GⅠ完全制覇まであと2つ 武豊騎手の通算77勝の軌跡をたどる (前編)
高橋楓
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歴代最多GⅠ制覇騎手『武豊』の凄さ
『武豊』このフレーズだけで心躍るファンも多いだろう。デビューから今日までに武豊騎手が積み上げたGⅠ勝利数は実に77勝。あの岡部幸雄騎手が31勝で倍以上の制覇数を数えているのだから、いかにこの数字が凄いものなのかが分かる。
またGⅠレースでの中身を見てみると、単勝回収率、複勝回収率は低いものの、勝率14.4%、連対率26.1%、複勝率に至っては35.8%もある。
今回はあと2つでGⅠ完全制覇を達成する武豊騎手を4つの時代に分け改めて振り返ってみたい。
デビューから1995年安田記念
この期間に挙げたGⅠ勝利数は18勝。初のGⅠ制覇となった1988年菊花賞制覇はわずか19歳8ヵ月での出来事だった。その年の春のすみれ賞で跨り惚れこんだスーパークリークでGⅠ初制覇を挙げた武豊騎手は「天才」の名を欲しいままにしていく。しかし武豊騎手は普通の天才ではないのだ。誰よりも競馬を愛し研究熱心なことで知られている。ただの天才ではなくそれ以上の努力をした事で「天才武豊」という言葉が成り立ったのだと想像する。
それを象徴するレースが1990年オグリキャップの引退レースとなった有馬記念だ。その年の秋は惨敗続きで世間からは終わったと評されていたオグリキャップ。全盛期では右手前ばかりで走っていたオグリキャップは騎手が左鞭を入れる事で初めて手前を替える癖があったと言われている。その走りを秋には出来ずにいた。たった1度しかオグリキャップに跨った事が無いにも関わらず、その癖を熟知していた武豊騎手は有馬記念までの調教でオグリ自身すら忘れかけていたその癖を復活させ覇気を思い出させたのである。こんな事は武豊騎手にしかできないであろう。
サンデーサイレンス産駒との出会い
武豊騎手を語る上で欠かせないのがサンデーサイレンス産駒との出会いだ。それまでの競馬界は先行競馬が王道の時代だった。
それが、爆発的なスピードで差し、追い込みを得意とするサンデーサイレンスの登場により競馬界は一変する事になる。その時代の流れにいち早くフィットしたのが武豊騎手だった。
サンデーサイレンス産駒で挙げた通算勝利数は26勝。実に自身のGⅠ勝利数の33.8%をサンデーサイレンス産駒で挙げているのだ。そしてサンデーサイレンス産駒の後継種牡馬と母父サンデーサイレンスの繁殖牝馬の産駒での勝利数は17勝。併せて43勝で55.8%をサンデーサイレンスの血で挙げている。
なぜこんなにも武豊騎手はサンデーサイレンスの血筋とフィットしたのか。私は「騎乗フォーム」だと考えている。個人的に競馬界で一番美しい騎乗フォームは武豊騎手だと思っている。
武豊騎手のフォームは馬の背中と自身の背中が綺麗な平行線を描く。このフォームには気性が荒くいきたがる馬にとって一番負荷がかからないフォームだと言われている。まさに気性が激しかったサンデーサイレンス産駒にはもってこいだったのだ(続く)。
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秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。
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