【天皇賞(春)】時計の掛かる長距離で現役トップクラスのディープボンド 取りこぼす危険性はあるのか

山崎エリカ

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阪神大賞典で4歳馬の勢力図の入れ替わりはあったのか?

昨年の菊花賞ではコントレイルの無敗の三冠を最後まで脅かしたアリストテレスが、前走の阪神大賞典では断然1番人気を裏切り、7着に敗退。菊花賞でアリストテレスに離された4着と、完敗だったディープボンドが阪神大賞典を圧勝したことで、天皇賞(春)が一気に混戦ムードとなった。


阪神大賞典でディープボンドが記録した指数は「-29」と高く、一気にここで能力値1位に浮上。これはハイレベルだった2月のダイヤモンドSの「-28」を上回り、今回の出走馬が経由したここ1年のレースではもっとも高い指数。阪神大賞典は重馬場でかなりタフな馬場状態だったが、5F通過62秒4とほとんど緩んでおらず、かなりスタミナが問われたレースだったことから、同馬は時計の掛かる長距離路線では、現役トップクラスの存在と言える。天皇賞(春)当日も雨模様で道悪が濃厚となれば、阪神大賞典に似た競馬になる可能性が高い。ただし、ここへ向けての余力面での疑問が残るのも事実だ。

一方、アリストテレスはどうか、巻き返しの可能性は十分あるだろう。同馬は阪神大賞典のこのコラムで、「不良馬場のAJCCで好走したので危うい」と綴ったが、予想どおりの結果。かつても不良馬場のAJCCを制したルーラーシップが、次走の日経賞では3着に敗れ、12番人気のネコパンチが優勝する大波乱を演出したことがあるように、道悪で好走するとダメージが強く出るからだ。特に高速馬場巧者ほど顕著にダメージが出る。高速馬場の長距離戦ならディープボンドよりも上と見ているアリストテレスだが、今回も道悪であることや、前走で負け過ぎたことを考慮すると、完全復活とまではいかない可能性が高い。

ディープボンドも「道悪で好走」という意味では危うさがあり、今回は前走よりもパフォーマンスを落とすと見ている。しかし、阪神大賞典はAJCCほど時計を要していなかったことと、同馬自身が道悪を得意としていることから、恰好はつけてくると見ている。個人的には他に積極的に狙いたい馬がいないこともあり、馬場次第では本命も視野に入れたい馬だ。

能力値2~5位を紹介

【能力値2位 カレンブーケドール】
指数「-27」で決着した昨秋のジャパンC、「-26」の有馬記念で善戦。三冠馬3頭対決となった昨秋のジャパンCでは、デアリングタクトとクビの上げ下げでハナ差の4着と好走している。ジャパンCはキセキの暴走ペースによって前が崩れたことで、アーモンドアイに先に行かれたことが功を奏する結果となったが、昨年のジャパンC2着時と同じ、自己最高指数を記録したのは立派。

カレンブーケドールはこれまで強豪相手に何度もしぶとく食らいつき、昨年暮れの有馬記念でも5着と善戦していることから、距離延長は問題ないと見ている。しかし、芝3200mがベストかと問われると、そこは微妙。高速馬場なら積極的に狙いたいが、道悪ならば評価を下げたい馬だ。

【能力値2位 ウインマリリン】
オークスの2着馬が昨秋より地力をつけ、前走の日経賞ではフローラS以来の重賞制覇を果たした。前走は内枠から二の脚の速さで先手を奪ったが、外のジャコマルに行かせてその直後の3番手のラチ沿いでレースを運び、4コーナーで最内から一気のスパート。同レースでは逃げた13番人気のジャコマルが5着に粘っているように、かなり前が楽な流れ。ウインマリリンも展開に恵まれての優勝だっただけに、ここでの上積みが見込みにくい。

【能力値3位 ワールドプレミア】
一昨年の菊花賞馬。一昨年の菊花賞の決着指数は、ここ20年でワースト1の指数だった。しかし、その次走の有馬記念ではサートゥルナーリアと2着接戦の3着と好走。アエロリットが後続を大きく引き離して逃げ、前半5F58秒5-後半5F61秒6の超絶ハイペースを、思い切って最後方からレースを運んだことで“展開ドンピシャ”だった。昨秋もハイレベルなジャパンCや有馬記念を経由し、そこで善戦していることを考えると侮れない。最内枠だけに雨の影響で馬場の内側が悪化した場合には不安もあるが、休養明けをひと叩きされての上積みも見込める。

【能力値5位 ディアスティマ】
昨秋に復帰してから上昇一途で阪神改修後初となる芝3200mのオープン、松籟Sを平均ペースで逃げ切り勝ちした馬。松籟Sは超高速馬場だったが、今回の出走馬で唯一、今回と同距離コースを経験している点は強みとなる。今回のメンバーが相手となると、もうワンランクの成長が欲しいが、成長期の4歳馬だけにここでさらなる上昇力を見せる可能性は十分ある。

今回の穴馬はオセアグレイト

昨年は長距離重賞のダイヤモンドS、阪神大賞典ともに前半中盤の速い流れになったせいか、ステイヤーズSは各馬が牽制し合って、前半5F66秒2-中盤F6F106秒4の超絶スローペースが生まれた。オセアグレイトは逃げたタイセイトレイルを追いかけながら2番手から。道中のペースがあまりに遅く、折り合いを欠く場面もあったが、1周目の向正面で外からタガノディアマンテが上がってハナを主張し、ある程度ペースを引き上げてくれたおかげで、3番手の内々でスムーズにレースを運ぶことができた。

同馬のステイヤーズS優勝は、昨秋のアルゼンチン共和国杯から一気に距離1100mを延長してのもの。これは長距離適性が高くなければできない。その後の有馬記念、日経賞は距離不足で凡退したが、芝3200mのここなら変われても不思議ない。ここへ向けての始動戦として、距離が短い日経賞を使い、本来の能力を出し切れていないのも好ましく、前走からの上積みが見込めるだろう。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ディープボンドの前走指数「-29」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.9秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


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