【桜花賞】語り継がれるべき険しき桜 オークスで狙うべき馬は?

勝木淳

2020年桜花賞位置取りインフォグラフィック

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競馬への謝辞

「自粛」という目に見えないあしかせをはめられた我々は日々ストレスを溜めつづけることになった。目に見えないものとの戦いはウイルスに限ったことではなく、家から外に出ないことで蝕まれていく心もあるわけだ。

心と体の健康を両立させることがこんなに難しいことだとは。終わりが見えない足枷の日々に競馬は貴重な良薬となりつつある。あらゆる娯楽が姿を消し、人と会うこともままならない状況下でも変わらずそこに存在する競馬には感謝しかない。

世代唯一無二の力強さ

こんな時代背景とともに記憶されるであろう第80回桜花賞は雨に濡れる桜もまた同じく記憶されるだろう。キョウエイマーチが勝って以来の悪い馬場コンディション。ゴール前は阪神JFで圧倒的なスピードを見せたレシステンシアですら脚が完全にあがっていた。

最後の1ハロンは極限のレースを物語る13秒8。唯一最後に脚を伸ばしたのが勝ったデアリングタクト。4角で全馬の手綱が激しく動くなか、松山弘平騎手だけが軽く促す程度で外に持ち出された。これは圧勝といっていい。

キャリア3戦での桜花賞制覇はハギノトップレディ以来40年ぶりだという。記憶にある人の方が少ないだろう。近年にない極悪馬場だった1、2回京都エルフィンSで楽な手応えから1分33秒6を記録した脚力は本物だった。

スピードもあるだろうが、それ以上に重い馬場を跳ねのける力強さがあり、桜花賞で存分に活かされた。、松山弘平騎手も冷静だった。外目を走らせ、芝の塊が飛び交う馬群を避け、いつでも動けるポジションに徹していた。馬の力を信頼しきった騎乗だった。

番手からレースを支配したレシステンシア

注目を集めたのはレシステンシアの出方だった。スローに落として負けたチューリップ賞から騎手を替えて臨む一戦、果たしてどんな作戦で挑むのか競馬ファンの謎ときは直前まで続いた。

ハナ宣言のスマイルカナに対してスピードでそれを奪うのか。いや、相手にすべきはスマイルカナではないわけだからハナに無理にはいかないのでは。その答えは後者だった。武豊騎手は17番枠から3角手前までずっとスマイルカナとの距離感を測るような競馬をしていた。ジワジワとスピードに乗せながら内に寄せていき番手に収まる。スマイルカナがスローに落とす気がないことを見透かしていたようだった。

前半800m46秒5は馬場差を考慮すると阪神JFよりも厳しい流れであり、追走する組は脚を失くし、デアリングタクト以外が伸びないレースになったことで逃げたスマイルカナが3着に残る結果となった。どんな状況であろうと競馬はまずは前にいる組がレースの支配者になり得るものであることを証明した。

次の舞台、オークスを展望

12秒6-13秒8、パワーとスピード兼備のレシステンシアでさえ悲鳴をあげる険しい桜花賞だったが、4着クラヴァシュドールは道中で道悪得意なデムーロ騎手がバランスを崩すようなシーンがありながら、最後は内を突いて盛り返して4着。道悪に泣いた形だが、潜在能力をここも披露。成長力豊かなハーツクライ産駒、距離延長も問題ない。

同じく5着ミヤマザクラも兄弟は長距離適性がある馬ばかり、悪条件でもしっかり走って掲示板確保とこちらも距離延長で見直したい。8着マルターズディオサは外からデアリングタクトが来たところで抵抗できなかった。こちらはレシステンシアを意識しすぎた印象。スタート直後に無理に抑え込んでレシステンシアを待っていたが、スタートがよく内枠の利を生かすのであれば待たずに自ら番手を取りにいけばよかったのではなかろうか。わざわざ厳しいポジションに収まってしまったのはもったいなかった。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。

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