【天皇賞(春)】阪神開催に動じるな 純粋な傾向分析で浮かび上がった大穴ゴースト

佐藤永記

2021年天皇賞(春)出走馬の上がり3F持ち時計ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

敗因「うまくペースに乗れなかった」が続出しそう

阪神芝3200m。すでに多くの読者の方々は気にされていると思うが、この条件での開催は今年2月27日の松籟Sのみ。先週は新潟の福島牝馬Sで芝外1800mのレア条件を予想したが、こちらはさらに希少な条件。そしてなにより、今回の天皇賞(春)に騎乗する騎手で、この松籟Sを経験したのがたったの7名。約3分の2の騎手にとって未経験のコースを走ることになる。

こうなると天皇賞(春)が終わったとき、敗因として「展開が向かなかった」「うまくペースに乗れなかった」というコメントが続出しそうだ。なにせ大半の馬も騎手も走ったことがないレースなのである。これに対して予想する側も「未知」であることを自覚して予想しないと答えには近づけないだろう。

データを扱うときにサンプル数が少ないことは結果にブレを生じさせる。松籟Sの結果をもとに想像するのも手ではあるが、同じペースになるとは限らない。というより、むしろ違ってくる可能性のほうが高いとすらいえる。よって、今回はすこし範囲を広げて今回の天皇賞(春)に「近い」条件を定めて適性をみていこうと思う。

天皇賞(春)を単純に分類すれば
・重賞である
・超長距離(3000m以上)

である。これだけでも競馬開催全体からみればだいぶ少ない条件であることは分かってもらえるだろう。この条件で走る傾向を純粋に当てはめて結論を出してみよう。

勝つのに必要なのは上がり3F

過去10年と今年これまでの重賞・3000m以上のレースを対象にレース傾向を調べると、はっきりとした特徴が浮かび上がった。上がり3Fが1位だった馬が勝つことが圧倒的に多かったのである。

芝3000m以上平地重賞 上がり3F順位別成績ⒸSPAIA


52レース中29レースで上がり3Fが1位だった馬の優勝。2位で12勝、3位で4勝。3位までと考えると実に45レースが「上がり勝負」だったわけだ。これを書くと「結局スローからの上がり勝負かよ」と思うかもしれないが、馬からすれば中速で2400m以上走って、そこから上がりを繰り出せるかを問われている、となる。

ちなみに上がり3Fが4位以下で勝利したという例外だった馬には錚々たる面々が並ぶ。キタサンブラック(2回)、ゴールドシップ、フェノーメノ。この馬たちの共通点は残り3Fよりも前から脚を繰り出していたこと。他のレースでも強さを見せつけていた馬たちなので納得だろう。「規格外の馬は例外」くらいで良いのではないだろうか。そして今回の天皇賞(春)では、そういった規格外の馬はいないと判断させてもらうことにする。

規格外の名馬を除いて近年で見ると上がり3Fが4位以下だった優勝馬に2019年11月ステイヤーズSでのモンドインテロ(6番人気1着)が記録した上がり3F36.0があるが、上がり上位を記録した馬が全部追込馬で、モンドインテロ自身は4番手から4位の上がりを記録して勝っている。前々に位置して仕掛けたためにギリギリ上がりが4位だっただけで、やはり長距離での上がり性能は持っていた。

さらに遡ると2012年の天皇賞(春)でビートブラック(14番人気1着)が逃げ切って記録した36.5という、かなりの過去事象になってしまう。レースは後続をゴールデンハインドと2頭で引き離す大逃げ、奇襲が決まった形だ。こうでもしなければ上がり以外で勝つのは難しいということになる。

長距離で上がりが使える馬ランキング

というわけで実際に長距離を走って上がりタイムを発揮した実績を見る。条件は、

・芝2500m以上
・直近1年半
この条件で3Fタイム順に調べた。3000m以上を条件にしたかったのだが、これではサンプルが少なすぎたため緩和した。この条件で1位だったのは、なんとゴースト。2019年12月の1勝クラス2600mのレースで34.2という上がりを記録している。その後不安定ながらオープンクラスまで勝ち上がり、万葉Sではレース内で上がり2位の35.6(5着)も記録しているのだが、前走阪神大賞典では心房細動で競走中止。おそらく全く人気にならないだろうが、調整は順調とのことで、問題なく走りきれれば超大穴候補に指定したい。

天皇賞(春)出走馬 芝2500以上 上がり3F持ち時計上位馬(過去1年半)ⒸSPAIA


2位にはメロディーレーンの34.3(2021年4月大阪―ハンブルクC、2600m・10着)があるが、レースでの上がりは7位。3位オーソリティの34.4(2020年11月アルゼンチン共和国杯、2500m・1着)もレースでの上がり順位は4位と際立ってはいないが、こちらのほうがまだ実績があるといえそうだ。

注目なのは今年の日経賞組に4位がいることだ。2着だったカレンブーケドールと3着ワールドプレミアである。ともに上がり34.5で並び、レースでの上がり順位も1位タイとなっている。2500mでの話なので時計はともかく、ある程度走ってから上がりが出せたという直近での実績があるのは安心材料となろう。

そして直近1年半という条件を外すと、1位にはユーキャンスマイルが登場する。2019年2月のダイヤモンドS(芝3400m・1着)時に記録した上がり33.4がそれで、当然レースでも上がり1位だった。2年以上前の実績ではあるが、前走阪神大賞典2着(上がり36.8はレース内1位)と復調気配。復活パターンは考慮しておきたい。

その阪神大賞典を勝ち、上位人気であろうディープボンドはレース内での上がり順位は3位の36.9であった。先行策から重馬場を活かし粘った形で、追い込んできたユーキャンスマイルやナムラドノヴァンは良馬場だったら届いていた可能性もあったようにも感じている。5馬身差快勝だったため人気候補になるであろうが、あまり上がりの時計に実績がなく、今回晴れ良馬場が見込まれる条件では危険な人気馬だと判断したい。

今回の馬券は楽しいことになりそうだ。とにかくゴーストの単複は買いたい。心房細動明けなので勝負とはいかないが、持っておきたい馬券だ。上がり実績の安定性からはカレンブーケドールとワールドプレミアの日経賞上位2頭を軸にした3連複で、ゴースト、オーソリティ、ユーキャンスマイル、メロディーレーンを厚めに総流しをかけようと思う。混戦模様の天皇賞(春)に大穴の夢を見て楽しみたい。

<ライタープロフィール>
佐藤永記
20代を公営ギャンブラーとして過ごし、30歳から公営競技の解説配信活動を開始。競馬を始め多くの公営競技ファンに各競技の面白さや予想の楽しみを伝えている。現在はYoutubeで配信活動を続けながらライターとして公営競技の垣根を超えて各所で執筆中。

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