュージーランドTについて日本グレード格付管理委員会から格付基準を2年連続で満たさなかったと警告を受けた。これは基準値を3ポイント以上下回った際に出されるもので、GⅡ格を維持できるか瀬戸際にある。
昨年の勝ち馬バスラットレオンは先日ゴドルフィンマイルを制した。その後の戦績はレーティングには関係ないが、出世する馬がいないわけではない。そもそもレーティングは当該レース上位4頭のパフォーマンスの平均値。バスラットレオンが2着タイムトゥヘヴンを0.9秒離し、3、4着とは1秒以上差がついた。勝ち馬が後ろを離し、上位4頭がバラバラに入線するようなレースのレーティングは高くならず、昨年は特例により適用除外ながら20年を3ポイント下回る103.50だった。
はたして今年は3歳GⅡ基準値110.00にどこまで迫れるだろうか。レースパフォーマンスにも注目したい。ここでは過去10年間のデータからレース傾向を考える。
NHKマイルCトライアルではあるが、舞台が中山芝1600mなので、試走という意味合いは低く、どちらかというと、出走権をかけた争いになる。そのため混戦になることが多く、1番人気は【2-2-0-6】勝率20.0%、複勝率40.0%とさほど信頼度は高くない。一方、2番人気が【5-1-2-2】勝率50.0%、複勝率80.0%と強い。それだけ事前の評価が難しく、1、2番人気の差はないに等しい。3番人気以下はさらに混戦で、6番人気【0-0-0-10】を除くと、複勝圏突入は十分考えられる。
18年、関西圏のトライアル・アーリントンCが翌週に移ったものの、東西別成績は関東【2-6-5-80】勝率2.2%、複勝率14.0%に対し、関西【8-4-5-46】勝率12.7%、複勝率27.0%で西が断然。18年以降に区切っても関東【1-2-3-34】勝率2.5%、複勝率15.0%、関西【3-2-1-15】勝率14.3%、複勝率28.6%と傾向は変わらない。1~3着の数字の並びが東西では真逆。関西馬アタマ、連下に関東馬という組み立てでいきたい。
桜花賞当週、クラシックロードもいよいよ佳境という時期もあり、ある程度キャリアを積んだ馬の成績がいい。それでも2戦は【2-0-1-3】勝率33.3%、複勝率50.0%と少ないが目立つ。また3戦も【2-1-0-10】勝率15.4%、複勝率23.1%、シンザン記念勝ちのマテンロウオリオンがここに該当する。5戦【1-4-1-19】勝率4.0%、複勝率24.0%、6戦【3-2-3-25】勝率9.1%、複勝率24.2%を中心に8、9戦までキャリアを積んだ馬をケアしたい。
ファルコンS、ほどよく負けた馬に注意
2番人気好成績、関西馬優勢、キャリア2、3戦から9戦ぐらいまで幅広くといった傾向をつかんだところで、ここからは前走成績を掘り下げてみたい。
試走というより出走権争いという性格を反映したのが前走クラス別成績。GⅠ、GⅡからの転戦組が少なく、GⅢ【6-3-6-42】勝率10.5%、複勝率26.3%、1勝クラス【3-4-3-48】勝率5.2%、複勝率17.2%が主要路線になる。
まず前走GⅢ組。今年の出走予定馬で数が多い前走ファルコンSは【3-1-4-24】勝率9.4%、複勝率25.0%。単勝回収値217と妙味もある。その着順別成績は4着以内【1-1-3-9】もいいが、6~9着【2-0-1-5】勝率25.0%、複勝率37.5%に注目したい。中京芝1400mの重賞でほどよく負けた馬が中山芝1600mで巻き返すというのはなくはない。今年で言えば、ティーガーデンがここに当てはまる。このほどよい負けがポイントで、10着以下の大敗は【0-0-0-10】と巻き返せない。16、17着と明らかに大敗したベルウッドブラボー、デュガは苦しい。
ほかの重賞だとマテンロウオリオンのシンザン記念は【1-0-0-2】。13年エーシントップが2番人気1着。シンザン記念1着から連勝を飾った。マテンロウオリオンもこれに続けるか。また前走弥生賞ディープインパクト記念は【0-1-0-2】。21年タイムトゥヘヴンが3番人気2着、前走6着からの巻き返しだった。リューベックも前走6着、初のマイル戦で新味を見せられるか。
最後に前走1勝クラスについて。ここは前走が芝1600mだと【3-3-2-33】勝率7.3%、複勝率19.5%。ちなみに1400mは【0-0-0-10】なので、前走マイルに注目。その競馬場別成績は東京こそ【0-0-1-3】だが、同舞台の中山が【1-1-0-25】と思いのほか振るわない。いいのは中京【0-1-1-4】、阪神【1-1-0-0】など関西圏。関西馬優勢はこのあたりに表れている。前走中山だったサーマルウインド、アバンチュリエより中京エンペザーに食指が動く。
出走メンバーは全体的にやや手薄な印象で、格付を心配したくなるが、大事なのはあくまでレースパフォーマンス。好レースを期待したい。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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