【朝日杯FS】今年は距離短縮組にチャンスあり 東大HCの本命はドウデュース

東大ホースメンクラブ

朝日杯FSインフォグラフィック,ⒸSPAIA

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ハイペース濃厚で差し馬、特に距離短縮組に熱視線

12月19日(日)に阪神競馬場で行われる朝日杯FS(GⅠ・芝1600m)。牡牝問わず参戦可能な2歳マイル王決定戦に若駒15頭が集結した。

多くの見立てによれば札幌2歳Sを圧勝したジオグリフと、重賞2勝を含む3連勝中のセリフォスの“2強対決”との様相を呈しているが、出走馬はまだまだ経験の浅い2歳馬。他の馬の逆転があっても不思議ではない。この戦いを制し、レース名にもある通り未来を切り開くのはどの馬なのか。今週もデータを踏まえて予想してゆく。


過去7年朝日杯FS成績,ⒸSPAIA


まず当レースが阪神競馬場での開催となった2014年以降、過去7年分のレース傾向を分析する。2歳戦とはいえさすがにGⅠレース。前傾ラップとなることも珍しくなく、特に近2年は前半4F通過が45秒台とかなり前掛かりの展開。例外的に17年がかなりのスローペースとなっているのは、前走逃げた馬が1頭しかいなかったことによるもので、2歳のこの時期のレースとしては例外的な条件であった。近4年の勝ち馬はいずれも4角4番手以内であるものの、トータルの傾向としては後方待機勢の活躍が目立つレースだ。

今年のメンバーに目を向けると、距離延長となる馬が6頭、前走で逃げていた馬が5頭といったメンバー構成。先行争いの激化は避けられず、近2年並みのハイペースが予想される。そこで注目したいのが【1-1-0-19】とデータ上は振るわない距離短縮馬。乱ペースが濃厚な今年に限っては短縮により位置が後ろになることのマイナスはなく、短縮組に実力馬ぞろいということも相まってアタマまで十分にあるとみる。逆に先行勢は序盤の熾烈な争いによる消耗が激しく、また大物感ある先行馬も見当たらないことから、近4年の連勝を継続するのは難しいと判断する。


外枠から無理に位置を取りに行く馬は完消し

過去7年朝日杯FS枠別成績(逃げ・先行),ⒸSPAIA


〈過去7年の枠順成績(逃げ・先行馬限定)〉
1枠【2-1-0-3】勝率33.3%/複勝率50.0%/複回収率153%
2枠【0-0-2-3】勝率0.0%/複勝率40.0%/複回収率204%
3枠【1-0-0-4】勝率20.0%/複勝率20.0%/複回収率24%
4枠【1-0-0-2】勝率33.3%/複勝率33.3%/複回収率43%
5枠【0-0-0-3】勝率0.0%/複勝率0.0%/複回収率0%
6枠【0-0-0-4】勝率0.0%/複勝率0.0%/複回収率0%
7枠【0-0-0-2】勝率0.0%/複勝率0.0%/複回収率0%
8枠【0-0-0-6】勝率0.0%/複勝率0.0%/複回収率0%

次に過去7年における朝日杯FSの枠順成績をチェック。最初に逃げ・先行馬に限った枠順成績を見る。このグループは枠順による明暗がくっきり。まず内枠から先行できた馬は締まった流れをインで立ち回れる利を活かして粘りこむケースが多い。特に1・2枠は【2-1-2-6】と見逃せない成績で、いくら前が速くても押さえる必要がある。これに対し5枠より外から位置を取りに行った馬はあわせて【0-0-0-15】という苦戦ぶり。該当馬は完全に消して問題ない。


過去7年朝日杯FS枠別成績(差し・追込),ⒸSPAIA


〈過去7年の朝日杯FS・枠順成績(差し・追込馬限定)〉
1枠【1-0-0-6】勝率14.3%/複勝率14.3%/複回収率27%
2枠【0-0-1-8】勝率0.0%/複勝率11.1%/複回収率14%
3枠【0-1-0-8】勝率0.0%/複勝率11.1%/複回収率117%
4枠【0-2-1-8】勝率0.0%/複勝率27.3%/複回収率44%
5枠【0-2-1-8】勝率0.0%/複勝率27.3%/複回収率264%
6枠【0-1-0-9】勝率0.0%/複勝率10.0%/複回収率11%
7枠【0-0-2-12】勝率0.0%/複勝率14.3%/複回収率68%
8枠【2-0-0-8】勝率20.0%/複勝率20.0%/複回収率57%

