【函館記念】伝統的に活躍する「高齢馬」「二桁人気馬」 エリモハリアーの3連覇など歴史を振り返る

緒方きしん

函館記念過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

今年もベテラン勢の健闘が見られるか

今週は函館記念が開催。昭和にはエリモジョージ、ニッポーテイオーといった名馬が勝利した伝統の一戦だ。特に1988年は、メリーナイス・シリウスシンボリという2頭のダービー馬や二冠牝馬マックスビューティといった実力馬が出走するハイレベルな一戦となり、勝ち馬のサッカーボーイは当時の日本レコードを塗り替えるタイムを叩き出した。

近年もトウケイヘイローやトランスワープら実力派が勝利。さらに2019年の覇者マイスタイルも、同年のスワンSで3着、マイルCSで4着など存在感を示している。

ベテラン勢が活躍するレースとしても知られ、昨年は出走した7歳馬3頭のうちドゥオーモが2着、レイホーロマンスが5着と健闘。2018年はエアアンセム・サクラアンプルールと7歳馬によるワンツーも見られ、2011年にはキングトップガンが8歳で勝利を収めた。

今年は昨年の1〜3着馬が揃って出走を予定。さらに、凱旋門賞に登録しているマイネルウィルトス、フェブラリーS覇者カフェファラオといった例年以上に未知数かつ楽しみなメンバーが揃った。

函館実績馬か、未知数の勢力か──名勝負を期待しながら、函館記念の歴史を振り返る。

近年は大波乱の重賞に

函館記念過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA



函館記念といえば、二桁人気馬の勝利が多く見られる重賞でもある。昨年は15番人気・アドマイヤジャスタ、13番人気ドゥオーモによるワンツー。馬連は1316.7倍の「13万馬券」、三連単の配当は34328.7倍の「300万馬券」と大波乱の決着となった。2018年には2着が7番人気、3着が13番人気でワイド万馬券も飛び出している。

ここ5年間で馬連が万馬券となったのは3度。1番人気馬は1着1回5着1回で、あとは掲示板を逃している。一方で3番人気は健闘中で、1着1回、3着2回、4着1回、5着1回という安定感。2015年にも、3番人気のダービーフィズが勝利している。

波乱の重賞らしく、二桁人気馬が馬券に絡まなかったのは、この5年では2019年のみ。2000年1着クラフトマンシップは14番人気、1993年1着ゴールデンアイは11番人気、1992年1着ヒガシマジョルカは13番人気など、「二桁人気馬勝利」の歴史は古い。

函館記念で思い出深い2頭の名馬

函館記念を語る上で欠かせないのが、エリモハリアーだ。通算成績は63戦9勝で、重賞は3勝。その3勝全てが函館記念という極端な馬で「函館記念といえばこの1頭」というファンの方も多いだろう。2005年には、前走の巴賞(函館芝1800m)でオープン競走初勝利をあげ、勢いそのままに6番人気で函館記念を制覇した。

その後チャレンジCで2着、金鯱賞で3着など実力を示しつつ1年間未勝利で過ごしたが、前年同様に巴賞をステップとして函館記念に参戦し、1番人気に応えて勝利。3年目は巴賞で11着だったことなどから7番人気と評価を下げたが、2着に1馬身差をつける快勝を見せつけた。

もう1頭、函館記念に挑戦した馬で紹介したいのが、マヤノライジン。なんと、6度も函館記念への挑戦を果たしている。マヤノライジンの挑戦が始まったのは、5歳シーズンの2006年。エリモハリアーが函館記念2勝目をあげた年に、重賞初挑戦ながら3番人気3着に食い込んだ。2度目は翌々年に5着、その翌年は10番人気に評価を落としていたが2着と好走し、勝利まで半馬身差まで迫った。

2010年には8着と大敗し限界かと思われたが、10歳シーズンとなった2011年、またもや2着と好走。しかしクビ差で惜しくも勝利を逃した。引退レースとなった2012年も5着に食い込み、函館記念を勝たないまま「函館記念名物」という地位を確立した。まさに、記憶に残していきたい名馬である。

新たな「函館記念名物」馬の誕生に期待

こうして函館記念の歴史を見返すと、不屈の挑戦を続ける馬たちを応援したい気持ちがわいてくるが、エリモハリアー以降、2年連続で馬券圏内に食い込んだ馬はいない。今年は、昨年1〜3着馬が勢ぞろいするほか、一昨年の2着馬であり昨年は14着に沈んだマイネルファンロンが出走するが、どうなるだろうか。函館記念の名物とも言える新たな馬が誕生してくれると、北海道シリーズのファンとしては嬉しい限りである。

また、血統面でいうと、昨年の1着馬はジャスタウェイ産駒、3着馬はオルフェーヴル産駒。一昨年が1着ハーツクライ産駒、2,3着ステイゴールド産駒だったことを思うと、ここが得意な父系は変わらずとも、世代交代が進んでいる印象だ。

函館そのものが初めてのマイネルウィルトス・カフェファラオと、函館に戻ってきた実績馬たち、果たして函館記念の歴史に名を残すのはどちらか。まずは全馬の無事の完走を願いつつ、函館記念らしい名勝負を期待したい。

《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

《関連記事》
【函館記念】波乱前提!人気の盲点になる重賞好走馬か、巴賞敗退組か 狙ってみたい穴パターンとは
【中京記念】狙うは5~9番人気、結局のところ「内枠の先行馬」! 覚えておきたいデータ
【函館2歳S】やっぱり素質馬を評価すべし!  2歳一番星にもっとも近いカイカノキセキ

おすすめ記事