【スプリンターズS】最高値、能力値とも1位グランアレグリアは距離微妙 今の馬場で狙ってみたい馬とは?
山崎エリカ
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昨年より時計を要する馬場
スプリンターズSが行われる中山芝1200mは、外回りの坂の頂上付近からスタートして、約4.5mもの坂を下って行くコース。スタートから約275mで最初の3コーナーを迎えるが、中山の外回りはおむすび型。3~4コーナーのカーブが緩いために、下り坂で加速がついたまま4コーナーに突入する。
短距離戦で最後の直線は約310mと短いため、変に折り合い過ぎることなく、ゲート出たなりで下り坂でスピードに乗せ、そのまま行かせてしまう馬が多いのがポイント。つまり内枠と外枠の差はあれど、テンの速さ通りに隊列が形成される。スピードのある馬が出走している年ほどハイペースになりやすく、逃げ、先行馬はラスト1Fの急坂で失速しやすい。
超高速馬場で行われた昨年は前半3Fがメンバー中で断トツのモズスーパーフレアが33秒0で逃げ、レースの後半3Fは11秒3-11秒5-12秒5。ラスト1Fで失速している。今年もモズスーパーフレアの逃げが濃厚だが、中山の芝が昨年よりも断然時計を要しており、先週はかなりタフな馬場。回復するとしても昨年より先行勢に厳しい展開が予想される。そこを考慮のうえで予想を組み立てたいものだ。
能力値1~3位の評価は?
【能力値1位 グランアレグリア】
昨年暮れの阪神Cでは独走。今回のメンバーではかなり優秀な指数で優勝した。さらに前走の安田記念も阪神Cと同等の指数で走った結果、アーモンドアイを完封した。今回のメンバーではPP指数の最高値1位、能力値1位。この馬がベストコンディションならば、ここも優勝するだろう。
しかし、今回は休養明けの始動戦。次走はマイルCSを予定していることもあり、前々走の高松宮記念と同じような状態と推測される。高松宮記念では2着しているわけだから、今回も有力であることは確か。ただ高松宮記念はやっと馬券圏内に届いたようなヒヤヒヤの内容だった。1200mは楽に好位を取れないようにやや忙しい。能力面からは有力候補の一頭だが、ここは過信禁物。
【能力値2位 ダノンスマッシュ】
今年のオーシャンSでは優秀な指数で優勝したが、そこで走りすぎてしまったために高松宮記念では大凡走に終わっている。その後、京王杯スプリングCは完勝したが、安田記念では再びの凡走。もちろん、安田記念は距離が長かったのもある。しかし、昨年までも前哨戦で盤石な走りを見せながら、本番では結果が出ていない。
今秋は始動戦となったセントウルSを快勝した。しかし、セントウルSは逃げたセイウンコウセイ、2番手のラブカンプーともにビリとブービーに敗れているようにかなりのハイペース。この流れを先行したこの馬は、そこまで高い指数では走れていない。そこを考えると、余力が残っている可能性はある。昨夏のキーンランドCを制しているように、ある程度なら時計が掛かっても問題ないが、これまでの本番で凡走する傾向から過大評価はできない。
【能力値3位 ライトオンキュー】
昨秋の京阪杯を強烈な末脚で快勝。このレースではモズスーパーフレアが逃げているが、荒れた馬場&前半で坂を上る京都芝1200m戦ということもあり、いつもほどグンとは行かず。鞍上にコントロールの意識が働いたため、平均ペースで収まった。その中で出遅れを二の脚で挽回し、4コーナーの外からロングスパート、好指数で優勝したこの馬はGⅠ通用級と評価できる。
道悪の消耗戦となった前走のキーンランドCではエイティーンガールに差されたが、これはポジションを押し上げながら3~4コーナーで外に誘導し、かなり大外をぶん回したのが敗因。ロスと早仕掛けが応えたものだ。前記の実績から時計の掛かる馬場は歓迎。しかし、2回札幌開催で2度出走と、押せ押せでレースを使った疲れがありそう。
【能力値4位 モズスーパーフレア】
