【京都記念】父と同じく7歳で開眼! 大金星アフリカンゴールドにかける期待

勝木淳

2022年京都記念のレース展開,ⒸSPAIA

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本格化の予兆はあった

12番人気アフリカンゴールドが逃げ切った。最後の直線に向いたとき、己の愚かさに天を仰いだ。中日新聞杯17番人気2着について当時、「また残り600mで積極的にショウナンバルディを捕らえに動き、結果的に後続を封じた。ショウナンバルディをアシストした形になったが、自身も残るためには最善策。早めに動いていかなければ残れなかっただろう」と指摘、レースを引っ張ったのがショウナンバルディならば、レースを動かしたのはアフリカンゴールドだった。

さらに日経新春杯では「12番人気5着アフリカンゴールドは前崩れの流れを考えると、4角2番手からよく粘った。中日新聞杯2着に続き先行策での好走は、またいつか結果につながる」と評価した。

中日新聞杯後半1000mは11.9-11.8-11.1-11.3-12.6、日経新春杯が12.2-11.8-11.4-11.8-11.9。いずれも後続を待たずに仕掛けるロングスパート。アフリカンゴールドは先行馬に辛い流れを2戦連続で粘り込んだ。本格化の予兆はつかめていたはずだ。

後ろ引きつけず、自ら動いたアフリカンゴールド

京都記念の1番人気はドバイ遠征を控えたユーバーレーベン、2番人気レッドジェネシスは中京の京都新聞杯Vこそあるものの、クラシックは11、13着、世代トップクラスとはいいがたい。トップホースの引退が相次ぎ、以前ほど層が厚くはない古馬中距離戦線。京都記念はそれを物語るようなメンバーだった。

そういう時だからこそ、怖いのは逃げ馬だ。アフリカンゴールドを除けば、先行策はマリアエレーナぐらい。正面直線を目一杯使う芝2200m戦ならばアフリカンゴールドが先手を奪うのは難しくなかった。

下から2番目、12番人気の逃げ馬がマークされることはない。前半1000mは12.7-11.3-12.0-12.9-12.8。向正面で十分すぎるほど息を入れられた。またユーバーレーベンが積極的に3番手あたりにつけたのも大きかった。1番人気馬が好位をがっちりキープすれば、後ろは簡単には動けない。前半1000m1.01.7。このペースはオープンクラスには楽すぎる。走ろうとする気持ちをみんな必死で抑え込んだ。

後続が金縛り状態。アフリカンゴールドの勝因はそれもひとつ。ただあくまでひとつ。なぜならアフリカンゴールドは勝負所で後ろが追い上げる前に自らペースをあげ、後半1000mは11.6-11.4-11.4-11.0-12.1。レースを支配せんと動いた。後続は先に動かれ、追いあげるうちに脚を使っていく。最後の急坂も12.1で大きくバテていない。アフリカンゴールドは決して恵まれた激走ではない。

まだまだチャンスある、7歳勢

マイネルファンロンのときも触れたが、現7歳はステイゴールド産駒最終世代。それでサンデーサイレンスに並ぶ産駒17年連続重賞Vを達成した。思えば、父ステイゴールドは7歳春にドバイシーマクラシックを勝ち、その暮れ、香港ヴァーズで悲願のGⅠタイトルを手中に収めた。父はファンタスティックライト、エクラールを破り、「ゴドルフィンブルーの勝負服をみると燃えるようだ」と評されたが、アフリカンゴールドはダーレー・ジャパン・ファームの生産馬、半兄にドバイワールドC覇者アフリカンストーリー。ゴドルフィンとステイゴールドの物語はまだ続く。

タフな走りができ、かつ成長力がある晩成型。中日新聞杯からの流れをつかめていれば、京都記念激走は予感できた。アフリカンゴールドには父と同じ道をたどってほしい。ドバイシーマクラシックは残念ながら登録がないが、国内GⅠも香港もまだ残っている。

2着タガノディアマンテはステイゴールド系オルフェーヴル産駒。3歳クラシック皆勤、4歳冬に万葉Sを勝って、巻き返しを期待されるも、その後は脚元の不安などで今回のレース含め6歳2月まで5戦しか出走できず、その分、馬はまだ若い。今回はこれまでのイメージを覆す好位からの競馬を試みた。この積極策でアフリカンゴールドと同じく目覚める可能性はある。次はこちらも侮れない。

3着サンレイポケットは前半1000m1.01.7の緩い流れのなか、後方待機と流れとは真逆の競馬。それで最後は3着まで来た。休み明けプラス12キロ、これまで得意ではなかった右回り、そして展開不利。これらを覆しての3着は立派。天皇賞(秋)、ジャパンC連続4着は力の証。アフリカンゴールド同じ7歳、今年はGⅠでも買うべきではないか。

5着1番人気ユーバーレーベンは戦歴通り叩き良化型。ドバイを前にここ凡走は気にすることはないだろう。タフなゴールドシップ産駒だけに順調に使っていければ、まだまだやれる。ただし、今回は流れを見越しての先行策だったようだが、これまでのスタイルを変える必要があったかは疑問。最下位だったレッドジェネシスほどではないものの、気の悪さを抱えるタイプ。先行させたことでリズムを乱し、気分を害さなければいいが。

2022年京都記念のレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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