【ジャパンC】全41回・激闘の記憶 ピルサドスキーやエアグルーヴの熱戦など「日本馬vs外国馬」を振り返る

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外国馬3頭が参戦

今週は東京芝2400mを舞台に、秋古馬三冠第2戦・GⅠジャパンCが行われる。昨年の日本ダービー馬シャフリヤール、天皇賞(秋)で3着と好走した3歳馬ダノンベルーガ、京都大賞典で一躍名を挙げたヴェラアズールなどの精鋭が出揃った。

以上のメンバーに加え、今年も外国馬が複数参戦予定。凱旋門賞馬トルカータータッソの弟テュネス、昨年の5着馬でGⅠジャンロマネ賞勝ちの実績馬・フランスのグランドグローリーなどが登録している。

41回を数える同レースは日本馬27勝・外国馬14勝。ただ、外国馬の位置付けは時期ごとに大きく変遷してきた。今週は「ジャパンC・日本馬vs外国馬」をテーマに、1981年~2021年を3期に分けてレースを振り返っていく。

創設期―外国馬に価値ある勝利「世界の西浦」「皇帝」―

「世界に通用する強い馬づくり」をスローガンに、1981年に創設されたジャパンC。まずは1990年までの10レースを見ていこう。

ジャパンC日本馬vs外国馬


<ジャパンC 日本馬vs外国馬(1981年~1990年)>
日本馬【2-4-4-51】勝率3.3%/連対率9.8%/複勝率16.4%
外国馬【8-6-6-66】勝率9.3%/連対率16.3%/複勝率23.3%
記念すべき第1回ジャパンC。GⅠサンタバーバラH勝ち馬ザベリワンなどアメリカ3頭、カナダ3頭、インド1頭の外国馬に、同年の天皇賞(秋)2着馬・モンテプリンスを筆頭格とする日本馬8頭が挑んだ。

レースは「日の丸特攻隊」サクラシンゲキが前半1000m・57秒8という玉砕逃げを敢行し、最後の直線で日本勢が伸びあぐねる中、抜け出したのは5歳牝馬メアジードーツだった。勝ち時計2分25秒3はエリモジョージの京都記念・2分25秒8をコンマ5秒更新する日本レコード。決して一線級ではないアメリカのGⅡ勝ち馬が稍重馬場で更新した事実はとてつもなく重いもので、日本の競馬関係者は総じて顔色を失った。

「日本馬は永遠にジャパンCを勝てないのではないか」―悲観的な声がささやかれる中、1983年に柴田政人騎手とキョウエイプロミスがアタマ差の2着に好走。一筋の光明が射した翌年に歓喜の瞬間が訪れる。前年の三冠馬ミスターシービーが日本勢として初めて1番人気に推されたレースで、逃げ切り勝ちを決めたのが同馬のライバル・カツラギエースだ。スローペースを利して最後の直線まで懸命に脚を使い、大殊勲の西浦勝一騎手は仲間から胴上げされている。

翌年も「皇帝」シンボリルドルフが優勝し、日本馬が連覇を達成。前年3着、初めて敗北を味わった屈辱を晴らす勝利だった。しかし最初の10年間で日本馬はこの2勝に終わり、外国馬と互角に渡り合うのは次の10年を待つこととなった。

伯仲期―日本馬、着実にレベルアップ―

ジャパンC日本馬vs外国馬


<ジャパンC 日本馬vs外国馬(1991年~2000年)>
日本馬【6-5-4-58】勝率8.2%/連対率15.1%/複勝率20.5%
外国馬【4-5-7-58】勝率5.4%/連対率12.2%/複勝率21.6%
1992年に日本初の国際GⅠ格付けを得たジャパンC。次の10年で日本馬の逆襲が始まる。馬券圏内に入った30頭の内訳は日本馬:15頭、外国馬:16頭と全くの互角。スターホースたちの競演で数々の名勝負が生まれた。

まずは1992年、日本馬7年ぶりの勝利をもたらしたのはトウカイテイオー。無敗二冠から骨折で三冠を逃し、メジロマックイーンとの頂上決戦だった天皇賞(春)5着、天皇賞(秋)7着とまさかの連敗で5番人気まで支持を落としていた。

同年の欧州年度代表馬ユーザーフレンドリーやドクターデヴィアス、クエストフォーフェイムの英ダービー馬2頭、豪二冠馬ナチュラリズムなど史上最強クラスの外国馬が参戦していたが、レースでは荒れた馬場を鋭伸して復活をアピールした。父以来の同レース制覇、鞍上は同じ岡部幸雄騎手。ゴール後には珍しく小さなガッツポーズが飛び出すほどの会心の勝利だった。

翌年からはレガシーワールド、マーベラスクラウンと2頭の騸馬が勝利、日本馬史上初の3連覇を達成。しかし海外勢も黙っておらず、ドイツ馬として初めてジャパンCを勝ったランド、シェイク・モハメド殿下所有のシングスピール、パドックで例の事件を起こしながらエアグルーヴを完璧に差し切ったピルサドスキー(ファインモーションの兄)が3連覇返し。

1998年は黄金世代・エルコンドルパサーが史上初の日本馬3歳制覇。翌年は凱旋門賞馬モンジューをはじめ各国ダービー馬が揃う豪華メンバーを日本総大将・スペシャルウィークが撫で切った。2000年は世紀末覇王テイエムオペラオーがGⅠ・4連勝を決める貫禄勝ち。「日本馬強し」ともう一度世界にアピールした。

日本馬のレベルアップに呼応して、海外遠征で成果が出始めたのもこの時期。1995年にフジヤマケンザンが香港国際カップを制して36年ぶりの日本馬海外平地重賞制覇を達成すると、1998年にはシーキングザパールがモーリス・ド・ゲスト賞、タイキシャトルがジャック・ル・マロワ賞にそれぞれ優勝。2週連続仏GⅠ制覇を達成。その後もアグネスワールドやエルコンドルパサーが世界のトップクラスで輝きを放った。

円熟期―日本馬中心の時代に―

ジャパンC日本馬vs外国馬


<ジャパンC 日本馬vs外国馬(2001年~2021年)>
日本馬【19-20-20-200】勝率7.3%/連対率15.1%/複勝率22.8%
外国馬【2-1-1-84】勝率2.3%/連対率3.4%/複勝率4.5%
2001年以降の21年では日本馬:19勝、外国馬:2勝と圧倒的な差がついた。

海外勢は中山で施行された2002年のファルブラヴ、2005年のアルカセットが制覇。2頭とも鞍上を務めたのは名手ランフランコ・デットーリ、ともにハナ差での勝利だった。特に後者はホーリックスのレコード・2分22秒2を16年ぶりにコンマ1秒更新した。現時点で海外勢の最後の勝利で、以降は日本勢が16連覇を果たしている。

日本の馬場の変化、香港国際競走とのバッティングなど複合的な要因から海外勢の参戦が減り、創設時からは大きく様変わりしたジャパンC。それでも一昨年の三冠馬3頭対決など日本の競馬界に燦然と輝くシーンを刻んでいる。賞金増額、国際厩舎新設といった海外馬誘致の取り組みが実を結び、今後も日本最高峰の舞台としての地位を守っていくことを期待したい。

ジャパンC日本馬vs外国馬


《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開。秋GⅠシーズンに合わせ、新入部員募集中。

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