【武蔵野S】切れ味イナズマ級! 府中で弾けるソリストサンダー

門田光生

武蔵野Sの前走人気別成績,ⒸSPAIA

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衝撃レコードから20年

2021年11月13日に東京競馬場で行われる第26回武蔵野ステークス。クロフネがこのレースで衝撃のレコードを記録したのは2001年のこと。当時の2着馬は、次の年のジャパンカップダート(現在のチャンピオンズカップ)を勝つイーグルカフェ。このほかにも、のちにJBCスプリントを勝つスターリングローズや、本格化前とはいえ名ダート馬かつ、名種牡馬であるサウスヴィグラスも出走していた。これらが全く歯が立たなかった事実からも、クロフネの凄さがよく分かるというもの。ちなみに、武蔵野Sと次走のジャパンカップダートで打ち立てたレコードはいまだに破られていない。

この武蔵野Sはクロフネ以外にも、サンライズバッカス、ワンダーアキュート、ベルシャザールなど、ダートの大きいレースを制する馬が勝ち馬に名を連ねている。2000年に国際レースとなり、現在のマイル戦となってからフルゲートを割ったのは2007年と2015年の2回だけ。毎年好メンバーが集まるこのレースにはどのような傾向があるのか、今回も過去10年のデータを基にして検証していきたい。

不振の4歳馬

武蔵野S出走馬の年齢別成績表

武蔵野S出走馬の所属別成績表



まずは年齢から。クロフネが勝ったのは3歳の時で、その3歳馬は22頭が出走して5連対(2勝)。連対率22.7%は全世代の中でトップの数字である。連対数が最も多いのは5歳馬で8連対(3勝)。6歳馬も4連対(3勝)と健闘。不振なのは4歳馬で、3歳馬とほぼ同じ出走頭数ながら、2連対(1勝)。いろいろな重賞で好成績を残している4歳にしては物足りない。また30頭が出走している7歳以上も1連対(1勝)と結果がよろしくない。

武蔵野Sは関東圏の東京競馬場で行われるのだが、美浦所属馬42頭に対して、栗東所属馬は3倍近くの116頭が出走している。クロフネも栗東所属馬だった。結果も栗東所属馬が18連対(8勝)と断然。美浦所属馬が連対したのは2012年(イジゲン)と2015年(ノンコノユメ)で、ともに海外出身の騎手が騎乗という共通点があった。

なお、このレースも先週に行われたみやこSと同じで、牝馬の出走が極端に少ない。ここ10年で3頭しか出走しておらず、結果は14、7、13着。いずれも圏外となっている。もし、先日BCディスタフを勝ったマルシュロレーヌがここに出走していればどうなったのか、気になるところではあるが……。

武蔵野S出走馬の前走クラス

武蔵野S出走馬の前走距離別成績表



武蔵野SはGⅢ格付けながら有力馬が集まるレース。中央、地方など、経由してきたレースはバラバラ。目立つ前哨戦は4連対(1勝)のマイルCS南部杯、4頭が出走して3頭が馬券に絡んでいるジャパンダートダービーあたりか。この2レースは地方重賞なのだが、実はJRAの重賞を使っていた馬から勝ち馬は出ていない(2着は3回)。

同じく、JRAの3歳限定戦、および4歳以上の古馬のレースを使っていた馬も不振で、こちらは出走した13頭すべてが圏外。前走JRAならオープン組が9連対(4勝)で、勝率、連対率とも最もいい成績となっている。

その前走だが、同距離、距離短縮、そして距離延長の3パターンでは大きな差が見られなかった。ただ、前走1200m【0-0-0-8】、1700m【0-1-1-13】、そして1800m【0-0-1-18】を使っていた馬から勝ち馬は出ていない。

武蔵野S出走馬の前走着順別成績表

また、前走で大きく負けていた馬の巻き返しも難しいようで、前走5着以下からの勝利は出ていない。勝ち馬を探すなら、前走4着以内が必須となる。

武蔵野Sにおけるプラスデータ表

武蔵野Sにおけるマイナスデータ表

そのほかに、武蔵野Sにおけるプラスとマイナスデータを挙げてみる。まずプラスデータの方だが、前走で520キロ以上ある大型馬が半分の5勝を挙げている。また、勝ち馬の10頭すべてが前走で3番人気以上に支持されていた。

マイナスデータだが、前走で負けた馬のうち、1秒以上離されていた馬から勝ち馬は出ていない。あと、クロフネは神戸新聞杯を使って武蔵野Sに出走したが、前走で芝を使ってきた馬は【0-0-1-8】。やはりクロフネは規格外の存在のようだ。

中心は3、5、6歳馬から

ここで武蔵野Sのデータをまとめてみる。まず好走確率が上がるのはA「3歳馬」B「栗東所属馬」C「前走が地方」D「前走4着以内」E「前走520キロ以上」F「前走3番人気以上」。

勝率が下がるのはG「4歳馬、または7歳以上」H「前走がJRAの重賞」I「前走が1200、1700、1800m」J「前走が1秒以上の負け」K「前走が芝」。

マイナスデータにあるG「4歳馬、または7歳以上」だが、これに大半の馬が引っかかる。4歳馬に関しては少ないながら勝ち馬が出ているので無視というわけにはいかないが、評価は大きく下げるべきだろう。

となると、中心となるのは3、5、6歳馬で、その中でもマイナスデータがなかったのはソリストサンダーと、ワイドファラオの2頭。ともにB「栗東所属馬」C「前走が地方」を満たしているが、ソリストサンダーに関してはD「前走4着以内」、F「前走3番人気以上」にも該当。というわけで、今回は◎ソリストサンダー、◯ワイドファラオの順。

登録メンバーの中で、最もプラスデータが多かったのはテイエムサウスダン。A「3歳馬」以外の項目を全てクリア。不振が目立つ4歳馬だが、相手には外せないところ。エアスピネルも引っ掛かるのは年齢だけ。プラスデータを3つ以上持っている馬は多くないので、これも入れておきたい。好走確率が高い3歳馬からは、マイナスデータが1つ(J)のスマッシャーを。

人気が予想されるタガノビューティーだが、不振の4歳馬に加えて、出走した全てが馬券外という「前走が4歳以上戦」にあたる。ダービー週までしか施行されない「4歳以上」が前走ということは、つまり休み明けにあたる。先週に行われたみやこSも休み明けの馬は厳しいというデータがあり、実際に1、3番人気のクリンチャーとオーヴェルニュは着外に沈んだ。それに倣って、今回も軽視してみたい。

◎ソリストサンダー
◯ワイドファラオ
▲テイエムサウスダン
△エアスピネル
×スマッシャー

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
先日、アメリカで行われたブリーダーズカップで、日本馬が2頭勝利。文字通りの快挙です。特にBCディスタフは衝撃的で、凱旋門賞より難しいのではと思われたダートのBCを勝つ日が来るとは。ステイゴールドの血統は、ほんと海外に強いですね。


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