【日本ダービー】コントレイルの不安材料とは?狙いは皐月賞で力を出せなかった馬!

門田光生

2020年日本ダービーインフォグラフィックⒸSPAIA

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思えば昨年も……

2020年5月31日に東京競馬場で行われる第87回東京優駿(日本ダービー)。皐月賞は無敗馬の一騎打ちで盛り上がったが、今回はコントレイルが無敗で頂点に立てるかが一番の注目点といえるだろう。

ただ、思えば昨年も同じ4戦4勝、GI連勝中のサートゥルナーリアが単勝1倍台の圧倒的支持を集めたが、結果は4着。競馬に絶対はないことを思い知らされた記憶がよみがえる。歴史は繰り返すのか、それともコントレイルが新たな扉を開くのか、今回も過去10年のデータを中心に検証していきたい。

ダービー出走馬の前走ⒸSPAIA



今年のヴィクトリアマイルは年明け初戦のアーモンドアイが楽勝した。力が違ったといえばそれまでだが、出走間隔と前哨戦を語るのはもはやナンセンスな気もする。とはいえ、データを語る上で大事な要素なのは間違いない。都合よく解釈すれば、使い方ひとつなのだろう。

ダービーで馬券に絡んだ馬の前走は至ってシンプル。勝ち馬は皐月賞か京都新聞杯、連対馬となると青葉賞が加わり、3着以内まで広げるとプリンシパルSからも出ている。特に皐月賞組は8頭のダービー馬、そして7頭の2着馬を出しており、これが王道ローテーションなのは今も昔も変わらない。

ダービーで好走した皐月賞組の2走前(過去10年)ⒸSPAIA



ダービー馬の称号は関係者がのどから手が出るほど欲しいもの。素質馬ともなるとデビュー前から逆算して使っている陣営もあるぐらいだ。2014年のワンアンドオンリー、2017年のレイデオロは、ダービーを勝てると踏んだ時点からのローテーション、そして調子の波を頂点へ持っていき方が完璧だったように思う。

そこで皐月賞組の2走前のトップ5にも注目してみた。トップは弥生賞を使っていた馬で3勝をマーク。スプリングS、共同通信杯組も4連対と好相性だ。しかし、最近はスプリングS組が不振で、トレンドは弥生賞と共同通信杯を使った馬。ともに4連対なのに対して、スプリングSは2着が1回あるだけ。

弥生賞を使うとダービーまでに余裕のあるローテーションが組めるし、共同通信杯なら東京コースも経験できる。ダービーを見据えてこの2つのレースを選択した可能性は十分ある。

余裕を持ったローテーションといえば、2017年のレイデオロ、2019年のサートゥルナーリア、そして今年コントレイルが選択したホープフルS→皐月賞というパターン。放牧明けでもパフォーマンスが落ちない現代でこその王道ローテーションといえるだろう。

「ダービーポジション」より「ダービー前のポジション」

ダービー出走馬の前走の位置取りⒸSPAIA



「ダービーポジション」という言葉がある。あった、が正解かもしれない。昔はフルゲートが20頭を超えていたので、1角で10番手以内を取らないと厳しいといわれていた。しかし、最近はオルフェーヴルやキズナが最後方に近い位置で最初のコーナーを回りながら勝っているように、ダービーでの位置取りはそれほど問題ではないようだ。

今回注目したのは、前走の位置取り。2角の時点で1~9番手にいた馬【2-9-6-81】に対して、10~18番手の馬は【8-1-4-40】。前走で差す競馬をした馬の勝率が8割、前で運んだ馬の2着率が9割という極端な結果が出た。差す競馬をした馬のほとんどが、その時より前で運んでいる。ダービー前の一戦で足を計ったわけではないだろうが、本番ではさらに一歩踏み込んだ競馬をした結果、とみていいだろう。

ダービー出走馬の勝利数ⒸSPAIA



ダービーは「最も運のある馬が勝つ」といわれているが、ここまで惜しい競馬があっても、結果的に1勝しかしていない馬は運があるとはいえない。それを裏付けるように、3勝以上していた馬が16連対、2勝馬が4連対。理想は3勝以上、少なくとも2勝していることが絶対条件だ。

ダービー出走馬の乗り替わりⒸSPAIA



また、ダービーで乗り替わった馬より継続騎乗の方が圧倒的に成績がいい。これはオークスと同様である。そういえば、昨年のサートゥルナーリアも乗り替わりだった。

不完全燃焼の馬を狙え

注目のコントレイルだが、今後の主流となるであろうホープフルS→皐月賞のローテーション、前走の位置取り、通算勝ち星、そして継続騎乗。減点なし、加点ありと、データ上でもケチを付けるところがない。さて、困った。

皐月賞を何度も見直したが、コントレイルのレース運びはほぼ完璧だった。包まれる恐れのある最内枠だっただけに、早くから外へ出すことを意識していたような騎乗。1角付近で少しゴチャつくようなところも見られたが、向正面で周りに合わせて進出する時にうまく外へ出し、あとは手応え通りに回って来るだけ。

あれ以上仕掛けを遅らせるわけにもいかないし、皐月賞を勝つことに関しては文句なしの騎乗だろう。ただ、当然ながら今回の方がマークは厳しくなる。枠順にもよるが、今回も理想の進路がぽっかり空くとは思えない。もしかしたら、皐月賞と同じように4角を持ったまま上がって行き、直線で突き放せるぐらい能力が違うのかもしれないが、その時は素直に脱帽だ。今回は配当的な妙味も考えて、同じく減点がなくダービーにつながりそうな競馬をした馬を探してみる。

意外に今回、継続騎乗で引っかかっている馬が多い。マイラプソディもそのうちの1頭で、それがなければ満点だっただけに惜しい。前走が皐月賞組、2走前は共同通信杯、弥生賞、ホープフルSのいずれか、前走の位置取りが10番手以下、そして継続騎乗。これに全て当てはまるのはダーリントンホールとブラックホールの2頭だけ。どちらを上に取るかだが、ここ10年で前走8着以下の馬は連対ゼロ。ということで、今年はダーリントンホールにかけてみたい。

最高の騎乗ができたコントレイルとは対照的に、ダーリントンホールは発馬後に隣の馬に寄られてバランスを崩し、さらに4角はコントレイルの仕掛けに付いて行けず大外を回る形。全く力を出し切れていなかったのだが、あれだけロスがありながらも直線は伸びていた。鞍上はスムーズならやれる手応えと同時に、2400mも走り抜けるスタミナを実感したはずだ。父は重い馬場を得意としていたので、ひと雨降ればなおいいだろう。

相手はコントレイル。配当的な妙味で無理矢理対抗評価に下げたが、データ的に減点要素が全くない。サリオスは近年では初のケースとなる朝日杯→皐月賞というローテーション。ただ、考えようによってはホープフルS→皐月賞と同様に余裕を持ったローテーションでもある。前走の位置取りが前なので、2着候補として考えるなら十分あり得る。実力馬がデータ的に大きな減点がないのだから、相手はこの2頭だけでいいだろう。

◎ダーリントンホール
〇コントレイル
▲サリオス

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。日本ダービーと同日に行われる九州ダービーを皮切りに、地方競馬でもダービーシリーズが始まります。今年は全レースに参加する予定ですが、途中で残金がゼロにならないという、志の低い目標を立てています(笑)。

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