【根岸S】ここが目標の臨戦過程でオメガレインボーが有力 穴馬は差し馬レピアーウィットとモジアナフレイバー

山崎エリカ

2022年根岸S_PP指数,ⒸSPAIA

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根岸Sは2008年以降、逃げ馬の3着以内はゼロ

2008年の根岸Sこそ逃げたタイセイアトムが2着に粘っているが、それ以降は逃げ馬の3着以内はゼロ。しかも、タイセイアトムが2着に粘った年は、降雪により月曜日に代替開催。不良馬場の上に、2列目を追走していたトウショウギアが故障し、有力馬が巻き込まれてことごとく後退する不利があったもの。

一方、追込馬の優勝は2008年以降で4回。2012年のシルクフォーチュン、2013年のメイショウマシュウ、2017年のカフジテイク、2018年のノンコノユメ。その他にも追込馬の2着が2回、3着が4回。これは追込馬の活躍としては異常な数字だ。

理由は、ダ1200mの重賞が4月の東京スプリントまで行われないため。1200mがベストの快速馬や、砂を被るのが苦手で前にいく逃げ馬が多数出走しているからだ。また中長距離適性の高い馬は、同じくフェブラリーSの前哨戦である東海Sに出走するため、よりこちらはスプリント色が強くなるからというのもある。要は逃げ、先行馬が多数出走してくるということだ。

今年も前にいって持久力を生かしてこそのリアンヴェリテ、砂を被らない位置で競馬をしたいジャスティン。さらにオーロラテソーロ、ヘリオス、トップウイナー、ジャスパープリンスと前にいきたい馬が揃った一戦。先行馬もテイエムサウスダン、サクセスエナジー、エアアルマスと手強いだけに、よほど馬場が軽くならない限り、差し、追い込み馬有利の展開になりそうだ。その前提で予想を組み立てたい。

能力値1~5位の紹介

2022年根岸S_PP指数,ⒸSPAIA



【能力値1位 ヘリオス】
昨秋に復帰して東京ダ1400mのグリーンチャンネルCと、霜月Sを逃げて連勝。特に前々走のグリーンチャンネルCは、13番枠から五分のスタートを切りハナを主張。前半3F34秒8-後半35秒8のハイペースで逃げ、2着に3馬身半差をつけ好内容で勝利。指数も「-32」とここで上位のものを記録した。

今回は内枠に逃げたい馬がおり、逃げられない可能性が高いが、一昨年の霜月Sでは、好位の外でレースを進めて勝利しているように、折り合う競馬でも問題ない。また、折り合うことで前々走よりも展開上楽な競馬ができる可能性が高いだけに、先行馬が不利な展開になったとしても、警戒が必要な馬だ。

【能力値2位 ソリストサンダー】
昨年はJpnⅠ・かしわ記念で2着。同レースはサルサディオーネが逃げて前半4F48秒4-後半4F50秒9のかなりのハイペースだったが、中団の外目でレースを進めて粘り込みを図るカジノフォンテンとクビ差。かしわ記念はラスト2Fが12秒9-13秒8で前が失速したところを差してきたもの。展開に恵まれての2着だったが、今回も展開が向く公算が大きい。

今回は武蔵野Sで初重賞制覇を達成した後の約4ヵ月ぶりの一戦、ここが目標ではないのは明らか。また、同馬はもともとダ1400mでは序盤で置かれすぎて結果を出せず、距離が延びて追走が楽になったことで結果を出した馬。今回もかなり後方からの競馬になることが予想されるが、上級条件で前がペースを引き上げると、このような馬でも通用してしまうところが競馬の恐ろしさである。

【能力値3位 テイエムサウスダン】
古馬の交流重賞では4戦して3勝2着1回。一方、中央重賞では2戦して大敗という馬。地方は良くて中央はダメなのかというと決してそうではない。やや距離が長かったマイル戦の武蔵野Sはともかく、リアンヴェリテが逃げて超ハイペースだった一昨年のすばるSを、好位から3~4角で位置を押し上げ、ラスト1F手前で後続との差を広げて勝利しているように、ダ1400mなら問題ないはず。

昨年の根岸Sで13着と崩れたのは、前走のすばるSで自己最高指数を記録した後の疲れ残りの一戦だったからだろう。また、同馬は昨年2月の黒船賞で8馬身差の独走Ⅴを決め、その後の交流重賞でも活躍しているように、一昨年以上に地力をつけている。実力や適性ではここでも通用すると見ているが、前走の兵庫GTで好走した後という臨戦過程が良くない。今回よりも次走の交流重賞で狙いたい。

【能力値4位 オメガレインボー】
ダ1200mから1700mの近5走で全て3着以内と幅広い距離適性を見せている馬。ただ前走は出遅れ後方から位置を押し上げる競馬となったが、逃げ馬モズスーパーフレアが前半3F32秒8の超ハイペースで逃げたことで展開に恵まれた面が大きい。また最後の直線で各馬が外へ外へ出したことで、内の進路がガラリと開き、内からスムーズに追い上げられたのもラッキーだった。

