【ヴィクトリアマイル】グランアレグリアが断然 穴はマイル重賞2勝のダノンファンタジー

山崎エリカ

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グランアレグリアが能力値、最高値ともに1位

ヴィクトリアマイルは、牡馬相手のマイルGⅠで3勝を挙げたグランアレグリアが断然ムードだ。同馬は今年、芝2000mの大阪杯に挑戦して4着に敗れたが、評価を落とすような敗戦ではなかった。というのは、大阪杯は指数「-31」の決着で、優勝したレイパパレが強かったこと。また、先行してラスト1Fで甘さを見せた辺りから、明確に距離が長いと言える敗戦だったからだ。

ヴィクトリアマイル出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


グランアレグリアは、昨年の安田記念では強敵アーモンドアイよりも先に動いて、最後まで寄せ付けずに差を広げて優勝。指数も圧勝した一昨年の阪神Cと同じ、指数「-26」を記録した。アーモンドアイは休養明けのヴィクトリアマイルで4馬身差の圧勝を収めた後の一戦で、本来の能力を出し切れなかった面はあったが、内々を上手く立ち回った、一昨年のマイル春秋統一王者のインディチャンプ(3着)を子供扱いした点は恐れ入る。

さらに昨秋のマイルCSでは、前半スローペースで後半勝負となった中、インディチャンプに終始外から蓋をされ、直線ではインディチャンプが仕掛けるのを待ち、そこから外に誘導してから動く、ワンテンポ遅い仕掛けとなったが、ラスト1Fでしぶとく同馬を捕えて優勝。本来なら負けてもおかしくない流れで、指数「-25」を記録した。

現在の牝馬マイル路線は、このレースの前哨戦、阪神牝馬Sを制して目下2連勝中のデゼルですら、能力値5位以内にランクインしないほどハイレベルではあるが、グランアレグリアはここで能力値、最高値ともに1位の存在。内枠からイベリス、クリノガウディー、プールヴィルらが前に行き、外枠からワイドファラオ、トオヤリトセイトらが内に切り込み、包まれて直線半ばまで進路がなかった悪夢のNHKマイルC時と似たような枠の並びであることくらいしか、死角は見当たらない。自滅するなど、よほどのことがない限り、勝ち負けになるだろう。

その他、能力値2位~5位を紹介

【能力値2位 レシステンシア】
デビューから3連勝目の阪神ジュベナイルFでは、かなりのハイペースで逃げて、古馬オープンレベルの指数「-21」で楽勝したほどの馬。そのスピードは短距離でこそで、初めての芝1400m戦となった前々走の阪急杯では、マイペースで逃げて自己最高指数の「-23」で優勝。同時に成長力も見せつけた。

前走の高松宮記念では、休養明け好走の反動が懸念されたが、前々走から1Fの距離短縮だったこともあり、行きっぷりが悪く、また外枠だったために好位の外目からの競馬となった。しかし、前走時は馬場の内が緩くなっており、外のほうが伸びる馬場。さらにレースが速い流れになったことで、展開もこれまでよりも楽だったし、馬場の良いところを走れたこともあり、2着を死守した。前走も悪くないが、高いレベルではマイルよりも短い距離のほうが理想的な馬ではある。軽視禁物も、近2走と比べると狙いは下がる。

【能力値3位 マジックキャッスル】
昨年の秋華賞ではデアリングタクトに0.2秒差(2着)まで迫り、前々走の愛知杯では重賞初制覇を達成。秋華賞はマルターズディオサが緩みなく逃げて超ハイペースとなったが、愛知杯は前へ行った3頭が後続を大きく引き離し、秋華賞以上の激流となった。同馬は秋華賞でも中団中目からレースを運んだが、愛知杯も大外枠からやや出負けして中団後方から。秋華賞、愛知杯ともに展開に恵まれた形となった。しかし、愛知杯では3着馬ウラヌスチャームに3馬身差をつけ、阪急杯の決着指数と同等の「-23」を記録したことは評価できる。

