【小倉記念】過去10年の逃げ馬の連対はゼロ 逃げ馬の活躍が断トツの小倉開幕週でどう変わるか?

山崎エリカ

小倉記念PP指数インフォグラフィック

ⒸSPAIA

先行馬が不振の理由は?

開催日程の変更で、異例の開幕週で行われる小倉記念。小倉の開幕週は超高速馬場で、逃げ馬の活躍が断トツ。前有利は明らかだ。しかし、小倉芝2000mが舞台の小倉記念は、過去10年で逃げ馬の連対はゼロ。そればかりではなく、先行馬も1着が3回、2着がゼロと不振だ。

なぜ、不振なのか──。 これは小倉芝2000mのコース形態にある。小倉芝2000mのスタンド前の直線ポケットからスタートし、最初のコーナーまでの距離は472mと長い。逃げ馬は基本、先頭でコーナーに侵入し、コーナーで最短距離を回ることで息を入れながら後続とのリードを広げる。つまり、スタートしてからすぐにコーナーがあるコースほど、逃げ馬有利ということ。

しかし、小倉芝2000mは最初の直線までの距離が長いため、序盤からある程度行きらないと、後続とのリードを広げにくい。このため同型馬が多く出走しているほど、ペースが速くなりやすい。今回は開幕週ハンターの逃げ馬ミスディレクションが、ここも逃げ宣言。

今回の出走馬のうち、近5走で重賞で連対している馬はサラス、サマーセント、サトノルークスの3頭。このうちサラスとサマーセントは、昨年と今年の牝馬限定戦マーメイドSの優勝馬で、ともに軽ハンデでのもの。また、サトノルークスはセントライト記念と菊花賞で連対と距離が延びて指数を上昇させたもの。

サトノルークスは芝2000mの前走、鳴尾記念では中距離では自ら動けないことが祟って8着に敗れてしまったことから、実質は横一線のメンバー構成と言える。実際に能力値上位馬に大きなポイント差がないことから、ミスディレクションのレースメイクが勝敗を左右すると考えても良さそうだ。

逃げ馬ミスディレクションの評価は?

ミスディレクションは2018年の夏の小倉開幕週で行われた国東特別(500万下・芝2000m)、暮れの阪神開幕週で行われた再度山特別(1000万下・芝2000m)で自ら極端なスローペースに持ち込んで勝利した馬。前走の尼崎Sは、それ以来の勝利だった。同馬は開幕週ハンターで高速馬場でこその馬。能力値5位でもある。しかし、前記した3レースとも11頭立て以下の少頭数で先行馬が手薄だったという点は見過ごせない。

2番枠の今回は楽にハナを主張できるとは見ているが、極端にペースを落とせば、ショウナンバルディが競り掛けてきたり、ランブリングアレーが突いてきたりするだろう。開幕週だと穴人気が予想されるが、スタミナ不足で逃げ馬が苦戦する傾向にある休養明けということから、ミスディレクション自体は狙いづらい。しかし、前有利の展開にはなりそうだ。

前に行ける能力値上位の2頭は有力

小倉記念PP指数


今回の能力値1位はランブリングアレー、能力値2位はサマーセントだ。ランブリングアレーは、前々走の糺の森特別(2勝クラス)、前走の垂水S(3勝クラス)ともに先行策から抜け出して完勝。糺の森特別はオスカールビーが大逃げを打ったため、少し離れた位置から捕えに行ってそのまま押し切り勝ち。

垂水Sは良馬場発表も、標準くらいの時計を要した中、タガノアスワドが後続を引き離して逃げ、前半5Fの通過が58秒4のハイペースとなった中、先行策から押し切っての完勝だった。同馬はペースが速くなり過ぎれば位置を下げ、ペースがそこまで速くなければ、自ら動いていける馬。前有利の展開になれば有力だろう。

また、サマーセントはマーメイドSでは、格上挑戦の身で重賞タイトルをもぎ取った形。同レースでは50kgと軽ハンデだったが、稍重発表以上に時計を要した中、逃げたナルハヤに終始プレッシャーをかけながら、3〜4コーナーでは外からナルハヤに並びかけ、押し切った内容は高く評価できる。実際に同馬が前走で記録した指数は、サトノルークスの菊花賞2着時と同等の指数である。

ナルハヤは先日のクイーンSでは、またもや逃げてタガノアスワドにプレッシャーをかけられ、緩みないペースで逃げたために8着に失速したが、マーメイドSで先行したレッドアネモスは内から直線で外に出し、差す形でクイーンSを優勝している。今回は斤量が増量されるが、前記の事象からサマーセントも有力だろう。

今回の大穴候補はショウナンバルディ

今回の大穴馬はミスディレクションの直後でレースを運べるショウナンバルディと見ている。同馬は休養明けの前々走・垂水Sでは、ランブリングアレーよりもひとつ前の位置でレースを運んで同馬と0.2秒差(2着)。タフな馬場だった前走の阿武隈Sは外枠からハナを奪って、緩みないペースで逃げたために13着まで失速したが、高速馬場で上手く脚をタメられれば巻き返せるだろう。

また、マーメイドSで厳しい流れを先行して失速したレッドアネモスが次走のクイーンSを優勝したように、競走馬はオーバーペースの競馬をすると持久力が強化され、次走で激走のタイミングが作られる。このことから阿武隈Sでオーバーペースの競馬を強いられたショウナンバルディは、ランブリングアレーとの逆転があっても不思議ない。

サトノルークスが好走するための戦法とは?

能力値3位はロードクエスト、能力値4位はサトノルークスだ。ロードクエストは2016年の京成杯オータムHで、秋の中山開幕週としては時計を要した中、緩みないペースを差し切って優勝。同馬は前々走のマイラーズCでも4着に善戦していることから、マイルなら悪くないと見ていたが、速い時計が求められた中、トップハンデ57kgを背負って出遅れ、最後方からの競馬となったために11着に敗れた。結果的にマイルでも忙しい競馬になったが、着差は勝ち馬と0.6秒差とそこまで負けていない。全盛期と比べてスピードが喪失していることを考えると、前走から距離が延びるのも歓迎だが、どこまで前を意識して動いて行けるかがカギになるだろう。

サトノルークスは、前記したようにステイヤー。二の脚が遅く、好位が取れない馬だけに、開幕週の芝2000mは減点材料である。しかし、相手弱化という点では悪くない。戦法は2つ。(1)重馬場発表も標準馬場だったセントライト記念のように、中団内々を追走し、3〜4コーナーでもロスなく立ち回って直線で捌いて行く競馬。(2)豊富な持久力を生かして、最低限の前の位置を取って早めに動いて行く形。今回11番枠に入ったことで(1)は不可能に近くなった。(2)ならチャンスはあるが、乗り方に制約がつくタイプだけに、人気ほど信頼できないのは間違いない。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)のサマーセントの前走指数「-20」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.0秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

おすすめ記事