続いて差し・追込馬に限った枠順成績を見る。外枠馬は後方待機策を選びやすいという一般的な傾向に当てはまっているが、だからといって単純に外枠の活躍が目立つわけではない。8枠が15年リオンディーズ、16年サトノアレスの2勝を挙げているものの、6~8枠全体で見ると【2-1-2-29】で複勝率15%と、取り立てて好成績とはいえない。最も安定感があるのは4・5枠などの中枠で、ともに複勝率は27%と抜けて優秀。結果的に大外を回すことになろうとも、枠は外過ぎず内過ぎないところが吉と言えよう。


黄金タッグが悲願のGⅠ制覇へ

◎ドウデュース
加速ラップを差し切った新馬戦を高く評価。前走も終いこそ詰められたものの、抜群の手応えで先頭集団から抜け出しており、着差以上に余裕ある濃い内容であった。2戦ともに1800m戦でマイル経験はないが、上で述べたようにその点はプラス材料。1800m戦でみせた脚質からもマイル戦でも極端な後方に置かれることは考えづらく、中枠も活かしてある程度の位置から差す競馬に期待したい。また前走で+12kgと馬体を増やしているが、調教後馬体重をみるに今回はデビュー時と同程度に落ち着く模様。調教の動きからも仕上がりは万全で、完成度で比較すれば上位人気2頭と差はない。

◯セリフォス
上位人気2頭で信頼するならこちらの方。新馬戦含め濃いメンバーと戦った上での3連勝中で、3連勝で同レースに臨むのは18年のアドマイヤマーズ(1着)、ファンタジスト(4着)以来。確かな実績に大きく裏切られることは考えにくい。新潟2歳Sで強烈なイン突きを見せたように荒れた馬場でも構わず伸びる。多少荒れていても苦にしない点は、今の阪神の馬場で大きな強みとなる。さらに中内田厩舎は17年と20年にそれぞれ2頭ずつ出走させているが、いずれの年も片方が勝利。今年はセリフォス1頭となるが、レースを知り尽くした陣営の仕上げは要警戒だ。

▲ダノンスコーピオン
前走・萩Sでは、小倉で強烈な末脚を発揮して勝ち上がってきたキラーアビリティを外から差し切りV。決め手は世代トップレベルのものを持っている。新馬戦で戦った2・3着馬は既に勝ち上がっており、相手関係からは十分過ぎるほどに能力が裏付けられている。ただ2戦とも少頭数のスロー戦であったのは経験値の面で不安。阪神マイルを経験済みとはいえ、前が速くなったときに同じような脚が使えるのかは未知数のため、3番手評価に留めた。

△アルナシーム
気性が難しい点は課題としてあるものの、新馬戦のパフォーマンスからはかなりの素質を感じた。前走は1800mのスローペースで暴走してしまったが、マイルのハイペースであれば折り合いもつきやすいはず。内枠ということで出遅れて後方からになるとデータ上痛手となるが、仮にゲートを五分で出るようなら怖い存在。印を回さずにはいられない。

以下、1400mに距離を延ばし逃げる競馬で結果を出してきたカジュフェイスまで印を回す。ハイペース濃厚ということで基本的に前は割り引きたいのだが、好枠と1400mのハイペースを逃げ切り勝ちしている点、さらには近2走の内容に不釣り合いなオッズを勘案して押さえておきたい。そして人気が予想されるジオグリフは無印評価。新馬戦・札幌2歳Sをみるにゲートが下手。今回の7枠で出遅れると新馬戦のように枠に助けられて好位につけることもできず、15頭立てでは前走のように捲っていくことも難しい。いくら後方待機勢に分があるとはいえ、物理的に届かない位置取りとなってしまってはノーチャンスだろう。

▽朝日杯FS予想▽
◎ドウデュース
◯セリフォス
▲ダノンスコーピオン
△アルナシーム
×カジュフェイス

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。



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