【ユニコーンS】混戦が生んだハイペース! スマッシャーに見るマジェスティックウォリアー産駒の傾向とは

勝木淳

2021年ユニコーンSのレース結果ⒸSPAIA

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混戦模様が影響したハイラップ

3歳ダート路線のJRA重賞は限られており、ユニコーンSは自然とハイレベルになりやすい。ただ、今年は青竜S1、3、4、5着馬はいるものの、伏竜S上位馬や芝から転戦してくる馬も目立った馬はおらず、GⅠレベルのエース級は不在だった。1番人気がヒヤシンスS勝利後、青竜Sで11着に負けたラペルーズだったこともそれを表していた。

「過去10年の勝ち馬はすべて3番人気以内」の堅実な傾向から外れる予感もあったレースは、7番人気スマッシャーが勝ち、2着14番人気サヴァ、3着3番人気ケイアイロベージと波乱決着だった。

混戦模様の下馬評も影響したのか、先手をとったのはプロバーティオ。珍しいデムーロ騎手の逃げだった。前半800mは12.1-10.6-11.3-11.9で45.9。不安定なラップ構成。馬場状態も季節も異なるが、フェブラリーSの46.5を上回り、芝のヴィクトリアマイル(46.0)よりも速いハイペースだった。息の入らない流れにもかかわらず、プロバーティオは残り600~400mで11.8と早々にスパート。いささか乱暴な競馬になった。

マジェスティックウォリアー産駒の特徴とは

中団のインに構えたスマッシャーにとってこの上ない展開になった。5戦連続で1400mに出走、速い流れを追走してきた経験が距離延長とハイペースで見事にかみ合った。祖母ロフティーエイムはハイペースの福島牝馬Sを先行押し切り、3歳上の半姉モルフェオルフェは、中山マイルのハイペースに強かった。血統背景もあと押しした。

父はマジェスティックウォリアー。ダートに強い種牡馬としては、先に輸入されたヘニーヒューズがワイドファラオなどを出して押され気味だが、この勝利で一歩盛り返した。ヘニーヒューズと産駒成績を比べると、良馬場以外のダートに強い特徴があり、今回もその傾向に合致。これは覚えておきたい。

勝ち時計1分34秒4はレースレコード。馬場も季節も異なるフェブラリーSと同タイムだった。カフェファラオは先行して記録、スマッシャーは展開を味方につけた勝利なので、比較してはいけないが、ハイペースで速い時計の決着に強いという点は記憶したい。

サヴァは価値ある2着

厳しい展開を考えれば、14番人気2着のサヴァは価値がある。序盤は隣のカレンロマチェンコに合わせるように好位をとり、勝負所で先にペースを上げたプロバーティオに余裕を持って対応できた。先行勢が末を失い、併せる相手がいなくなり、早めに1頭になってしまったのは痛かったが、ハイペースで一旦は完全に抜け出した脚力は目を見張る。

父アイルハヴアナザーはマジェスティックウォリアーと入れ替わるように米国へ帰国したが、芝でもダートでも耐久戦に強い産駒が多い。母ダイワバーガンディの母は桜花賞3着のダイワルージュ。その母はスカーレットブーケ。ダイワメジャー、ダイワスカーレットを輩出したスカーレット一族。ハイペースのスピード勝負に強い血統背景は申し分ない。サヴァも今回の激走だけにとどまるはずはなく、今後も時計が出る耐久戦で出番はある。

3着ケイアイロベージはヘニーヒューズ産駒。マジェスティックウォリアーと比べると、ダートの総合力で強く、どちらかといえば良馬場向き。それでもこの日は良馬場ではないダートの3場最終レースすべてで勝利したように道悪も対応できる。展開が向いたわりにはスマッシャーに脚色で劣っており、瞬時に反応できないところがある。成長してそこを補えるようになれば通用するだろう。

1番人気13着ラペルーズは発汗が前走から目立つようになり、気性の難しさがネック。この日も内枠から馬群に入り、かなり制御が難しかった。立て直すには少し時間を要するのではないか。父ペルーサも気性が出世を阻んだものの8歳で勝利をあげたように、粘り強い馬との対話によって活路を見いだせる。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。

2021年ユニコーンSのレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA


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