こう綴るとダ1400m適性に不安を感じてしまうかもしれないが、前走でダ1200mを使ったのは、ダ1400mに対応させるため。陣営もそういう趣旨のコメントをしている。前々走の武蔵野Sではソリストサンダーよりも後ろからの競馬になったが、今回は前走以上に行きっぷりが良くなるので、同馬よりも前の位置が取れるだろう。それでも中団より後ろの位置になると見ているが、その辺りは根岸Sのウイニングポジション。例年どおりの速い流れなら、展開に恵まれる可能性が高い。

【能力値4位 サクセスエナジー】
ダ1200m~1400mの交流重賞を6勝。総合力が高く、高速馬場でも時計の掛かる馬場でもそれなりにこなせるのが魅力だ。しかし、3走前のオーバルスプリントでは斤量59kgを背負わされ、3番枠から前の位置が取れずに外から被されズルズルと後退して7着大敗。一方、前々走の東京盃は10番枠からすんなりと好位の外でレースを進め、ラスト1Fで抜け出し優勝。このことからも同馬は揉まれ弱い馬だ。

キックバックが苦手ゆえに前走のJBCスプリントのように、終始好位の外々を回るロスの大きい競馬で崩れることもある。また、ゲートや二の脚が抜けて速いわけではなく、逃げ、先行馬が手薄なメンバー構成や外目の枠が好走条件となる。今回は逃げ、先行馬が多く、同馬よりも外枠にトップウイナー、ジャスパープリンスが入ったとなると、被される可能性が高く狙いにくい。

穴馬は差し馬のレピアーウィットとモジアナフレイバー

【レピアーウィット】
昨年3月のマーチSで初重賞制覇を達成した馬。先週の東海Sもそうだったが、高速化しきらない雨降りの日は狂ったように逃げる馬が出現し、異様にペースが速くなることが多い。

昨年のマーチSもまさにそういうレースで、逃げてこそのベストタッチダウンが大外枠からまるで超高速ダートかのようなペースで逃げ、ホウオウトゥルースが圧勝した同日の最終12レース(2勝クラス)よりも2.1秒も速いタイムで決着した。

レピアーウィットはベストタッチダウンからかなり離れた3列目の内々でレースを進め、4角でベストタッチダウンが失速したところで一気に位置を押し上げた。最後の直線序盤で先頭に立ったナムラカメタローに外から並びかけ、ラスト1Fで同馬を競り落とすと、外から追撃してきたヒストリーメイカーを半馬身振り切って勝利。かなり上手く乗っての好走だった。

鞍上の石橋騎手はこの馬を手の内に入れたかと思いきや、前走のボルックスSでは9着と凡走。レピアーウィットは揉まれ弱く、揉まれない競馬でしか好結果を出していないが、10番枠から好位の最内に入れた。もしかすると揉まれる競馬を改めて試してみたかったのかもしれないが、「やっぱりキックバックは苦手」という結果だった。

今回は大野騎手へと乗り替わり。前走がダメだったからこそ、いっそ2番枠から最後方まで位置を下げ、大外から一発狙いの騎乗をしてくる予感がする。前々走の師走Sのように、速い流れでコーナー4つを終始外だとロスが大きいが、2つのコーナーのダ1400mなら外を回ったとしても息が持つだろう。

【モジアナフレイバー】
2019年の東京大賞典や一昨年のマイルCS南部杯で3着の実績がある馬。一昨年のマイルCS南部杯は砂を入れ替える前の盛岡で1分33秒0の日本レコード決着。このウルトラ高速ダートに対応し、自己最高指数を記録したのは、絶対スピードが高ければこそ。また、大幅距離短縮となった5走前の黒船賞で置かれることなく好位の外目を追走し、3着と善戦したように、本質的にはダ1400mは向いている。

同馬は休養明けの前々走JBCスプリントは、2番枠からのスタートで外から被されたためダートの深い中団内目を追走。レッドルゼルをマークしレースを進め、結果的に直線で馬場のいい外に出したことで、進路確保がスムーズではなかったが4着に善戦。

また、前走の南関東の重賞ゴールドCでは、休養明け好走の反動でパフォーマンスを下げたが、テイエムサウスダンが優勝したオーバルスプリントの2着馬ティーズダンクのクビ差2着なら悪くない。

モジアナフレイバーは先週のAJCCに出走したキャッスルトップ同様に、尾持ちスタート(厩務員がゲート裏で尾を持ってスタートを補助)をすることで出遅れ癖が解消されたタイプ。尾持ちスタートが禁止されている中央競馬に初めて出走したフェブラリーSは、のめって出遅れたが、致命的に悪くもなかった。また、今回も出遅れたとしても、かえってそれで展開に恵まれることも考えられる。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ヘリオスの前々走指数「-30」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも3.0秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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