また、前走の阪神牝馬Sは超高速馬場の超絶スローペースで、後半勝負となった中、前々走から2Fの距離短縮だったこともあり、後方の内々でじっくりと構える競馬。このため直線序盤でも進路がない状態だったが、中目から馬群の間を捌いて突っ込み、外から伸びてくるデゼルの2着を死守した。しかし、外からスムーズだったデゼルを上回るメンバー最速の上がり3Fタイムを記録。後半勝負ならデゼルよりもマジックキャッスルのほうが分があるのは明らかだ。ただし、今回は前走以上のメンバーだけに、展開の助けが欲しいところ。

【能力値3位 ランブリングアレー】
前々走の愛知杯は、マジックキャッスルよりも一列前の位置から、直線でも早めに動いて、ラスト1Fで抜け出して先頭。ジリジリ差を詰めてくるマジックキャッスルとの競り合いの末、クビ差2着に敗れた。同馬は中団の中目で包まれたために、4角から直線を向いて開いたスペースに突っ込み、早めに動かざるを得なくなったが、もう少し脚をタメることが出来ていれば、優勝していた可能性はあった。

タフな馬場の前走、中山牝馬Sではロザムールが肉を切らせて骨を立つ消耗戦に持ち込んだことで、中団外目でレースを運んだランブリングアレー向きの流れとなったが、7番人気でこの展開ならという、順当な勝ち上がりでもあった。昨年末のターコイズSで7着に敗れている同馬は、今回も低評価が予想される。しかし、ターコイズSは休養明け好走後の一戦で反動が出たもの。また、中山マイルの外枠で終始外々を回るロスもあった。この敗戦は度外視して考えたい。

【能力値5位 テルツェット】
これまで6戦5勝。復帰戦となった昨夏の1勝クラスを勝利すると、とんとん拍子で前走ではダービー卿CTを制覇。前走の決着指数は阪急杯や愛知杯と同等の「-23」と優秀だが、マイスタイルが緩みないペースで逃げたことで、出負けして後方からの競馬となったテルツェットは、展開に恵まれる形となった。

確かに4連勝の勢いは魅力的だが、前走で展開に恵まれて大幅に指数を上昇させた馬というのは、次走で凡走することが多いもの。ここへ向けての余力に疑問を感じることや、これまでの6戦中5戦で出負けしているようにゲートが甘い馬であることから、ここは割引きたい。1分31秒台の超高速決着が予想されるだけに、出負け癖が致命傷となりかねないからだ。

穴馬はマイル重賞2勝のダノンファンタジー

昨年のヴィクトリアマイルでは5着だったが、その後に地力をつけたダノンファンタジーが面白い。同馬は3走前の阪神Cで、内枠を利して最短距離から位置を押し上げて優勝。極悪馬場で行われた府中牝馬Sでオーバーペースの2番手を追走した後の一戦で、持久力が強化された状態だったこと、内枠を利して距離ロスなく上手く乗れたことが好走要因だが、その時に記録した指数は、前記の能力値2~5位馬の最高値と並ぶ「-23」と立派だ。

前々走の阪急杯では内枠から出負けし、そこから内目のスペースを拾おうとしたものの、詰まって中団馬群の内目で包まれ、3~4角でも進路を作れず、直線で狭い中目をこじ開け、突っ込んで5着。レコード決着で速い時計が要求されたことから、序盤のロスが致命的なものとなった。

また、前走の高松宮記念は、モズスーパーフレアが二の脚の速さでハナを奪い、ダノンファンタジーは枠なりで内のレッドアンシェル、ライトオンキューらと並ぶ2列目の外。さらに外からラウダシオン、セイウンコウセイらが内に切り込んできたために、引くに引けずに出して2番手を追走。しかし、レースが緩みなく流れ、逃げ、先行馬に厳しい展開となったために、12着まで失速した。

また、高松宮記念当日は馬場の内が緩くなっており、直線で馬場の良い外に出せなかったのも大敗した理由だ。しかし、3走前の阪神C時のように、厳しい流れを経験すると持久力強化を促し、次走で粘り強さを見せることが多い。ダノンファンタジーは阪神ジュベナイルFを含めてマイル重賞で2勝を挙げている馬だけに、この距離に問題はない。ここで変わり身があっても不思議ではない。


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)グランアレグリアの前走指数「-22」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.2秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


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