【金鯱賞】デアリングタクトもひと筋縄ではいかない?意外にも苦戦の「三冠牝馬の4歳初戦」

東大ホースメンクラブ

三冠牝馬の初戦の成績ⒸSPAIA

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4歳初戦は大崩れもある三冠牝馬

今週日曜、中京競馬場を舞台にGⅡ・金鯱賞が行われる。登録はわずか10頭にとどまったものの、三冠馬3頭が激突した空前絶後のジャパンカップで5着に健闘したグローリーヴェイズ、菊花賞を制したのちGⅠ戦線で主役を張り続ける古豪キセキ、良血に裏打ちされた才能を武器に4連勝で臨んできた未完の大器ポタジェなど精鋭が出揃った。

しかし主役を張るのは史上初の無敗牝馬三冠を達成したデアリングタクトを置いて他にいない。ジャパンカップでは能力を全発揮できない苦しい形ながら3着を確保、超ハイレベル戦で実力を証明した。古馬になってから迎える初戦を勝利で飾り、更なる飛躍の足掛かりとしたい。

今週は「三冠牝馬の4歳初戦」をテーマに、過去の三冠牝馬がどのような走りを披露したか振り返りながら、大本命馬との馬券での付き合い方を検討していく。

三冠牝馬 4歳初戦の成績ⒸSPAIA


まずは牝馬三冠を達成した馬たちの4歳初戦を振り返る。昨年のデアリングタクトを含め、過去に牝馬三冠を成し遂げた馬は6頭。このうち1986年のメジロラモーヌは3歳時の有馬記念で引退したため、サンプルは4頭だ。

全体成績は【1-1-0-2】。意外にも確勝級というほどではなく、それどころか複勝率も5割にとどまる微妙な成績だ。4歳以降往時の輝きを失ってしまったスティルインラブは金鯱賞でGⅠ馬3頭から大きく離された8着に敗れ、次走のヴィクトリアマイルで女傑ブエナビスタを破るアパパネもマイラーズCで4着と馬券圏内を外した。

連対した2頭はいずれもドバイ国際競走を初戦に選択。ドバイシーマクラシックを走ったジェンティルドンナはBCターフ覇者セントニコラスアビーを捕まえ切れなかったものの後続には先着を許さず、断然人気の単勝1.2倍の支持を力に変えたアーモンドアイはドバイターフを快勝した。日本競馬史上でも最強クラスの牝馬はきっちり結果を残している。

アタマでは信頼できない

1986年以降の牝馬二冠馬 4歳初戦成績(参考)ⒸSPAIA
1986年以降の牝馬二冠馬 4歳初戦成績(参考)のうち、勝利した馬の一覧ⒸSPAIA


ただし4歳「国内」初戦というくくりではジェンティルドンナもアーモンドアイもそれぞれ3着に敗れている。宝塚記念に出走したジェンティルドンナは同期の牡馬二冠ゴールドシップに抜け出され、前のダノンバラードも捉えきれなかった。

アーモンドアイは安田記念で出遅れ、さらに寄られる不利を受け、勝ち馬インディチャンプとタイム差なしまでよく迫ったもののデビュー以来初めて連対圏を外してしまった。GⅠを片手では足りないほど勝った両頭のデータを踏まえれば、デアリングタクトをあえて疑う手も愚策とは言い難い。

参考として1986年以降の牝馬二冠馬×4歳初戦は【3-1-1-5】と同じく複勝率5割。勝った3頭のうちダイワスカーレットとブエナビスタは古馬戦線でも現役最強の座を守り続け、残るテイエムオーシャンは札幌記念を始動戦に選択したことでゆとりのあるローテで臨むことができた。4月以前に初戦を迎えた組はマックスビューティもベガもメジロドーベルもミッキークイーンも勝ち切れず(全て1番人気)、単系馬券の信頼度を揺るがすデータとなっている。

三冠馬を尻目に逃げ・番手が好走

牝馬三冠馬 明け4歳初戦 その他出走馬のデータⒸSPAIA


デアリングタクトが買いにくいのならば他のどの馬を買えばいいのか。前述した牝馬三冠馬の国内初戦データを分析した。

まず挙げられるのは逃げ・番手で運ぶ馬の成績が極めて優秀な点。スティルインラブが出走した金鯱賞はタップダンスシチーが貫禄の押し切り、アパパネのマイラーズCはシルポート・クレバートウショウの4角1-2番手がワンツーを決めた。

ジェンティルドンナの宝塚記念ではダノンバラードが4角2番手から粘って3強の一角を崩し、アーモンドアイの安田記念では逃げたアエロリットが2着、番手のグァンチャーレも13番人気ながらあわやの4着に残った。決め手のある実力馬をマークして前が比較的手薄になることが要因のようで、今年の金鯱賞ならキセキがゲートを決めれば久しぶりの勝利も夢ではない。

4・5歳の牡馬が人気以上の好走を見せることも多く、全体の複勝率は127%をマーク。馬券になった7頭のうち14番人気2着と大波乱の立役者になったクレバートウショウ以外は6番人気以内で、この条件に限ると【2-2-2-3】複勝率46.2%、単複ともに回収率100%超えと妙味を保ったまま安定感が増す。この条件に当てはまりそうな新星ポタジェに加え、2000m戦に強いブラヴァスも買い目に組み込んでおきたい。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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