【有馬記念】フィエールマンは続戦大丈夫?能力値、最高値ともに断然のクロノジェネシスが取りこぼせばウルトラ大波乱

山崎エリカ

2020年有馬記念PP指数

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クロノジェネシスの強さは本物か?

クロノジェネシスは宝塚記念で2着キセキに6馬身、3着モズベッロに11馬身差をつけて圧勝し、指数「-39」を記録。一躍、現役最強に踊り出た。当然、ここでは能力値、最高値ともに断然の1位である。しかし、それまでは京都記念が最高値で指数「-25」。秋の天皇賞でも指数「-28」だ。今回も宝塚記念どおりに走れれば圧勝だが、今回と当時とでは条件が異なる。

まず、宝塚記念当日は直前のゲリラ豪雨の影響で、良馬場発表でも重馬場くらい時計を要していた。つまり、稍重~重馬場で4戦4勝の実績があるクロノジェネシスにとって、もってこいの条件だった。そのうえキセキの暴走によって、極端な消耗戦となり、差し馬の同馬にとっては展開が後押ししたのは明確だ。今開催の中山も時計を要しており、そういう意味では同馬にとって好都合と言える。

しかし、1枠1番のバビッドが宣言どおりに逃げたとするならば、スローペースの後半勝負が濃厚。後半勝負で決め手が問われたレースでのクロノジェネシスの最高値は、前走の天皇賞(秋)で、その前走ではアーモンドアイとフィエールマンに完敗している。確かに宝塚記念のように、キセキが暴走して消耗戦に持ち込めばチャンスが広がるが、そこに期待するのも心許ない。

いっそスローペースに決め打ちして、前から押し切れる馬や内目の枠の馬に期待してみるのも悪くないだろう。また、そのようなレースになる確率は案外と高いような気がしている。逃げ宣言のバビットは、ハイペースを嫌う内田博騎手が騎乗する以上、平均~スローペースが濃厚。同馬のハナを叩ける馬は、暴走した場合のキセキと大外から奇襲した場合のオセアグレイトしか見当たらないのだから、ペースが上がる要素が少ない。

先週のディセンバーSの結果が有馬記念の大ヒント

今秋の秋華賞、菊花賞、ジャパンCの3レースは、1~2番手でレースを進めた馬がブービーやしんがりまで失速しているように、逃げ、先行馬には厳しい消耗戦となった。秋華賞は2番手のホウオウピースフルが18着、菊花賞は逃げたキメラヴェリテが18着、ジャパンCは2番手のヨシオ、トーラスジェミニが14着、15着である。

先週のディセンバーSでは、そのホウオウピースフルとトーラスジェミニと、菊花賞で先行して9着大敗を喫したガロアクイークが出走。有馬記念は菊花賞やジャパンC経由馬が参戦するだけに、どのレースが最も消耗戦だったのかの裏付けを取るために楽しみにしていた。

結果はトーラスジェミニが1着、ガロアクリークが3着、ホウオウピースフルが4着。ホウオウピースフルはもともとの能力から4着でも十分に好走した部類だが、トーラスジェミニの激変ぶりから、ジャパンCが最も逃げ、先行馬に苦しい流れになったのは確かのようだ。ちなみにトーラスジェミニがディセンバーSで記録した指数は、最高値タイの「-21」である。

つまり、4連勝でセントライト記念を制しながらも、菊花賞では先行して10着に敗れたバビットの巻き返しも見込めるが、それ以上にジャパンCで逃げ、先行したキセキやクレッシェンドラヴの巻き返しの方が怖い。ただ、キセキはスタンド前の暴走癖もあるし、前走のジャパンCで5F通過57秒9で逃げながらも5着と大健闘したことから、今回で余力が残っていない可能性もある。 実際にキセキは一昨年の有馬記念で、1週目の4コーナーの大外からロスを作りながら逃げて激流に持ち込み、5着と大健闘した後にスランプに陥った。

一方、クレッシェンドラヴは余力を残して負けているだけに、疲れはないだろう。同馬は、道悪ながら序盤から促してできるだけ前の位置を取り、馬場の悪い内から七夕賞を制すなど、スタミナ偏重型の馬。芝2500mで条件好転が見込めるうえに、2枠3番でロスのない立ち回りができるのも魅力的だ。

穴は一昨年の有馬記念の覇者ブラストワンピースや、距離が延びると指数を上昇させてくるラヴズオンリーユーやユーキャンスマイルなど数多くいるが、一頭に絞るとすればクレッシェンドラヴだろう。ユーキャンスマイルは阪神大賞典が最高値というステイヤーだが、大外枠を引いてしまっただけに、ペースが遅いとロスの大きい競馬になるだろう。

エリザベス女王杯組は苦戦が濃厚

今秋の秋華賞、菊花賞、ジャパンCばかりが激流ではない。今秋のエリザベス女王杯もノームコアの突然の逃げ、それも前半から後続を引き離す逃げで激流になった。それを証明するかのように、同馬はエリザべス女王杯16着大敗から香港Cで優勝と、V字復活を収めた。

つまり、ノームコアがオーバーペースの逃げを打ったことで、展開に恵まれれて1着、2着と好走したラッキーライラックやサラキアは、能力値上位でもあてにならないということ。サラキアは鞍上が池添騎手で、陣営も「終いを生かす形で距離をこなしたい」とコメントしていることから、後方列で脚を温存しての競馬は推測される。しかし、昨年のように超ハイペースの有馬記念にならないと苦しいだろう。ラッキーライラックに至っては、休養明けで最高値を記録した後の一戦となるだけに、二走ボケを起こす危険性もある。

フィエールマン他、能力値上位馬について

能力値2位のフィエールマンは一戦ごとの消耗が大きい馬で、これまでレースを使う度に休養させて、それを繰り返すことでどうにか連続好走することができた。唯一、続戦したのは札幌記念3着から中6週で挑んだ昨年の凱旋門賞時だが、結果は12着大敗。確かにこの年の凱旋門賞は馬場が重くて、高速馬場ばかり走っている日本馬は苦戦して当然ではあった。しかし、勝ちに行く競馬をしたぶんがあったにせよ、キセキにも先着を許し、殿負けを喫している。

フィエールマンは春の天皇賞を二連覇していると言っても、コテコテのステイヤーではなく、後半勝負の秋の天皇賞でもメンバー最速の上がりを駆使して2着と対応できているので、有馬記念の適性自体は問題ないだろう。一頓挫あったようだが、出走してくる以上は大きな問題はないはず。ただ、これまで続戦を避けてきた同馬が、今回で続戦することは何よりも気掛かりだ。

また、能力値3位のカレンブーケドールは、昨年よりもハイレベルは今年のジャパンCで、展開に恵まれ4着と好走。1枠1番だった同馬は1枠2番のアーモンドアイに序盤で絞められて、位置を下げることになったが、結果オーライだったとみている。展開に恵まれて最高値を記録した後の一戦となるだけに、同馬も苦しいだろう。

逆にチャンスがあるのは、能力値5位タイのワールドプレミアだ。同馬は昨年の有馬記念は、アエロリットが大逃げを打って超ハイペースにしたことで、最後方からの奇襲がうまくはまったのは間違いない。しかし、長期休養明けの前走ジャパンCでは、同馬の能力を出し切れていないので、ここで変わり身があっても不思議ない。また、同馬は距離が延びて指数を上昇させた馬だけに、高速馬場の東京芝2400mよりも時計の掛かる馬場の芝2500mの方が向くだろう。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)クロノジェネシスの前走指数「-28」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.8秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

2020年有馬記念PP指数


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