【皐月賞】勝ち馬は「前走1・2着」が必須条件!今年の共同通信杯組の取捨は?

勝木淳

皐月賞データインフォグラフィックⒸSPAIA

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未体験のスピード勝負

牡馬クラシック第一弾皐月賞。2歳路線の整備、3歳トライアルの使い分け、有力馬の回避といった傾向はここ数年でみられる現象。以前より一層未対戦の有力馬たちが皐月賞で初対決するという図式が濃くなり、対戦比較が難しく同時に馬券的にも難解になりつつある。

皐月賞過去10年勝ち馬成績ⒸSPAIA


近年は良馬場であれば1分57~58秒台という高速決着が定番。開催中に悪天候に見舞われた今年の中山だけに皐月賞当日の馬場は読めないが、良馬場ならばこれまでどの馬も走ったことがないようなタイムが記録されるだろう。

未知なる適性が浮き彫りになるのも皐月賞。淀みない流れから速いラップを持続して最後まで走れる馬が強い。昔、皐月賞は速い馬が勝つといわれていたが、近年の傾向は変わっていない。皐月賞は今も昔も持続力が試される。

狙いは皐月賞と異なる条件から

ではその傾向はどんなものがあるだろうか。過去10年のデータを比較していく。

人気別成績(過去10年)ⒸSPAIA


対戦比較がしにくいレースは人気面も読みにくい。10年間で7~9番人気が1勝ずつしており、伏兵は軽く扱えないものの残り7勝は4番人気以内、比較しにくいレースであっても競馬ファンの見立てはある程度正しく、まずはそこに逆らわずに上位人気馬をじっくり吟味したい。

前走着順別成績(過去10年)ⒸSPAIA


はっきり出ている傾向としてはこれだ。前走1着馬【8-6-5-51】と数が多く確率はさほどではないが、10年で8勝は有意義なデータだ。クラシックは勝ち抜きトーナメントなので、勝って皐月賞にターゲットを絞った馬が強く、一度負けると出走権をかけて別のレースに回りながら参戦してくるわけで、優位なのは前走勝った馬なのは明らかだ。

前走競馬場別成績(過去10年)ⒸSPAIA


中山で行われる皐月賞ではあるが、じつは真逆な適性を問われる東京の成績がよく【4-0-2-9】と他場を大きく引き離す。

東京は年明けは2月のひと開催のみでトライアルはすべて中山、阪神で施行されるにも関わらず東京の成績がいいというのは見逃がせまい。主要トライアルが行われる中山【4-6-6-78】、阪神【2-4-1-47】も悪いわけでなく、2、3着馬を多く出しているので、東京に注目しつつ中山、阪神組にも目を光らせたい。

前走距離別成績(過去10年)ⒸSPAIA


こちらも同距離2000m【2-8-5-56】でも距離短縮の2200m【0-0-0-15】でもない距離延長の1800m【8-1-5-57】と10年で8頭がこれに該当。距離延長が決まるというのはそれだけ皐月賞がどちらかというと忙しないスピード勝負になりがちであることを示す。

データ上は共同通信杯勝ち馬ダーリントンホール?

これら適性を積みあげていくと、前走東京芝1800m1着、つまり共同通信杯の勝ち馬が浮かび上がる。ところが共同通信杯勝ち馬は過去10年皐月賞で【3-0-1-4】。確率は高いのでダーリントンホールは注目すべきではあるが、10年で勝ち馬は3頭と毎年穴候補にあげられるわりに頼りになくみえる。

今年もダーリントンホールは似たような穴人気になりそうだが、即アタマとはいいがたい。共同通信杯勝ち馬で皐月賞になった3頭はゴールドシップ、イスラボニータ、ディーマジェスティ、いずれも共同通信杯は1分49秒以下。ダーリントンホールの稍重1分49秒6の評価は分かれるところだろう。共同通信杯を1分49秒以下で走りながら皐月賞凡走という馬は多いので、時計が評価の決め手になるわけではなく難しい。

馬体重別成績(過去10年)ⒸSPAIA


ダーリントンホールが前走の馬体重526キロから増えるとデータ上はアウトになるが、それを承知でこのデータは興味深い。皐月賞は480キロ以上520キロ未満に好走ゾーンがある。これは多頭数で揉まれた際に馬格がモノをいうことを示すほかに中山芝の傾向そのものでもある。4/4、5の芝はこのゾーンが9鞍で3勝。ほかに重賞のダービー卿CTを勝ったクルーガーは530キロ。「中山芝は巨漢馬を狙え」は古くから伝わる格言でもある。レース間隔が開いた3歳馬だけに馬体重の増減は大きそうなので、当日はこのゾーンにいる馬をチェックしておきたい。

騎手乗り替わり別成績(過去10年)ⒸSPAIA


最後にクラシックは乗り替わりご法度な雰囲気もあるが、皐月賞は当てはまらない。過去10年で継続騎乗6勝、乗り替わり4勝、勝率はともに5.7%と互角。2、3着惜敗となると継続騎乗組が優位となることも頭には入れたいが、乗り替わりを過剰に嫌うことはない。今年は登録馬に前走が武豊騎手だった馬が3頭。武豊騎手が選ぶ馬と選ばなかった馬で評価に差をつけるのは早計ではないか。

ダーリントンホールが満点ではなく自信をもってデータから推奨というわけにはいかず、かえって皐月賞のクセの強さが露わになった。同距離より距離延長、中山より東京、前走惜敗より1着馬、下位人気の一発警戒と馬券検討泣かせのクセありレース、それこそが皐月賞。大いに一週間悩みたい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。

皐月賞データインフォグラフィックⒸSPAIA

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