【金鯱賞】本当に1着確実?三冠牝馬デアリングタクトの不安点とは

山崎エリカ

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能力値、最高値ともに1位はグローリーヴェイズ

2021年3月14日に行われるのは金鯱賞である。昨年、史上初無敗で牝馬三冠を制覇したデアリングタクトが断然1番人気の様相だが、実は桜華賞、オークス、秋華賞で記録した指数は、2012年の三冠馬ジェンティルドンナや2018年の三冠馬アーモンドアイと比較をすると低い。しかも、アーモンドアイが制した昨年のジャパンCは、休養明けの天皇賞(秋)の指数「-29」から2ptダウンさせる形で、指数「-27」での優勝だった。

つまり、ジャパンCのアーモンドアイは休養明け好走の反動でパフォーマンスを下降させた形で、デアリングタクトやグローリーヴェイズを撃破したことになる。ジャパンCはキセキの単騎暴走によって超絶ハイペースとなったが、グローリーヴェイズはその流れの4番手でレースを運び、3角で上がって2番手から大接戦の5着に粘った。

これは同じような位置にいた馬たちが大敗していることからも、グローリーヴェイズはかなりしぶとく強い内容だった。また、アーモンドアイもグローリーヴェイズを見ながらの内からともに動いての優勝でペースを考えるとかなり強い。

一方、デアリングタクトは中団からアーモンドアイを目標に、出負けして中団から動いていく形。展開に恵まれながらも、グローリーヴェイズをやっと差して0.1秒差先着、カレンブーケドールにハナ差先着の3着という結果だった。これは3歳秋の成績としては十分であるが、アーモンドアイのように古馬トップホースとしてやっていけるか、疑問の残る一戦だった。

デアリングタクトには成長力という希望があるが、現状では2019年の天皇賞(春)2着や、2020年の香港ヴァーズ勝ちの実績があるグローリーヴェイズの方が強いとみる。今回は距離2000mになるが、中京芝2000mは前半でゴール前の直線の坂を上って行くコース。また、金曜日の段階ではクッション値9.9%(天候雨)が発表されており、馬場が回復したとしても標準に近い馬場だろう。これだと仮にキセキが逃げたとしても、ペースを引き上げ切れないので、好時計決着にはならない。スピード勝負にならなければ2000mでもやれるだろう。

グローリーヴェイズ、デアリングタクト、最高値2位のキセキは始動戦

全項目で伝えたように、グローリーヴェイズ、デアリングタクトはここでは実力上位だ。2018年のジャパンCで世界レコードの立役者となり、アーモンドアイと0.2秒差(2着)や昨年の宝塚記念で2着の実績があるキセキも、本来の能力を発揮できた場合には強いが、この3頭は、この先のGⅠ出走時にピークを持ってくることを目標とした指導戦である。

先週のチューリップ賞でメイケイエールが大接戦の1着同着だったり、弥生賞でダノンザキッドで3着に敗れたように、断然の実績馬でも敗れるのが前哨戦である。中山記念のヒシイグアスのように、順調に使われている上がり馬タイプなら、前哨戦でも能力を出し切ることができるが、休養明けの馬というのは少しペースが厳しくなったり、少しの距離損があっただけで、思わぬ取りこぼしもある。そこを考えると2番手グループの馬にも出番があるだろう。

能力値3位〜5位は?

【能力値3位 ポタジェ】
2勝目を挙げるのに時間を要したが、そこからはとんとん拍子で4連勝。前々走の岸和田Sは逃げたダノンマジェスティにシフルマンがプレッシャーをかけに行って流れが速くなった中、中団の前からラスト3Fで位置を押し上げ、直線ではダノンマジェスティと一騎打ち。ゴール前でねじ伏せた。

一方、前走の白富士Sは前半37秒3のスローペース。前半がかなり遅すぎたせいで、2角で大外のブレステイキングが上がっても向正面で動かず。直線では馬群の間が少し狭く、割るのに苦労したもののジリジリ伸びて前を捕らえ、外から伸びてくるサンレイポケットを振り切って勝利した。もうワンパンチほしいが、実績馬に隙があればチャンスがあるだろう。

【能力値4位 ペルシアンナイト】
2018年の大阪杯の2着馬。相手と展開に恵まれた2017年のマイルCS優勝をはじめ、同レースでは2018年2着、2019年は3着と好走しているが、時計の速い決着の安田記念ではいつも崩れているように、本質は中距離馬。実際に指数の最高値は、2018年の大阪杯である。

昨年の札幌記念でも勝ち馬ノームコアを前に置く形で中団の後ろ。内目からロスなくレースを運んだことが功を奏したにせよ、後の香港Cの優勝馬と0.2秒差は立派。前走の有馬記念はさすがに距離が長いと見ていたが、それでも勝ち馬クロノジェネシスと0.6秒差(6着)に善戦しており、7歳馬ながら年齢的な衰えはなさそう。問題は2018年の大阪杯よりもメンバーが強化されることと、今回が休養明けであること。これをどう考えるか。

【能力値5位 ブラヴァス】
昨夏の新潟記念では、連続開催最終日ということもあり外差し馬場ではあったが、出負けしたジナンボーが主導権を握ってペースが上がらない中、中団の外目から3〜4角で位置を押し上げ、ラスト2F目で馬場の良い外に持ち出し、じぶとく粘っていたジナンボー競り落として重賞初を達成した。

また、前走のチャレンジCもジェネラーレウーノが逃げて超絶スローペースをやや出負けしたものの、新潟記念と似たようなレース運びで2着に入った。同馬は前半では置かれ気味になるが末脚は堅実。これまでのように末脚に特化した競馬なら、勝ち負けは狙えないまでも、ここも崩れずに走れるだろう。

今回の穴馬はサトノフラッグ

新馬戦では6着に敗れたものの、その後3連勝で弥生賞を制覇。弥生賞当日は重馬場で時計を要していたが、弥生賞は控えて後方から3角手前で外からじわっと動き、直線序盤で抜け出して優勝と、持久力のあるところを見せた。その後の皐月賞、日本ダービーは待機策で瞬発力を生かす競馬で伸びあぐねたが、前走のセントライト記念では弥生賞の時と同じように、早めに進出したことで2着と結果を残した。

同馬はその後、菊花賞でも3着と好走しているように、瞬発力よりも持久力を生かしてこその長距離。中京芝2000mはスタート後にゴール手前の坂を上り、最後にもう一度、同じ坂を上るタフなコース。芝2000mでも長距離馬が活躍する舞台であることと、この中間の追い切りの時計&動きも良く、ルメール騎手を配してきたあたりにここへの勝負度合を感じる。一角崩しを狙うのであれば、4歳馬のサトノブラックが面白いだろう。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)デアリングタクトの前走指数「-25」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.5秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

2021年金鯱賞PP指数

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ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


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