【高松宮記念】「スプリント路線とマイル路線馬のどっちが強いか?」が第一の焦点

山崎エリカ

高松宮記念PP指数表,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

Ⓒゲッティイメージズ

既存のスプリント路線馬vs新規参戦のマイル路線馬

昨年のスプリント&マイル王者のグランアレグリアは、大阪杯へ向かうため不出走。しかし、マイル路線からインディチャンプ、ダノンファンタジー、レシステンシア、サウンドキアラ、ラウダシオン、ミッキーブリランテ等が新規参戦。既存のスプリント路線馬vs新規参戦のマイル路線馬という対戦図式となった。こうなると「スプリント路線とマイル路線馬のどっちが強いか?」が第一の焦点となる。

日本は日本ダービー、ジャパンCに代表されるように、芝2400mが最高峰の国。中距離路線に高額賞金が用意されている。基本的にそこで通用しなかった馬、通用しないと判断された馬はマイル路線へ、さらに通用しなかった馬はスプリント路線と、どんどん距離を短くしてくることが多い。つまり、スプリント路線よりもマイル路線の方がメンバーが濃いということだ。

しかし、グランアレグリアが不出走のここでは、ダノンスマッシュが能力値1位、最高値1位もモズスーパーフレア(2019年のオーシャンS)と並ぶ1位となる。同馬は昨秋から充実度が著しく、香港スプリントを制すまでに成長。昨年の香港スプリントは、2019年の覇者であるビートザクロックをはじめとする、香港の上位馬が次々と引退し、主役不在。例年よりも出走馬が小粒だった点は間違いない。

また、ダノンスマッシュは押しても前の位置が取れず、やや速い流れを中団中目でレースを運んだことで、やや展開に恵まれた面もあった。

それでもスプリントの本場で、ロードカナロア以来の優勝を収めたことは十分に胸を張れる。ただし、今回はぶつけ本番。これまで芝1200mのGⅠ前哨戦では4勝、国内芝1200mのGⅠは0勝という実績がこの臨戦過程を選択させたのかもしれないが、大レースで好走し、いったん楽をさせた後の始動戦というのは安泰ではない。つまり、同馬が本来の能力を発揮できなければ、その次点の実力馬に軍配が挙がる。その実力馬の大半は新規参戦のマイル路線馬である。

マイル路線の最有力候補はインディチャンプ

インディチャンプは、一昨年の春秋マイル統一王者だ。しかし、昨春の安田記念では、グランアレグリアとアーモンドアイの後塵を拝して3着、一昨年のマイル王者の意地を懸けた昨秋のマイルCSは、休養明けで限界レベルまで馬体を絞り込んで出走した。

出走馬17頭中GⅠ馬が8頭の超豪華メンバー構成の中、ライバルはグランアレグリアただ一頭に絞り込み、同レースでは好位の中目でレースを運ぶグランアレグリアの少し後方から同馬をマーク。4角では先に動いて同馬に蓋をし、直線では先に動いて粘り込みを図る作戦に出た。快速馬グランアレグリアの末脚を封じるには、その作戦が最良であり、会心の騎乗だったと思う。当然、自身の指数は、昨春のマイラーズCと並ぶ、自己最高指数タイ。これで反動が出ないはずはない。

次走の阪神Cは中間楽をさせて馬体回復を図り、馬体重10㎏増という数字以上の重め残りだった。この影響もあって序盤で置かれて中団やや後方からのレースとなり、3〜4角の外からロスを作りながら動かざるを得ない展開。レースが緩みない平均ペースで流れて、最内から位置を押し上げたダノンファンタジーが優勝する流れを考えると、このロスは致命的だったが、それでもジリジリしぶとく延びて3着と善戦した。

