【フェブラリーS】新王者カフェファラオ誕生もダート路線の群雄割拠は続く 次走で狙える馬は?

勝木淳

2021年フェブラリーSのレース結果ⒸSPAIA

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カフェファラオに初のGⅠタイトル

昨年のフェブラリーSを勝ったモズアスコット、チャンピオンズC2着ゴールドドリームが引退、そのチャンピオンズCを勝ったチュウワウィザードがサウジ遠征、クリソベリルは戦線離脱。昨年のJRAダートGⅠ3着以内馬のうち、2021年フェブラリーSに出走したのは、サンライズノヴァとインティのみ。レベル云々ではなく、ダート界の勢力図が更新される過渡期にあったレースだった。

勝ったカフェファラオは4歳、次世代のダート王者の誕生である。そうはいいながらもユニコーンSを1分34秒9の好時計で勝ってから、相手関係が楽だったシリウスSこそ勝利したものの、GⅠ格で7、6着とやや停滞した印象から1番人気ながら単勝オッズは3.3倍。だがそんな停滞期を陣営は調教や馬具など工夫を凝らし、乗り越えた。

良馬場最速の勝ち時計

内枠にエアアルマス、インティと砂を被りたくない先行馬がそろい、戦前から展開が厳しくなるのではと予想されたものの、インティがゲートでやや後手を踏み先行できず、エアアルマスと、逃げてかしわ記念を勝ったワイドファラオが先手を奪う形。予想外に隊列はすんなり整い、カフェファラオは枠なりに3、4番手のポケットに収まる。ルメール騎手の得意な「いつでもどこからでも動ける位置」だ。

前半800m46.5。後半800mは12.0-11.9-11.9-12.1と一定のラップを刻む。東京ダート1600m戦らしい緩急のない持続力勝負になったため、後ろで溜め、外を回った組はどんなにいい脚を使っても物理的に厳しかった。前半がもっと速く後半でラップが落ち込むか、途中で緩み瞬発力勝負にならなければ、力量接近のGⅠ戦では差し切れない。カフェファラオは自身にとって理想的な流れを理想的な位置から運んだわけで、完勝は当然だ。

勝ち時計1分34秒4は良馬場に限ればGⅠ昇格後で最速。ちなみに余談だが、このレースで誘導馬を引退したサクセスブロッケンは2009年やや重で1分34秒6だった。ただし同日ヒヤシンスSでラペルーズが記録した1分36秒8も出色の記録なので、時計が出やすい馬場でもあったか。

新王者となったカフェファラオは今後、舞台を選ばずに走れるかどうか注目したい。

マイルも問題なかったレッドルゼル

2、3着はエアスピネルとワンダーリーデルの8歳2頭。競馬も年齢や性別ではなく、能力で判断しなければならない。

2着エアスピネルは9番人気で好走、カフェファラオに0.1差まで迫った。芝GⅠでも好走してきた瞬発力が武器である反面、いい脚が長く続かない。そうした矛盾を考慮した鮫島克駿騎手の好騎乗だった。道中は中団のインでムダ脚を使わないように潜み、直線に入っても残り400mまで我慢、カフェファラオが抜け出したスペースを突いて瞬発力を繰り出した。ゴール前の脚色ではカフェファラオを上回っており、惜しかった。

3着ワンダーリーデルは根岸Sで後方待機策だったが、今回は戦法一変。中団のインを追走と「ノリマジック炸裂」といったところか。大胆な作戦変更は流れを考えればお見事。根岸Sのような競馬では3着はなかった。残り400m付近でワイドファラオをインから交わした場面では勝ったかと思わせるほどだった。

過去5年、横山典弘騎手が東京ダート1600mで4枠に入った場合、このレースも含め【5-2-2-10】。これはロスなく位置をとって流れに乗り、馬群をさばく競馬が得意である証拠。そんな得意技をワンダーリーデルでやってしまうあたり、さすが横山典弘騎手だ。

上位3着まではすべて道中でインを通り、内目から抜け出した。ペースが落ちないスキのないラップを刻む競馬は、ダートであっても距離ロスがないインが有利だ。そういった意味では4着レッドルゼルはもったいなかった。大外枠を引いたため、道中は外を追走、うまく流れに乗って、末脚を繰り出すも、物理的に厳しかった。

根岸Sでは最後の600m35.1、今回は35.5。根岸Sは内枠から馬群を抜けてきたが、今回も外枠から道中で常にインを意識した競馬をしつつも、最後は前が壁になり、外へ切りかえた。進路を考えれば、自身の記録はほぼ互角。敗因は距離延長ではなさそうで、今後もマイル戦で十分戦えるだろう。もっともダートのマイル戦となると、斤量的にオープン特別に使いにくく、出走できるレースは限られるが。

5着はエアアルマス。インティが控えて楽なペースになったわけだが、3、4角では一旦、ワイドファラオに先頭を譲り、若干でも脚を溜められたため5着に残った。松山弘平騎手の好判断だろう。以前から松山騎手は先行馬に乗ったときのペース判断に長けたジョッキー、今後もこれは覚えておきたい。

6着インティは後方から進み、最後追いこんできた。ゲートをやや伸びあがる形で出てしまい、エアアルマスに遅れた。東京ダート1600mの1枠は芝からダートへ進入する角度の問題もあり、少しでも後手を踏むと挽回しにくい。そのため無茶をせずに控えたが、道中は気難しさを出し、武豊騎手が懸命に馬から離すように導いた。最後までレースを止めずに走ったのは今後に向けて明るい材料ではないか。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

2021年フェブラリーSのレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA



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