今春の高松宮記念の優勝馬。昨年のオーシャンSではとても優秀な指数で優勝している。芝1200mで能力を出し切った場合、今回のメンバーなら一番強いと言える。前走の北九州記念では外から競ってくるジョーカナチャンを寄せつけずに、前半3F32秒4の快速ぶりを見せて2着。始動戦としては上々の走りだった。
ただ冒頭でも綴ったように中山は馬場がタフ。ペースが上がると逃げ、先行馬にとってはかなり厳しい状況となっている。今回はスプリントGⅠだけに、中長距離戦のように道中でペースが緩むということもないだろう。能力は十分だが、馬場、展開が問題だ。
【能力値5位タイ レッドアンシェル】
かつて準オープンの彦根Sを優秀な指数で勝利し、その後CBC賞勝ちの実績があった馬。その後は屈腱炎の前駆症状でスランプとなったが、ブリンカーを着用した前走の北九州記念では完全復活。モズスーパーフレアがペースを引き上げたことで中団待機のこの馬は展開に恵まれたが、自己最高値を記録しての優勝だった。
前走同様の走りができればここでも十分にチャンスがある。ただ、最高値を記録した後にさらなる上積みを見せるのは条件級や2~3歳戦ならともかく、古馬の重賞級となるとなかなか難易度が高くなる。この馬の潜在能力がどこまで高いところにあるかがカギ。
【能力値5位タイ エイティーンガール】
前走・キーンランドCでは後方一気の競馬で重賞初制覇を果たした。ただし、前走はタフな馬場。後方から動かず、馬場のもっとも伸びる外から差したことがハマったのは確か。マクリ気味に行ってロスをつくったライトオンキューとは内容が異なる。それに、この馬は自ら勝ちに動くと終いが甘くなるのは、前々走のUHB賞で証明済だ。
この馬は今年2月のシルクロードSでも2着と好走しているが、その時もかなりタフな馬場。外差し馬場を利して2着と好走したものだった。今回は先週同様にひと雨ほしいところだが、仮に雨が降ったとしてもライトオンキュー以上の評価はできない。
今回の本命候補は?
今年2月のシルクロードSでモズスーパーフレア、セイウンコウセイが粘り込みを図るところを、外から一気に差し切ったアウィルアウェイが面白い。当時の京都は馬場が悪く、逃げ・先行馬にとっては厳しい馬場状態を利しての差し切り勝ち。これ自体はそこまで強い内容ではない。
しかし、先週の中山は当時の京都同様にかなりタフな馬場で、差し・追い込み馬が有利な状況。さらにモズスーパーフレアが今回も出走しているとなれば、シルクロードS同様の展開になる可能性は十分にある。先週よりも馬場が極端に高速化した場合には不安があるが、同等かやや軽いくらいなら連対圏に突入しても不思議ない。
それに今夏緒戦のCBC賞では大幅馬体減で体調に問題があったようだが、前走の北九州記念を見るとだいぶ立ち直ってきている。その前走はとても届きそうもない位置から、ラストは脚を使っており、瞬発力は健在。ここに向けて余力もありそうだ。兄インディチャンプ同様の成長力にも期待したい。
今回の一発候補は?
能力値上位馬に大幅減点材料もないだけに、そこまで可能性は高くないかもしれないが、大穴馬としてダイメイプリンセスを取り上げる。この馬は重賞2勝の実績があり、かつてスプリンターズSでも4着、6着と好走している。その後しばらくスランプだったが、今年は韋駄天S、アイビスサマーダッシュでも勝ち馬と差のない競馬ができており、復調気配は十分に見せている。
前走の北九州記念は、過去に2着、1着と実績があることを意識したのか、最内のレッドアンシェルに外から並びかけ、前のスペースを詰めて行く競馬。この馬としては早めに動いたぶん、終いが甘くなった。本来の無欲の差しに徹すれば食い込みがありうる。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)グランアレグリアの前走指数「-26」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.6秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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