また、前走の阪急杯は、超高速馬場でレコード決着になったために、対応できなかったのが一番の敗因。しかし、二の脚で置かれておっつけながらの忙しい競馬になりながらも、3着争いの接戦の4着と、このレースでもしぶとく粘れている。同馬は本質が中距離馬だけに、2012年のような1分06秒台の決着となるとさすがにつらいが、今の中京でそのタイムはさすがに出ない。良馬場で1分07秒台、ひと雨降れば1分8秒台の決着になるだろう。道悪でモズスーパーフレアがペースを引き上げれば、ぶち抜ける可能性もあると見ている。

その他、能力値上位馬を紹介

【能力値2位 ダノンファンタジー】
昨春の阪神牝馬S、ヴィクトリアMでサウンドキアラに完敗だったが、芝1400mの阪神Cで大勢逆転。レースが緩みない平均ペースで流れた中、内枠を利して最短距離から上手く位置を押し上げて、優勝した。

しかし、次走の阪急杯では内枠から出負けして、そこから内目のスペースを拾おうとしたものの、詰まって中団馬群の内目で包まれ、3〜4角でも進路を作れず、直線で狭い進路をこじ開けてくる形、5着に敗れた。前走は負けて当然の内容であり、今回での巻き返しは見込める。ただ、阪神Cは騎手がかなり上手く乗っての結果だけに、中心視するまでには至らない。

【能力値3位 レシステンシア】
デビューから3連勝目で阪神ジュベナイルFを、ハイペースで逃げて、古馬オープンレベルの指数で優勝した馬。その後は成績がやや低迷。重馬場の桜花賞でスマイルカナと競り合って、激流に持ち込みながらも2着を死守した内容には見どころはあったが、チューリップ賞、NHKマイルC、マイルCSはタメ逃げをしたことで、上位馬にキレ負けする形で敗れている。

つまり、同馬は前半でリードを奪ってこその馬ということ。実際に休養明けで挑んだ前走の阪急杯では、それを証明してみせた。しかし、休養明けの前哨戦で死力を尽くした馬の次走の本番は危ういものがある。同馬の素質の高さ、前走で見せた成長力は怖いものがあるが、あっさり敗れても不思議ない。

【能力値5位 ミッキーブリランテ】
昨夏のサマーマイルシリーズ前半戦で善戦した馬だが、昨秋の京成杯オータムH以降は不振で、2桁着順の連続。しかし、前々走のニューイヤーSでは一変。外枠からやや出負けしたものの、そこからじわっと好位まで位置を押し上げ、直線では外から一気にこられても、しぶとく粘りとおして、3頭の大接戦を制した。

ただ、同馬は二の脚が速くないので、前走の阪急杯時のようなレコード決着となると不安はあった。しかし、2番枠のダノンファンタジーが出負けしたことで、内の2頭目の好位を上手く立ち回って2着と好走。そういう馬だけに前走からさらに1Fの距離短縮は好ましいとはいえないが、日曜日は道悪が濃厚。時計が掛かれば、大外枠でロスを作ってもロスは致命的にはならないし、同馬の持久力が生かせる。

穴馬は、サウンドキアラ

昨年は確率変動のように京都金杯、京都牝馬S、阪神牝馬Sと重賞を3連勝。ヴィクトリアMでもトロワゼトワルが逃げるハイペースを単独3番手でレースを運び、アーモンドアイには離されたが、ノームコアとの2着接戦をクビ差凌いだ。しかし、その後に休養し、復帰戦となった昨秋のスワンSでは1番人気を裏切り、10着敗退。カツジが楽に逃げ切る展開を、好位の内で流れに乗りながらも見せ場が作れなかった。

しかし、前走の阪神Cでは中団から、緩みない平均ペースの3〜4角でインディチャンプの一列前の位置で外を回るロスを作りながら、同馬とクビ差4着に善戦。復調気配を見せた。同馬は重馬場の京都牝馬Sで外から差し切っているように、時計が掛かる馬場も得意。同馬は芝1200mだと置かれて後方からの位置になると見ているが、逃げ馬モズスーパーフレアがペースを引き上げることで前が崩れ、同馬の可能性が広がる。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)レシステンシアの前走指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補


ライタープロフィール 山崎エリカ 類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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